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ボカロP・Aira キャッチーなメロを生みだす秘密。「イラストレーション」「フィナーレをあなたに」激情を秘めた楽曲制作を語る【はじめて聴く人のためのインタビュー】

ニコニコニュース / 2024年3月25日 11時45分

 様々なボカロPの注目曲をリスト化し、その内容と併せて様々なインタビューに応えてもらう本シリーズ。今回は2021年にボカロPとしての活動を始めた、Airaさんをピックアップ!

 まだわずか活動歴3年未満というルーキーながら、ボカコレや無色透名祭といった様々な投稿祭で確かな存在感を放つAiraさん。現在各所への楽曲提供といった活躍も増え、着実にプロデューサーとしての手腕を発揮しつつある彼に、今回は様々な角度から音楽制作にまつわる話を伺った。

 これまでの作品についてのこだわりから、制作を行う上でのちょっぴり変わったルーティンまで。エピソードを知ればさらに楽曲の魅力がわかる、そんなインタビューとなっている。

取材・文/曽我美なつめ


曲作りは鼻歌&散歩中がメイン!?音楽制作漬けの毎日に迫る

──まずは、Airaさんとボカロの出会いを教えて頂ければ。

Aira:
 VOCALOIDとの出会いは、小学校の頃にやった「初音ミク-Project DIVA」です。体験版で知った「ロミオとシンデレラ」が入口でした。今でも大好きでよく聴いてますね。そこからいろいろボカロを聴き始めて、小中高の頃は1リスナーとして楽しんでいました。高校の頃にバンドを少しやってたんですけど、その影響で作曲も始めて。そこから3~4年後に、ボカロPとしてデビューしています。

──高校の頃のバンドはどういうきっかけで始めたんでしょう。

Aira:
 中学の時の知人に頼まれて、その子の高校の軽音部でキーボードを担当したのが始まりです。最初はサポートだったつもりが、いつのまにか正規メンバーになってたんですけど(笑)元々ピアノを3歳頃からやっていて、ずっと鍵盤楽器は続けていましたね。
あと仲の良い先輩の影響で、中学の頃にドラムを始めたりもしてました。先輩の家が近所だったんですけど、家にドラムセットがあって。よく遊びに行くうちに叩かせてもらったりして、ドラムってちょっと面白いなって思い始めて。

──幼少期から、音楽に携わる方が周囲に多かったんですね。ボカロPに挑戦しようと思ったのはどんな経緯で?

Aira:
 作曲を続ける中で、ネットなどでもっと大勢に自分の曲を聴いて欲しいと思うようになったんです。アマチュアで活動する作曲家の曲でも、ボカロなら人目に着くチャンスが多いと思って。僕が活動し始めた2021年より少し前、2020年頃はちょうどVOCALOIDジャンルもまた活気が戻り始めていましたし。

──ボーカリストやシンガーだと、路上演奏やライブハウス出演という手もありますが。作曲家やトラックメイカーとして作品を出す機会は、確かにアマチュアの音楽シーンではかなり限られますよね。

Aira:
 歌モノだと、まず人間のボーカリストを探すハードルが高いですしね。その点、やっぱりVOCALOIDの存在にはすごく助けられてます。

──ボカロ曲を作る際、どういったものがアイデアになりますか。

Aira:
 自分の場合、作詞と作曲、編曲でそれぞれアイデアの出る場所がちょっとずつ違っていて。歌詞は自分の中にある感情や思想を出すことが多くて、他作品から影響を受けることは少ないかもしれません。作曲、というか主にメロディは、布団の上やトイレ、お風呂とか、リラックスできる所で降ってくることが多いので、それをふんふん鼻歌で録音して。編曲やアレンジは、スマホで曲データを聴きつつ散歩しながらやってます。曲を聴いて思いついたアレンジやアイデアをばーっとメモして、家に帰ってまとめて作業する、っていう。

──曲を作る方は皆さんパソコンに向かってウンウン唸りつつ作業をするイメージですが、その印象とは大きくかけ離れてますね。

Aira:
 「やるぞ!」って気合い入れちゃうと、逆にあんまりいいものができなくて…(笑)リラックスしてる時の方がいいものができる気がします。今はボカロ曲と別に仕事としての楽曲制作もあって、その作り方の差もあるかもしれませんね。案件だと先方からの指示もありますし。

──お仕事に加えて、日々の生活の中でも趣味の音楽制作の作業をして…ずっと頭の中が作曲に占められる形ですよね。オンオフの切り替えが上手くできず辛い、ということはありませんか?

Aira:
 そこはもうルーティンというか、生活の一部、みたいな。ずっと音楽の事が頭の中にあるのがごく当たり前になってます。ただその分お話したように、自分の日頃の感情や考え方がボカロ曲には反映されることが多くて。なので、時期によって曲の傾向はかなり変わりますね。初期はいろいろ悩む時期だったのもあって、歌詞も比較的ネガティブ寄りなんです。けど最近は結構、ポジティブに向かっている感覚はありますよ。

──それは転換点のようなものがあって?

Aira:
 というより、元々根がポジティブなんだと思います(笑)作品を重ねる中でネガティブに作るより、ポジティブに作った方が好きなものをいろいろ詰め込んで、気持ちよく作曲できると気付き始めて。

──例えば、どういう所で自分のポジティブさを感じますか。

Aira:
 何かあってもそんなに落ち込まない、というか。具体的な話だと先日もボカコレがありましたが、僕自身はあまりランキングに執着しないんですよ。こんなもんかあ、ぐらいで。そういう意味ではネガティブになり辛い気はします。順位や数字も多少は気にしますけど、それよりは動画やSNSのコメントを見て、みんなが自分の曲をどう聴いてくれたかの方が気になりますね。

Adoを理想として作られた曲とは?CeVIO、Voisonaの魅力も語る

──今回、そんなAiraさんの楽曲を10曲ピックアップさせて頂きました。中には思い入れの強い曲もあるのではないかと思うのですが。

Aira:
 「イラストレーション」はそれこそ作風が変わってきた頃の曲でしたが、自分でも非の打ちどころがないぐらい気に入ってます。テーマやオケ、歌詞の作り込みもですし。Voisonaの知声 (Chis-A)を正式に使ったのはこの曲が初めてでしたが、歌唱力高く聴こえるよう調声にかなり気を遣った記憶がありますね。ビブラートのかけ方とか、語尾やフレーズの頭で声が裏返る表現とか。この頃歌い方の理想として、よくAdoさんをイメージしていて。「ここでこういう歌い方をするとカッコよく聴こえるな」という部分は、かなりAdoさんの歌唱を参考にしました。

──Airaさんの曲は、やはりボーカルの独特な声の揺らぎが非常に特徴的かと。それを理想のテクニックとして、ボカロの声に落とし込んでいる感じでしょうか。

Aira:
 そうですね。ボカロもですけど、やっぱり自分はJ-POPや王道のポップソングも好きで。そういった曲って、基本的にメロディや歌がメインじゃないですか。なので人間の声として聴いても、歌が上手いとか表現力がある、と感じられる作り込みを大事にしています。なのでぜひ曲を聴く際は、ボーカルワークにも注目してもらえると嬉しいですね。

──同様にボカコレ参加曲だった「フィナーレをあなたに」も、その面がかなり顕著に出ていると感じます。

Aira:
 これも結構自分のすべてが詰まった曲というか、完全に覚醒していた時期の曲で(笑)ダークな曲調ではありつつ、明るくも前向きさのある歌詞が書けたな、と感じてます。

──そこで例えば、曲調もポジティブに向かうことは考えなかったんですか。

Aira:
 正直迷った部分もありましたが、曲調も歌詞もポジティブな曲って、言わばド王道じゃないですか。自分の場合、それはボカロじゃなくてもいいかな、と思って。そういう音楽はわざわざボカロでやらなくてもいいというか。ボカロリスナーの方って、ボカロ曲のネガティブさに救われている人も多い印象があるんです。それもあって、人の後ろ向きさに寄り添う部分は結果残していこうと思ったんですよ。

──それがある意味、商業や仕事ではないボカロ曲だからこその魅力だと仰られる方も多いですね。

Aira:
 最新作の「天国より少年くんへ。」もその傾向はありますけど、今作に関してはちょっと意識的に曲の作り方を変えたりもしてます。アレンジやミックスも一から考え直したというか、今までの手癖をわざと全部排除して作りました。無意識にやっていたことを封印して、新しい事を意識的に取り入れて…なので歴代でもダントツで制作時間が掛かったと思います。苦労しました(笑)曲を聴く際に、その点も昔の曲と比べてみて欲しいですね。

──今作もですが、Airaさんの作品の全体感として、音楽的同位体やVoisonaなどのソフトを使う楽曲も多い印象です。この子たちの魅力を、どのような所に感じていますか?

Aira:
 声の切なさや儚さ、寂しげな響きが、僕の曲の雰囲気や表現したい世界観にマッチすると思っています。初音ミクに比べて、より繊細な表現が歌で実現できるというか。なので「メモリア」みたいに、明るい曲は初音ミクに歌ってもらうこともありますね。ボカコレみたいなここぞという勝負所では、やっぱり自分の音楽の良さを100%発揮できる、知声やCeVIOに頼ってしまうんですけど(笑)

ボカコレ2024冬を経て…最近Airaがハマるボカロ曲はコレ!

──ボカロ曲制作の中で、作業として一番楽しいのはどういった瞬間でしょう。

Aira:
 少数派だと思うんですが、僕はミックスが一番楽しくて。作曲や作詞だと「3歩進んで2歩下がる」をずっと続けますけど、ミックスはもう音の調整を一つひとつ積み重ねていくだけというか。着実に完成へ向かう感覚があって、すごく気持ちいいし楽しいです。

──楽しさとは別に、作曲の際こだわりとして詰めているのはどんな部分ですか?

Aira:
 メロディはキャッチーに作ることを心がけてます。オケ全体だと複雑な曲が多い印象を持たれていると思うんですけど、メロディだけはシンプルな説得力のあるものを置こう、と意識して作業してます。

──それはやっぱり、オケとメロディのギャップが狙いで?

Aira:
 それもありますが、そもそもみんなが好きになりやすい音楽って、やっぱり日常の中でふと鼻歌が出てきたり、思わず口ずさんだりすると思うんです。それだけ印象的なメロディって大事というか。僕自身もやっぱりキャッチーな音楽にどうしても惹かれますし。そんなふうに、聴いてくれる人の日常に自分の音楽が溶け込めるのも、すごく理想的ですよね。

──そのお話から、最近ですとAiraさん自身が惹かれたボカロ曲や音楽などはありますか。

Aira:
 それこそ前回のボカコレを経て、ぶっちぎりでハマった曲が2曲あって。ひとつはmaigoさんの「病欠」です。メロディもアレンジもすごいし、あれは久々に食らった曲でしたね。もうひとつは安藤なれどさんの「延命」ですね。安藤さんの曲は2年前ぐらいから聴いてましたが、今回の曲でさらに進化を感じたというか。とにかく世界観がすごくて、延々リピートしています。


 あとボカロPだと、僕は鶴三さんも自分の師匠だと思ってるぐらいずっと好きで。ここ1年で一番曲を聴いてるボカロPですね。僕が自分の曲でやってる、複雑なオケとキャッチーなメロディっていうスタイルを、さらに洗練された完成度の高い所でされているというか。無色透名祭の「散々でいる」を知った時に「この人はヤベえ」と思って、そこから過去の曲も遡って全部聴いたぐらい衝撃を受けました。全人類に聴いて欲しい方です。

──ボカロ以外の音楽ですといかがでしょう。元々のルーツも、やはり最初のバンド活動などと関係しているんでしょうか。

Aira:
 学生の頃は邦ロックにハマってました。MY FIRST STORYとかUVERworldONE OK ROCK…。マイファスはちょうど5日前にもライブに行ったんですよ。ただ最近だと、藤井風さんの曲はもう大好きで毎日聴いてます。自分の理想形の音楽というか、日本の今のポップスだとこの人が頂点だと僕は思ってますね。音楽性の素晴らしさやメッセージ性もそうですし、どの曲もずっと飽きずに聴けるスルメ曲で。直近でも「満ちていく」が映画主題歌に起用されたので、映画も劇場に足を運びたいと思っています。

──藤井風さんは元々ピアノの素養も高いですし、音楽の軸がピアノであるAiraさんが惹かれる理由もわかる気がします。最後に、これからのボカロPとしての抱負について聞かせて頂けますか。

Aira:
 最新作でも挑戦したんですが、今後は常に新しいことにチャレンジしたいと思ってて。音数を極端に減らしたバラードとか、今までにない引き出しをどんどん開けていきたいです。今回みたいに苦労する事も多いですし(笑)、いつもの雰囲気が好きって言って頂けるのもすごく嬉しいんですけど。そういう部分は例えばアルバム制作なんかで好きなだけやれるかな、と。なのでAiraとして前に出ていく曲はどんどん新しい一面を見せて、それを楽しみにしてもらえたらと思いますね

Information

Airaプレイリスト 詳細はこちら

「The VOCALOID Collection」 公式サイト

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Aira Xアカウント

これまでに公開された「はじめて聴く人のためのインタビュー」

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