次のパンデミックに備えるためにも、包括的に「新型コロナ検証」を行うべき
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2022年5月19日 17時40分
アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員の相良祥之が5月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。新型コロナウイルス対策を検証する有識者会議について解説した。
新型コロナ検証会議
政府の新型コロナウイルス対策を検証する有識者会議が5月17日、経済団体や地方自治体の代表からヒアリングを行った。飲食店の営業時間短縮などを中心とした行動制限への異論が相次いだ他、水際対策の緩和を求める意見も出た。
2020年に立ち上げられた「コロナ民間臨調」 ~第1波が終わった時期
飯田)政府は水際対策について、6月上旬を目処に団体パックツアーの実証事業を開始する方向で調整に入ったということです。アジア・パシフィック・イニシアティブは、かなり早い段階から新型コロナウイルスの対応について、検証をまとめていましたよね?
相良)私どもは、2020年7月の第1波が終わった辺りの時期に、「コロナ民間臨調」を立ち上げました。民間独立の立場で、政府のコロナ対応を検証しようという形で始めさせていただきました。当時の安倍首相や菅官房長官など、政府の方々に直接お話を聞き、2020年10月に日本記者クラブで記者会見を行って、報告書を出させていただきました。
飯田)2020年に。
相良)当時の専門家会議の方は、政治と科学、政府と科学のあり方について報告していました。私どもも、政府はそれを受け止めて検証すべきではないかと提言していました。今回、それを検証していただけることは、いい動きなのではないかと思います。
パンデミックや健康危機に備えるためにも検証を包括的に行うべき
飯田)あれから2年ですよね。そのあとも第6波まであったのに、検証もせず同じことを繰り返しているようにも思うのですが、その辺りはいかがでしょうか?
相良)新型コロナウイルスによって、これまで3万人以上の方々が亡くなられているということで、これは「国家的危機」と言うべき事態だと思います。この数字は東日本大震災のあと、関連死という形で亡くなられた方々の人数よりも多いのです。その間に安倍政権、菅政権、岸田政権と、日本の政権が3代にわたって対応しています。この大きな危機をどのように検証して、次のパンデミックや健康危機に備えるのかという意味では、たいへん重要であり、包括的に行うべきだと思います。
検証するポイントは多岐にわたる ~包括的にやるべき
飯田)APIの検証に関しては、当時の安倍総理や菅官房長官など、官邸の最高意思決定をする人たちを呼んで話を聞くことがありました。今回の会議では、そのような政治的な部分での意思決定の掘り下げはあるのでしょうか?
相良)いま外に出てきている情報ですと、経済関係の団体や保健所長会、全国知事会などの話をまずは聞いた段階だと思います。当然、彼らも最前線で動いていたので、そのような人たちの話を聞くことは重要です。他方で、コロナ対応は感染制御と、緊急事態宣言などでの社会経済活動の制限、2つのバランスを取りながらやってきました。
飯田)そうですね。
相良)真に重要なのは、感染制御と社会経済活動の維持について、どこに重心を置くのか。政府として意思決定をし、方向性を決め、戦略を立てて対策を進めることが必要でした。我々は安倍政権の最後の方で、コロナ危機にどのように対峙していったのかということを検証しました。官邸のなかでも、難しい危機にどう対峙していくのかということが考えられていました。
飯田)官邸のなかでも。
相良)そのときから医療の問題や、現在にもつながる保健所の問題などがありました。本当に論点は多岐にわたります。さらに、私どもが検証したあとも、オリパラやGo To キャンペーン、ワクチン接種の話などもありました。検証するポイントは広く、それだけ包括的にやるべきものだと思います。
次の有事に耐えるためにもきちんとした検証が必要
飯田)社会経済活動の制限と、私権制限をどう扱うかというところで、意思決定をどのようなプロセスで民主的にやるのか。全体のどこに柱を立てて決めるのかが見えないまま、2年間が過ぎてしまった気がします。次の有事に耐えられるのかということを考えると、きちんと検証しておかなければ、また同じことを繰り返しますよね。
相良)そうですね。危機が起きたときは、「何が問題なのか」という情勢分析から入るのですが、日本の場合、感染者数などの把握についても統一されたデータベースがなかった。いまでも感染者数の把握は、都道府県や自治体が集約しなければならず、そこが引き続き脆弱です。分析して打つ手を機動的に立てていくことが重要なのですが、その部分で、次はもっといい備えをしなければいけない。そのために検証するべきなのだと思います。
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