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腹を括りつつあるイラン ~ライシ政権が中露に接近

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年1月16日 11時30分

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 キーワード:習近平国家主席、プーチン大統領、中国、ロシア=2019(令和元)年6月5日、ロシア・モスクワ(ロイター=共同)

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月14日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。イランのライシ政権が安全保障や経済面において中露に接近しているというニュースについて解説した。

中ロ首脳会談=2019(令和元)年6月5日、ロシア・モスクワ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

イランのライシ政権が中国とロシアに接近

イランのライシ大統領が1月にロシアへ訪問し、プーチン大統領との会談を予定している。またイランのアブドラヒアン外相が週内にも中国を訪問する。いずれも安全保障や経済面の協力策を協議するとみられている。イラン核合意の再建交渉が難航する一方で、ロシアや中国との連携を演出し、アメリカへの揺さぶりを強める狙いだと考えられる。

飯田)中露に一段と接近しているという記事が出ています。

イランが核開発を止めることはない ~中露がイランとの関係を強めることはない

宮家)この問題もイランとアメリカの関係を見るだけでは不十分だと思います。私は常に米中露の力関係を見ているのですが、今回の動きを見ていると、イランは第一に「アメリカとの核交渉は終わった」もしくは「できない」と見込んでいるのではないかということです。

飯田)アメリカとの核交渉は。

宮家)トランプさんが核合意から離脱しましたが、バイデン政権ができて、一応は復帰するという方向で交渉しています。しかし、イランも相当核開発を進めていますから、それを全部なかったことにすることはできません。ウラン濃縮を濃くしているので、それを減らすことは受け入れられない。

飯田)なるほど。

宮家)これを見て「ようやくイランも腹を決めつつあるのかな」と思いました。つまり大きな流れとしては、トランプ政権からバイデン政権になって、アメリカは本気で中国との競争を最重視することになった。そしてアフガニスタンから撤退した。もちろん一定のプレゼンスは残すけれども・・・。例えば、欧州や中東、特に中東においては、アフガンやシリアやイラクからは離れるけれど、湾岸での対イランは変えない。つまりイランに対しては厳しくなる。この大きな流れのなかで、イランが生き延びるためには他に選択肢がありません。

飯田)イランが生き延びるためには。

宮家)イランが中国とロシアに近づくのは当然ですが、では彼らがイランのためにひと肌脱ぐかと言ったら、脱がないですよ。中露とも、アメリカが困ることをいくつか「弾」として持っていたいので、イランのことは支援しますが、それでイランとの関係を戦略的に強めるという気は到底ないと思います。ロシアも中国もアメリカとの関係がいちばん大事ですから。

飯田)支援はするけれど。

宮家)その意味では、ライシ政権が中露に接近しても、それは極めて戦術的な動きです。戦略的にイランと中国、もしくはイランとロシアが同盟のような形になって、アメリカと対決できるわけではないと思います。

出口が見えないイラン

宮家)実はイランが追い詰められている部分があります。イランは石油も出ますし、強力な軍隊も持っているので侮れないとは思いますが、イランの政権も再び強硬保守系になって、出口が見えない袋小路に入ってしまったのだと思います。相変わらずの状況ではありますが。

飯田)追い詰められている。

宮家)急に中国とロシアに接近したわけではないのですが、あまりいい方向には行かないと思います。「近い将来、アメリカが核合意に復帰して、イランの核開発にある程度の歯止めが利く」というような甘い見方は、おそらくこれでなくなると思います。

18日、イラン・テヘランで投票後に演説をするライシ師。イラン内務省は19日、ライシ師が同国の第13期大統領選挙で当選したと発表した。(テヘラン=新華社配信)=2021(令和3)年6月20日 新華社/共同通信イメージズ

アメリカが撤退した中東の真空をどのように埋めるか ~重要な判断を迫られるロシア、中国、イラン

飯田)そういう方向に行くということは、ウラン濃縮も含めた核開発を進めて行くということですか?

宮家)そうなると思います。

飯田)対岸の湾岸諸国が黙っていないと思いますが。

宮家)ただ、その前に、イスラエルやアメリカも含めて「それでいいのか」という話ですよ。イランが核開発をするということが中東全体に与えるインパクトを考えれば、私なら絶対に阻止したいです。「絶対に」というのは「軍事力を使っても」という意味です。しかし、それをアメリカがやるかというと、やらないかも知れないですし、イスラエルが阻止できるかというと、技術的に難しいかも知れません。実はこのような議論は十数年前からあるのです。

飯田)そうですね。

宮家)その議論が一時、イラン核合意の成立によって静まっていた。でも、今後は軍事力を含む解決策、もしくは対応策にまた戻る可能性があり、非常に嫌な状況です。アメリカが中国との競争に優先順位をシフトしたことによって、新しい状況になり、アメリカの中東における力の真空が生まれる可能性があるわけですから、ロシアも中国もイランも、場合によってはトルコも、「それをどのように埋めるか」という戦略的に重要な判断をしているのだと思います。極めて重要な動きだと思います。

60%に達するイランの濃縮ウランの脅威

飯田)そうなると、いろいろな工作活動も活発化しますか?

宮家)イランの核施設は、あるときはウイルス、あるときは暗殺団を送り込まれたりと、いろいろな形で攻撃されました。

飯田)技術者が亡くなったという話もありました。

宮家)そういうことでは済まなくなって来る可能性があるので、心配ですね。

飯田)イランでもヒズボラやフーシ派、またイエメンやレバノンなど、いろいろなところで不安定な動きがあります。

宮家)そこでももちろん揺さぶりがかけられるし、何よりウラン濃縮度が60%に達しているとも報じられています。通常であれば5%か、せいぜい20%です。それが50%、60%と上がって行けば、すぐに90%になります。核兵器製造に必要な濃度90%になると大変なことになると思っている国が、少なくとも数ヵ国あるわけです。この現実を考えると、今回のような動きはとても嫌ですね。

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