作家・まさきとしか~書いて行くうちに登場人物が勝手に進んで行く
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2020年8月3日 8時10分
黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に作家のまさきとしかが出演。自身の小説の書き方について、また、最新刊『あの日、君は何をした』について語った。
黒木)毎日さまざまなジャンルのプロフェッショナルにお話を伺う「あさナビ」、今週のゲストは作家のまさきとしかさんです。よろしくお願いいたします。
まさき)よろしくお願いします。
黒木)小学館文庫から、最新刊となる『あの日、君は何をした』という本が発売されました。読ませていただきましたが、これまでのまさきさんの小説とは違う、斬新な深層心理が描かれていますね。「何だろう、この小説は」というくらいにのめり込み、ぞくぞくさせられました。「荒海のなかを1人で小舟に乗せられ、置いてけぼりにされた」という感想を送りましたけれども、まさきさんから、本の紹介をお願いいたします。
まさき)1部と2部に分かれていまして、1部が2004年、そして2部が15年後の2019年が舞台なのですが、1部では中学生の息子を亡くしてしまった母親の内面を中心に描いています。2部では15年後、ガラッと変わって、登場人物もまた変わります。ある若い女性が新宿区のアパートで殺害され、その事件を捜査する2人の刑事。捜査が進行して行くにつれ、つながらなかった15年前の2004年に次第につながって行くというミステリーになっています。
黒木)読者としては、きっとつながるだろうと思いながら読み進めます。止まらなくなるのです。「どうつながって行くのだろう?」と。見てはいけない景色を、ページをめくるというより扉を開けて行くような感覚で、恐ろしいような、知りたくないような、でも早く知りたい。そんな感じで、最後まで一気に読んでしまいました。この小説が完成するまで、どのくらい時間がかかったのですか?
まさき)1年近くですね。
黒木)他の小説と並行して書くということはないのですか?
まさき)いまはないです。
黒木)1つのものに集中して書くのですね。1年間ですか。1日で読んでしまいました。何だか申し訳ないです。
まさき)嬉しいです。
黒木)あっという間に読んでしまいました。構成や、落としどころなどは、最初に決めてしまうのですか?
まさき)書く前に、プロットと言って、あらすじや構成をまとめたものをつくるのですが、そのプロットをつくるときは、ひたすらに考えています。
黒木)人によっては最初だけ決めておいて、後は勝手にという方もいらっしゃいますけれど、プロットをきちんとしていた方が、ミステリーとしては力があるのでしょうね。
まさき)私の場合、最初から最後まで一応の流れは考えるのですが、書いているうちに、どうしてもプロット通りには流れて行かないのです。今回も2部はそうでした。どうしてもこっちの方向に行きたいのに、人物がそういう行動をしてくれない、ということは多々あります。そのときはプロットよりも、実際に書いている方を優先します。
黒木)まさきさんの小説はとても読みやすいです。それで、話が心に落ちて来ます。状況説明だけが書かれてあるのに、いろいろな想像ができます。そこがすごいなと思います。
まさき)間違った道を進んでいないと思います。
黒木)いろいろな人が出て来るのですが、いろいろな人の気持ちがわかる。いま誰のことを説明しているのか、ということがわかります。それが、ぞくぞくします。この人の後にこの人が来て、この人の後にこの人が来るではないですか。その辺りが絶妙に素晴らしく、一気に読みました。
まさきとしか/作家
■1965年、東京都生まれ。北海道・札幌育ち。札幌市に在住。
■2007年、『散る咲く巡る』で第41回北海道新聞文学賞を受賞。
■2013年、母親の子どもに対する歪んだ愛情を描いたミステリー『完璧な母親』が刊行され話題になる。
■他の著書に『夜の空の星の』『熊金家のひとり娘』『大人になれない』『いちばん悲しい』『ゆりかごに聞く』『屑の結晶』などがある。
■最新刊は『あの日、君は何をした』(小学館文庫)
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