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第1期 叡王戦本戦観戦記 鈴木大介八段 対 村山慈明七段(松本哲平)

ニコニコニュース / 2015年11月12日 17時30分

第1図

■十八番の四間飛車

 現在のプロ間では振り飛車が苦しい情勢にある。トップクラスの対局では角換わりや横歩取りなど、圧倒的に居飛車同士の戦いが多い。アマチュア間では人気のある、角道を止めた振り飛車はほとんど見られない。それだけに、今回の対局には期待していたファンも多かったのではないだろうか。

 鈴木大介八段といえば言わずと知れた四間飛車の使い手。その十八番を本局で採用した。角道を止めるクラシカルな四間飛車が減った理由は、天敵の居飛車穴熊の存在。早めに端の打診をしたことが鈴木の工夫で、受けてくれれば穴熊にされたときに振り飛車の得になる。

 村山慈明七段はその打診を見て、ギロッと鈴木の顔を見た。そしてすぐに端を受ける。対策十分、といわんばかりの様子は迫力があった。村山の作戦は居飛車穴熊。端の関係で損をしても戦えるというわけだ。

 対局が行われたのは11月7日。午後7時の対局開始から、30分もたたないうちに戦いが始まった。

■大チョンボ

 待機策をとる村山に、鈴木が積極的に仕掛けた。「機敏な動きで、自信のない展開になった」と村山。ところが、重要な局面で鈴木に失着が出てしまう。

【第1図】http://p.news.nimg.jp/photo/962/1677962l.jpg

 鈴木は第1図で▲7九飛と寄ったが、△4五歩が「手応えを感じた」(村山)という厳しい手になった。「飛車を寄って手がないと思ったら、突かれてしびれた」と鈴木。△5七角打(第2図)と、強烈な攻めが炸裂した。先手は飛車の位置がたたっている。

【第2図】http://p.news.nimg.jp/photo/963/1677963l.jpg

 局後、鈴木は「飛車回りは大チョンボ」と嘆いた。戻って第1図では▲5五歩△同歩▲5九飛が正着で、5筋を突き捨てるのが振り飛車らしい呼吸だ。「(▲5五歩を)突き忘れたのは振り飛車党にあるまじき失態」、「本譜は10回やって1回勝てるかどうか」、「泣きたくなった」。感想戦では、鈴木のぼやきが止まらなかった。

■甘さが出た

 Ponanzaが示す評価値は村山側に1000点以上も振れている。局後は「勝ち目がないと思った」と苦笑した鈴木だが、ここからの粘りには目を見張るものがあった。

【第3図】http://p.news.nimg.jp/photo/964/1677964l.jpg

 鈴木は自陣飛車、自陣角で攻め駒に圧力をかける。攻めの手が緩めば、と金を使っての反撃が楽しみだ。第3図で村山が△9九飛成と逃げると、鈴木は「おやっ」という顔をして間髪をいれず▲6六角と打ちつけた。村山がうめく。
 第3図では△4八飛成▲3九角△同竜▲同金△4八銀と踏み込めばよかった。「甘いところが出た。四枚穴熊なのに無難な手を指してはいけない」と村山。盤に向かう村山の耳は紅潮し、舌打ちが聞こえる。余裕がなくなっている様子は明らかだ。

■鈴木の追い上げ

 この日解説を務めたのは、村山の兄弟子にあたる飯島栄治七段。村山が電王戦FINALに出場したときには事前研究を共に行うなど、普段からの信頼関係がうかがえる間柄だ。その飯島七段は、△5七銀(第4図)を見て声を上げた。

【第4図】http://p.news.nimg.jp/photo/965/1677965l.jpg

 「すごい手つきでしたね。感情が入り乱れてますよ、盤上に。普段は手つきも優しいんですけど」。興奮気味に話す飯島七段の様子から、戦いの激しさが伝わってくる。

 第4図で鈴木が▲5九歩と打つと、村山は「そうですか、ひえー」と頭を抱えた。鈴木は「自分の感覚では、歩を打って逆転していると思った」。それだけ手応えがあったということだ。実際はどうなのか。

■冷静な順

【第5図】http://p.news.nimg.jp/photo/966/1677966l.jpg

 第5図は先手が勝負に出るチャンスだった。▲3二と△4八歩成▲3一と△同銀▲1七玉△5八香成▲4四金の局面がどうか。後手玉は詰まないので先手玉に詰めろの連続で迫れるか、という勝負になるが、村山は「自信がない」。このとき村山は一分将棋。実戦では何が起こっていてもおかしくなかった。

 本譜は▲4九歩と受けたが、対する△4八歩成▲同歩△5八香成▲同歩△4二銀が好手順だった。自陣の脅威になると金を消して冷静だ。「手を戻すのは見えてなかった」と鈴木は悔やんだ。

■村山が勝ちきる

【第6図】http://p.news.nimg.jp/photo/967/1677967l.jpg

 第6図では▲2四歩が最後の勝負手。だが、本譜は▲4五金と寄ったため△8九竜▲3九香△7七角▲同角△同歩成でと金を作られてはっきりした。「どちらも手を渡す意味だったけど、本譜は渡しすぎた」と鈴木。

 村山は着実にと金を寄せ、桂も成り込んで圧倒した。まさに勝ち将棋鬼のごとしだ。鈴木はお茶の入ったグラスを口に近づけると、「バカだねえ」とつぶやく。勝負に出るタイミングを逃したことで、最後は差がついた。

 結果的に攻めきった村山だが、「と金を作られて焦る展開にしてはいけなかった」と反省する。1回戦で「中終盤の精度を上げたい」と語っていた村山にとっては、課題の残る一局にもなった。準決勝の相手は山崎隆之八段。次の戦いはすぐ先に迫っている。

(松本哲平)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]【将棋】第1期叡王戦 本戦 鈴木大介八段 vs 村山慈明七段【ニコルン対応】 - 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv240229867?po=newsinfoseek&ref=news
・将棋叡王戦 - 公式サイト
http://www.eiou.jp/

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