「掘って掘って、掘りまくれ」トランプ2.0のアメリカは石油人脈が仕切る
ニューズウィーク日本版 / 2025年2月6日 14時38分
ジェフ・ヤング(環境・サステナビリティー担当)
<原油の掘削もLNG輸出も拡大。前政権の排ガス規制は廃止して、メタンガスの放出は黙認。バイデン政権のエネルギー政策は180度転換される>
与党・共和党が多数派の米上院で、ドナルド・トランプ大統領が政府の要職に指名した人事を粛々と承認する儀式が続いている。
そんななか、エネルギー業界は政権に大胆な要求を突き付けてきた。なにしろ昨秋の選挙戦では、トランプだけでなく多くの共和党議員や知事の応援に記録的な資金を注ぎ込んできた。当然、元は取りたい。
全米石油協会(API)は1月14日、トランプ政権と議会に対してエネルギー政策の独自「ロードマップ」を提出した。とにかく掘らせろ、自動車の排ガス規制や天然ガスの輸出規則は撤回しろという内容だ。
「先の選挙ではアメリカのエネルギー政策が問われ、われらが勝った」。APIのマイク・ソマーズCEOは記者会見でそう述べた。大統領選も議会選も共和党が制した以上、石油業界の未来は明るいというわけだ。
選挙資金を追跡する非営利団体オープンシークレッツによると、石油・天然ガス業界は過去のどの選挙よりも多くの資金を共和党と保守系の候補者や政治団体に提供した。
昨年の選挙戦における業界の政治献金は総額約2億3900万ドルで、2020年の選挙より約60%多い。その約89%は共和党または保守派の団体に流入したが、大半は選挙資金規制の対象にならない「ソフトマネー」または候補者の陣営に直接渡さない「外部支出」という形だった。
カリフォルニア州サンホアキンバレーにあるサウスベリッジ油⽥の掘削現場 HALBERGMAN/GETTY IMAGES
アメリカの石油・天然ガス生産量はバイデン前政権下で急増し、今や押しも押されもせぬ世界最大の産油国だ。それでもソマーズはトランプ政権に対し、まずは大西洋岸、太平洋岸、およびメキシコ湾岸の数億エーカーに及ぶ海域での新規掘削禁止を撤回しろと要求した。
「今こそ国有地のリースに関してエネルギー第一の姿勢を復活させ、わが国はエネルギー投資を歓迎するというシグナルを送るべきだ」とソマーズは言う。
トランプ政権にはバイデン時代の禁止命令を覆す権限があると、法廷で主張する用意もあるという。ただし多くの環境法の専門家によると、そのような動きには議会の承認が必要だ。
ソマーズは液化天然ガス(LNG)の輸出ターミナル新設についても、バイデン政権による禁止措置の解除を求めている。ウクライナ戦争でロシアからの天然ガス供給が激減したため、今は欧州諸国がアメリカ産LNGをせっせと買っている。
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