「103万円の壁」見直しではなく「壁なし税制」を...金持ち優遇をなくす「3つの方法」
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月2日 14時25分
現行制度にある、配偶者控除、扶養控除、医療費控除、ひとり親控除、寡婦控除などの狙いは素晴らしいと思う。国の支えが必要な時はもちろんある。だが、その目的達成のためには「控除」という形がベストな策ではない。
例えば、子を持つ親を応援したい!という思いは素晴らしい。それで、扶養親族の控除が設けられ、子供1人当たり38万円の所得が非課税になっている。だが、これでは親の所得税率次第で応援の度合いが変わるのだ。
例えば、課税所得が890万円で所得税率23%の人にとって、この控除で8万7400円の節税ができる。一方、所得が189万円で税率5%の人は1万9000円だけ。子育て中の低所得者が一番政府の助けを必要としているはずだが、収入が4倍以上の方を政府が4倍以上応援している形だ。間違った「推し活」ではないか。
その是正策と解釈できるものとして、既存の児童手当制度の拡充が近年、進んでいる。扶養控除の縮小は(国民民主党の反対もあって)実現できていないが、いいスタートだ。
全ての控除に関して同じ考え方が当てはまるだろう。今は、税率の高い人の方が大きな恩恵を受ける。他の救済策もあるが、少なくとも控除だけを見ると、配偶者がいる人、配偶者が亡くなった人、病気を抱えている人、どんな事情でも、低所得者は5%に所得税率を抑えるという形でしか応援してもらえない状態だ。
控除より、所得額と関係なく、定額の手当制度の方が公平で、目的達成への近道であろう。「控除なし!」は響きが悪いが「公平な手当を!」は悪くないでしょ?
まあ、政治家に任せるけど、現行制度を維持する場合はぜひ「低所得者を5%だけ応援します!」と、街頭演説などで公言してほしい。
ついでに、現行制度の控除にはだいたい所得制限がある。一定の収入を増えると控除や支援が受けられなくなる。これも「壁」だ。しかも、103万、106万、130万などだけではない。めったに聞かないけど、年収850万円以上にも複数の壁が立ちはだかっている。素直に稼がせてほしいと、思わない?
よっし、全部なくしちゃおう! 高所得者に、同じ定額の手当を与えて応援しよう。その方が、手続きがシンプルだし、どうせスロープ式の累進課税だから、彼らから税金でそれ以上を取り戻すから大丈夫でしょう。
では、まとめよう。
・壁のないスロープ式の税率を導入する
・医療保険や年金の二重構造をなくす
・控除をなくし、手当に変える
この3つの方法で、とっても公平かつシンプルな税制度になる。確定申告が簡単すぎて、税理士が暇になってしまうかもしれない。
しかも、1回できた制度の設定金額を物価上昇と連動させることができたら、今数年おきにやっている「所得いくらで税率何パーセントにする?」といった審議も部分的に楽になるから、議員も暇になる。
そして、複雑な説明を必要とするこんな面倒くさいコラムも書かなくて済むから、僕も暇になる。でも構わないよ。この件ではぜひ、働き控えさせてください。
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