「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、本当にホームレスになった
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月24日 6時30分
ホームレスになることは、征一郎さんにとって宿命だったのかもしれない。彼はついに、子供の頃に池袋で見た、世俗離れしたホームレスのおじさんのようになった。
征一郎さんが当初思い描いたホームレスは公園や街頭に野宿し、ゴミの中から食べ物を拾って飢えを満たすような人だった。ホームレスになった彼は最初の数年間、本当にそのように過ごしていた。
彼は当時、テントを持っていなかった。マイナス4度になるような寒い12月でも、公園の椅子の上で寝ていたし、銭湯やコインランドリーには入ったことがなかった。自分のようにボサボサでひげが伸びている人は歓迎されないことを知っているので、風呂や洗濯は公園の水道水を利用することが多かった。
食べるものはすべてゴミ捨て場で拾った、他人が捨てた期限切れの食品だった。その中で最も多いのはパンだった。
3日ごとに大量のパンが...不思議な「パン女 」の話
パンといえば、征一郎さんから聞いた「パン女とホームレス男」の話をしよう。
パン女(この物語には、むしろ「パンの女神」といった呼び方のほうがふさわしいかもしれない)は、公園の近くに住んでいて、パンを大量に購入していた女性だった。一方、ホームレス男は公園で路上生活をしていた。パン女はある日、期限切れのパンを公園近くのゴミ置き場に捨てた。30分後、彼女は他のゴミがまだ残っていて、パンだけが消えていることに気づいた。
その日から、彼女はある決断をした。
ホームレス男は、ゴミ置き場でパンを拾って、空腹を満たした後にも、残りのパンで2日間食べることができた。3日後、ホームレス男は再びそのゴミ置き場に行き、また多くのパンがあったので拾った。それ以来、3日おきに多くのパンが置かれ、まるでホームレス男が取りに来るのを待っているようだった。
ホームレス男は、食べ物が見つからないことに悩む必要がなくなったことを喜んだ。きっと思いやりのある女性がひそかに自分を助けてくれているに違いないと思った。
そんな生活が1年続いたある日、ホームレス男は突然、パンを取りに来なくなった。その公園から追い出されたからだ。
彼は公園を去る前に、彼女の長年の善意に感謝と別れを告げたいと思っていた。しかし、その勇気がなく、もしも会えばお互い気まずい思いをするのではないかと恐れ、相手に迷惑ではないかと心配もしていた。
私は征一郎さんに「その女性を見たことがあるのですか?」と聞いた。
「一度もありません」と、征一郎さんは言った。
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