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中東和平案はトランプの大統領選挙向けパフォーマンス~中東の火種になる可能性は低い

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年1月31日 17時35分

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(1月30日放送)に元外務省主任分析官・作家の佐藤優が出演。米・トランプ大統領の発表した中東和平案について解説した。

中東和平案を発表し、握手するイスラエルのネタニヤフ首相(左)とトランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2020年1月28日 写真提供:時事通信

パレスチナ議長、安保理演説へ

パレスチナ自治政府のアッバス議長は、今後2週間以内に国連安全保障理事会で、アメリカのトランプ大統領が提示した中東和平案について演説を行う。パレスチナのマンスール国連大使が29日に明らかにした。マンスール国連大使は記者団に対して、この安全保障理事会で「アメリカの中東和平案の是非を国連総会で採決できるようにする決議案が採択されることを望む」と語った。

森田耕次解説委員)アメリカのトランプ大統領が発表した中東和平案。ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地でイスラエルの主権を認める、エルサレムは分割せずにイスラエルの首都とする、パレスチナ難民の帰還する権利も認めていないということです。イスラエルが長年求めてきた内容が盛り込まれた一方、パレスチナが主張していた東エルサレムを首都とすることも認められず、将来の独立国家の領土と位置付け西岸も伸縮されているということで、パレスチナ自治政府のアッバス議長はこの和平案について「1000ものノーがある」と怒りをぶちまけて拒否する姿勢を鮮明にしています。2週間以内に国連安保理の会合で演説する方向ということです。トランプ大統領が示した中東和平案、どのようにご覧になっていますか。

佐藤)これは選挙対策だけです。まとまらないことがわかっていて、「俺はイスラエルの言うことを100%主張しただろう。アッバスは文句をつけた。俺が正しいことが証明された」と。中東和平をまとめる気なんてこれっぽっちもなく、これは一種のプロレスですよ。最大限要求を見せて、それを断らせて「和平を望んでいないのはパレスチナ側だ」とアメリカ国内のキリスト教右派を喜ばせる。

森田)ここがトランプ大統領にとって重要な支持基盤らしいですね。

佐藤)すべては選挙だけを考えてのことです。率直に言って、イスラエルは迷惑千万と思っていますよ。パレスチナも「こんなに酷い目に遭っているのだ」と訴えるいい機会だと思っています。東エルサレムはもともと我々の首都だったのに占領されてしまって、西岸も占領されるという酷いことが行われているのだということを安保理で訴えて、国連総会で議決しましょうと。そうすれば否決されますからね。お互いにショーをやるということです。

森田)安保理にはアメリカが入っていますから、決議内容は否決されますね。

佐藤)でも、もし本当にアメリカがアッバスに話をさせたくないのだったら、そのようにできたはずです。話をさせて意見が激しく対立することにトランプは利益を見出しているわけです。

キリスト教福音派の教義“クリスチャン・シオニズム”とは

森田)キリスト教右派の福音派というのは、イスラエル支持を信仰上の義務にしているようです。

佐藤)クリスチャン・シオニズムという特殊な考え方があるのです。シオンの丘というのがエルサレムの横にあって、このシオンの丘に帰ろうというのがイスラエルの帰還運動で、シオニズムです。それと同時に、聖書にはこの世の終わりにシオンの丘に神様が降りてきて、神様の国ができるという発想があるのですよ。その神様の国といまあるイスラエルが同じものなのだと。神様の国を守ることが大切なのだという教義なのですが、これはクリスチャンでもう片方はユダヤ教です。この世の終わりにはどうなるのでしょうか。クリスチャン・シオニストのキリスト教福音派は、イスラエルのユダヤ人は全員キリスト教に改宗すると主張しているのです。ユダヤ人たちからすれば許し難い話なのですが、政治的にイスラエルを支持してくれているからとりあえずいいか、というあまりたちのいい話ではないのです。キリスト教福音派のなかにある、聖書に書いてあるこの世の終わりに現れるイスラエルと、いま地上に存在しているイスラエルを同一と見なすという特殊な宗教運動ですね。アメリカでは力があるのです。

森田)そして、福音派の支持を何としてでも得たいというトランプ大統領。

佐藤)この人たちは雨が降ろうが槍が降ろうが選挙に行きますからね。選挙のときには強いのです。

国連安全保障理事会の会合後、イスラエルの入植活動の違法性を指摘する共同声明を発表する非常任理事国10ヵ国の代表=2019年11月20日、米ニューヨークの国連本部(共同) 写真提供:共同通信社

イスラエルは内部で保守派同士の政争

森田)一方で、ネタニヤフ首相も2019年に起訴されていますよね。3月2日には総選挙があるようですが、もう14年ほど首相在任期間があります。これを控えて、多少は選挙意識もあるのでしょうか。

佐藤)イスラエルの場合にも宗教右派がいて、西岸もエルサレム全域もイスラエルのものだと主張している人たちですから、その人たちの支持は得られるでしょう。

森田)2019年には2回の選挙があって、連立交渉がまとまらなくて。今度の選挙で1年間に3回の総選挙ということですから、連立政権ができるのかどうか。

佐藤)裏返して言うと、それくらいイスラエルの政治情勢が保守化してしまっているから、保守派のなかで争っているのです。もし勝てるような勢力がいれば緊張してまとまるのですが、ある意味では保守派が強くてまとまらないわけです。あと、周りとの関係においてイスラエルは強いですから、攻めてこられる危険性もありません。それ故に内部ががたがたしているのです。

森田)中東の火種になるのではないかという声もあります。

佐藤)その可能性は非常に低いと思います。

森田)イランもいち早く声明を出して「世紀の裏切りだ」と言っています。

佐藤)イランとしては目を外に向けたいのです。ウクライナ機を撃墜してしまったことで国内が大変ですから、それどころではありません。

森田)選挙向けの中東和平案ということなのですね。

佐藤)こういうものは、たちが悪いのです。

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