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「ホームレスになることが夢だった」日本人男性が、本当にホームレスになった

ニューズウィーク日本版 / 2025年1月24日 6時30分

「どうしてパンを届けてくれたのが女性だと分かったんですか?」

「きちんと包装された大きな袋のパンを手で触るたびに、これはきっと丁寧で優しい女性が包んだに違いないと感じたのです」

そして征一郎さんは、公園を出た後、荒川河川敷の大きな橋の下に移り、小さなテントを張って住み始めた。

大きなセメントの橋脚を除けば、周りは雑草だらけの荒野だ。橋の上からは自動車が通過する際の轟音が聞こえてくるが、橋の下はがらんとして人影がほとんど見えないほど荒涼としている。彼の小さなテントだけがそこにぽつんと立っている。

アルミ缶収集で生きる現在の生活

今の征一郎さんは、荒川河川敷の他のホームレスたちと同じように、アルミ缶を拾って生計を立てている。

だが数年が経っても、長い間助けてくれたパン女のことを忘れてはいない。彼は挫折して絶望するたびに、「世の中には良い人もいて、自分はあの女性に助けられた。彼女の期待を裏切ることなく、強く生きなければならない」と自分を励ましている。

他のホームレスは明け方にアルミ缶を集めに出かけることが多いが、征一郎さんは毎晩11時ごろに「出動」する。多くのサラリーマンが朝夕の通勤時に飲み物を買うため、住宅街近くのゴミ箱には多くのアルミ缶が置かれていて、取りにくる人を待っているようなのだという。

本人曰く、征一郎さんは荒川一帯の「アルミ缶作業者」の中で最も収入が少ない。1回の収入は通常2000円前後で、週に3回しかアルミ缶を売りに行かない。

もし体調を崩したら、仕事をやめて何日も寝続けなければならない。彼は約10年前から病院に行ったことはなく、気分が悪くなると薬局で買った風邪薬を飲んで、長時間寝て体力を回復しただけだという。

今の征一郎さんはアルミ缶を拾って生計を立てている(左)/公園の蛇口は征一郎さんが水を飲み、シャワーを浴びる場所(右)

無一文になり、餓死を試みたが...

仕事をしなければ、もちろん収入もない。一日に1袋50円のインスタントラーメンしか食べない日も珍しくない。征一郎さんにとって、ご飯は食べなくても耐えられるが、コーヒーは飲まなければならないし、タバコも吸わなければならない。彼が稼いだ決して多くはないお金は、ほとんどこの2つに費やされている。

征一郎さんは社会や他人に迷惑をかけたくないと思っていて、無一文になっても、物乞いはしないという。

実際、生きていけないほどの苦境に陥るたびに、いっそ自分を餓死させようと考えるそうだ。公園のベンチに横になって、何も食べずに気絶すれば死ぬことができると思って、本当に実行してみたこともある。

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