トランプ大統領のパリ協定再離脱、「大した影響はない」と専門家...米国は「老大国」に転落か
ニューズウィーク日本版 / 2025年1月28日 20時20分
木村正人
<パリ協定は「米国に経済的負担を強いるボッタクリ」だとして再離脱を指示したトランプだが、これには石油・ガス大手からも懸念の声が上がっている>
[ロンドン発]ドナルド・トランプ米大統領は就任当日の1月20日、早速「国際環境協定における米国第一主義」と題する大統領令に署名し、パリ協定は米国に経済的負担を強いるボッタクリで、米国の国益に沿わないと再離脱を指示した。
トランプ氏は民間部門の活動を政府が制限しない市場原理主義が経済成長と環境保護を両立させるというリバタリアン。しかし国際社会や環境保護団体は「世界第2の温室効果ガス排出大国のパリ協定再離脱は気候変動対策に向けた世界的な取り組みを損なう」と厳しく批判している。
トランプ氏は米国の石油・ガス生産を促進するための国家エネルギー緊急事態宣言も発令した。アラスカ州などにおけるエネルギーインフラプロジェクトの環境レビューと承認を迅速化して化石燃料の生産を拡大し、エネルギー価格の低下と輸出の増加を目指している。
再離脱はクリーンエネルギーへの投資計画に役立たない
米エネルギー企業の手続きは簡略化されるが、環境への影響が懸念される。トランプ支持派は化石燃料の生産拡大が米国のエネルギー輸出力を強め、エネルギーコストを低く抑えることで経済成長につながると主張している。
しかしトランプ支持派の石油・ガス大手との間で予想もしなかった波紋を広げている。
ロイター通信(1月22日付)は「石油・ガス大手はトランプ氏が国内のエネルギー開発を奨励したいと考えていることを歓迎しているが、再離脱はクリーンエネルギーへの世界的な移行に向けた投資計画に役立たないと懸念している」と伝えている。
気候変動リスク専門家はロイター通信に「米国がパリ協定から再離脱することで規制が曖昧になり、複雑さが増し、多国籍企業が移行戦略の不確実性に対処する中で法的紛争に巻き込まれる恐れが出てくる」と話している。
平均気温が上昇するごとに異常気象は激化
英インペリアル・カレッジ・ロンドン環境政策センターのフリーデリケ・オットー上級講師は「パリ協定は人権に関する協定だ。格差を拡大し、基本的人権を侵害しようという意図をあからさまにしているトランプ氏が米国をパリ協定から再離脱させても全く驚かない」という。
「気候変動はすでに米国内、世界中で人々の生活を困難にしている。世界の平均気温が上昇するごとに異常気象は激化し、食料・住宅・労働・医療など基本的人権に影響を及ぼす。トランプ氏が何をしようと、これまで以上に彼とは異なる物語を語ることが重要だ」 (オットー氏)
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