小橋賢児が俳優を休業した本当の理由
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年3月22日 22時31分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(3月1日放送)にクリエイティブディレクターの小橋賢児が出演。俳優を休業した理由とマイアミでの運命的な出会いについて語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。2月28日(月)~3月4日(金)のゲストはクリエイティブディレクターの小橋賢児。2日目は、海外での運命的な出会いについて—
黒木)小橋さんは俳優とし数々の作品に出演され、そして27歳のときに俳優活動を一応、休業されました。
小橋)一応、休業です。
黒木)しかし、長い休業になっていて、クリエイティブディレクターの道に進まれます。休業なさったというのは、「ご自分に嘘をつきたくなかった、これが本当の自分の幸せなのだろうか」といろいろと自問自答なさったということです。26歳のときにネパールに行かれたというのが大きなきっかけではあったのですか?
小橋)そうですね。若いときは生き方が上手くなかったので、「俳優だからこうしなければならない」とか、「俳優だからこういうところに行ってはいけない」という、自分のなかで「have to」をつくってしまって、気が付いたら個室のご飯屋さんに行くだけというような感じでした。いろいろなインプットを基にアウトプットをして行きたかったのですけれども、できなかった。
黒木)若いときには。
小橋)20代半ばくらいで自分の30代を想像したときに、それなりのポジションや地位があるかも知れないけれども、それは本当の自分なのかと思ったら怖くなりました。そこからいろいろなクリエイターと言われる人に会って行ったのです。その方たちは大自然のなかで遊びながら、そこで想像したものを創造に変え行くというやり方をしていました。「イマジネーションをクリエイトに変えて行く」という姿に感銘を受けました。
黒木)それを形にして行くという。
小橋)もっといろいろな世界を見なくてはと思いました。仕事で海外は行ったことはあったけれども、自分自身の足で行くべきだと、どんな世界かわからない場所に行ってみたいと思い、ネパールに1人で行きました。最初は山に登って星空がきれいだとか、夕陽を見て泣くということをしていました。そうして感情のリハビリのような数日間を過ごしたうちに、「こんなこと、長い間忘れていたな」と思いましたね。
黒木)感情のリハビリ。なるほど。
小橋)山からの帰り際に、同い年の男の子に偶然声をかけられたのです。彼の家に行ったとき、3畳くらいの狭さなのですが、素敵な奥さんと娘さんと暮らしていました。でも娘を学校に行かせるお金がないのだと言っていたのです。そのあとに夕陽を見に行きたいと言って彼に丘に連れて行ってもらったら、急に彼の背中が大きく感じて。そのとき理由はわからなかったのですが、嗚咽するくらい号泣してしまったのです。それはあとから思うと、劣等感なのですね。彼は家族を守るためにいまを必死に生きている。でも僕は未来を怖がるあまりいまの自分に嘘をついていると。
黒木)そういう意味での自分に嘘をつくということですね。
小橋)そうです。彼の人間力に対して、「俺は何をやっているのだ」と。
黒木)だからこそ、自分はこのままでいいのか、自分の幸せはここではないのかも知れないということで世界に飛び出すのですね。
小橋)それで日本に戻ってから、いままで嘘をついてごまかしていた自分というものが露呈して見えて来たのです。そうしたら、苦しくなりました。「これから変わるぞ」と格好よく行ったわけではなく、むしろ苦しくてそこから逃げるかのように、語学留学を理由に一時休業という形で海外に飛び出したというのが本音です。
黒木)そこでまたいろいろな出会いがあるわけですよね。
小橋)そうです。逃げ出すということは悪いことだとは思いません。何か現状に迷っているのであれば、とにかく無理やりにでも場を変えるということは大切だと思います。そうするといろいろな出会いがありますし。
黒木)出会いが。
小橋)最初にアメリカのボストンに行っているときに、とにかく冬の間は勉強をして、春休みになったら、「外国人を見つけてアメリカを車で横断する」という目標と、「英語で喧嘩ができるようになる」という2つの目標をたてました。
黒木)なるほど。
小橋)それを何とか成功させて、たまたまゴールがマイアミだったのですけれども、そこでのちにやることになるような世界最大級の音楽フェスに出会いました。フェスというのは、さまざまな国の人が音楽という共通言語を通じていろいろな感情を交わすもので、ときに我を忘れるような楽しさのなかから、自分の閉ざしていた感情やまだ見ぬ感情など、自分の知らない感情に出会うことができるのです。そこで新たな自分の「want to」、「自分がこれをしたい」というものに出会えるような感覚が芽生えたのです。
黒木)have toからwant toに変わったということですね。
小橋)そうなのです。
黒木)そして、その10年後に音楽フェスのディレクターをやられるのですよね。
小橋)そうなのです。それが運命的だと思います。
小橋賢児(こはし・けんじ) / クリエイティブディレクター
■1979年8月・東京都生まれ。42歳。
■8才で芸能界デビュー。以後、数々のドラマや映画、舞台に出演。
■2007年、27歳のときに俳優活動を休業。世界中を旅しながら多様な文化に触れながらインスパイアを受け、映画やイベント製作の仕事を開始。
■2012年、アメリカ縦断を描いた長編映画『DON’T STOP』」で映画監督デビュー。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭にてSKIPシティアワードとSKIPシティDシネマプロジェクトをW受賞。
■また『ULTRA JAPAN』のクリエイティブディレクターや『STAR ISLAND』の総合プロデューサーを歴任。500機のドローンを使用した夜空のスペクタルショー『CONTACT』ではJACEイベントアワードにて最優秀賞の経済産業大臣賞を受賞。
■昨年は東京パラリンピック閉会式のショーディレクター(総合演出)を担当。2025年の「大阪・関西万博」では催事企画プロデューサーに就任。職業という枠にとらわれない、クリエイティブでマルチな活躍をみせている
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