由紀さおり、歌い続けて55年「1日1秒をむだにせず生き切ることが大切」
日刊スポーツ / 2024年4月17日 5時0分
由紀さおり(77)が歌手生活55周年の節目を迎えている。
4月17日には記念シングル「人生は素晴らしい/やさしいさよなら」と、CD3枚組のベストアルバム「ベストオブベスト」を同時発売する。そして21日からはコンサートツアー「新しいわたし」もスタート。来月にはフランス・パリ公演も開催する。常に努力を怠らず、チャレンジ精神を忘れずに55年。モットーは「1秒も無駄にせず今日を生き切ること」だ。【松本久】
◇ ◇ ◇
走り続けて55年。「あんまり先のことを考えても、それは神さましか分からないこと。だからまずは今日の1日を1秒たりとも無駄にせずに生き切ることが大切。『生きる』でなく『生き切る』。そういう覚悟です」。
記念曲「人生は素晴らしい」はフランスの作曲家が書き下ろし、松井五郎氏が詞を付けた。「人生は素晴らしい」「ありがとう」が何度も繰り返される。「人との出会いには大きな喜びもあるけど、人生にはつらい別れもあるでしょ。我々の業界も最近、大きな星が旅立ちました」。親しかった志村けんさんや谷村新司さん、八代亜紀さんらの死去を振り返り「でも、悲しみの1つ先にはすてきな出会いをちょうだいしたんだと思うこともたくさんあります」。出会いに感謝をし、別れさえも前向きな心でとらえる大切さに言及した。全てを含めて「人生は素晴らしい」のだと。
ベストアルバムには「夜明けのスキャット」などの代表曲やカバー曲など55曲を選んだ。87年にレコーディングをしながら、37年間も未発表だった「ふられ上手」を初収録した。歌唱していながら発売していない作品は「これしかない」という貴重な“お宝”だ。
コンサートのタイトルは「新しいわたし」。これには「他の人と同じことをやっても意味がない。現状維持ではなく、新たなチャレンジをやり続ける」との思いを込めた。「でもね、他の人のやっていないことを探してやるのって結構な作業なのよ」と笑いながらも“進化”に軸足を置く芯は全くぶれない。
今年のチャレンジと位置付けているのは7年前に始めた三味線のレベルアップだ。「三味線だけで美空ひばりさんの『みだれ髪』を歌ったり、漫談をやるとか。童謡もいけるかも」。
5月17、18日(現地時間)には11年ぶり3度目となるパリでの公演を開催する。「昨年秋からレッスンを受けているフランス語で都々逸をやることも考えています。まだ未確定ですけど」。日本映画「ゴジラー1.0」のアカデミー賞受賞を引き合いに、日本語がそのまま世界で通じる時代の到来を歓迎している。「言語に対して懐が深くなったというか…。日本語の語感を感じてくださる方が世界各国にいらっしゃる時代になった。だから今回、パリで日本語の曲を歌うということはすごく大きなチャンス」と楽しみにしている。日本語の歌謡曲を歌ったアルバム「1969」を11年に発売し、世界50カ国以上でヒットをさせた実績を持つだけに、エンタメが国境や言葉の壁を超えて世界中に届くさまに感慨もひとしおだ。
77歳を迎えた今も透明感のある声を保ち続け、7センチのピンヒールを履いてステージに立つ。そのために声帯ケアに週1回通い、毎日のストレッチと筋トレを欠かさない。「自分が与えられた状況と体調を加味して、今日はここまで努力したっていうところをやって1日を終えるのが私のポリシー。何かにチャレンジすることがフレッシュなの」。
亡き母の口癖が座右の銘だ。「憂きことの なほこの上に積もれかし 限りある身の 力ためさん」。努力を続けることの大切さを説いた言葉で、元プロ野球監督の野村克也さんの金言「努力に勝る天才なし」にも通じる。
童謡歌手として歌い始めたのが小1の時。由紀さおりと改名をして69年3月に「夜明けのスキャット」でデビューし、150万枚の大ヒットを記録した。12年に紫綬褒章、19年に旭日小綬章を受章する栄誉を得ても常に初心を忘れず向上心は変わらない。喜寿を過ぎ、円熟味を増した由紀はその歌声で聞き手の心を揺さぶり続ける。
◆由紀さおり(ゆき・さおり)本名・安田章子。1946年(昭21)11月13日生まれ、群馬県桐生市出身。小学生の時から「ひばり児童合唱団」で童謡歌手として活躍。69年に由紀さおりとして「夜明けのスキャット」で再デビューし150万枚のヒット。歌手だけでなく女優、司会、バラエティーなどで幅広く活動。CMソングは300曲以上歌唱。12年に紫綬褒章、19年に旭日小綬章。趣味は陶芸、日舞。
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