在宅での「看取る医療」の大切さ 医療法人「優和会」理事長 松永平太
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月20日 11時20分
黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「黒木瞳のあさナビ」(3月13日放送)に医療法人「優和会」理事長の松永平太が出演。長寿時代の地域医療について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「黒木瞳のあさナビ」。3月11日(月)~3月15日(金)のゲストは医療法人「優和会」理事長の松永平太。3日目は、穏やかな死への医療について—
黒木)松永先生の『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』という本を読ませていただきましたが、世界一幸せな国はフィンランドなのですね。幸福度と言うのですか?
松永)そうですね。
黒木)日本は何と50位前後です。
松永)日本は世界一長寿の国であり、しかも平和で、世界が憧れる国なのです。にもかかわらず日本人は一生懸命、足りないものを探しては不平不満を言う国民になっている。つまり、幸せを感じられない国民になっているのです。幸せとは何かと言うと、自分の身の回りに落ちていて、それを拾い上げ、かみしめることです。その部分ができていないのだと思います。自分の幸せに気付いていないのですよね。
黒木)北欧は幸福度の高い国が多いのですが、勉強に行かれたのですか?
松永)そうですね。寝たきり老人がいない国です。死ぬ過程においては、1週間ぐらい寝たきり状態になるのですが、そこからスッと逝ってしまう。おそらく日本の場合は延命処置が上手いのでしょうね。2~3年ほど長生きできる国なのです。日本にとって医療は、死と戦うものだった。
黒木)日本の場合。
松永)その結果、世界一の長寿国になったのですが、そのまた向こうにある死というものが受け入れられにくい国になってしまった。さすがに長寿世界第一位になると、医療の光と影、影の部分に気付くようになりました。最近では、例えば緩和医療ですね。私が初めて看取った患者さんは70歳ぐらいのおじいちゃんでした。呼吸が止まったことを上級医に伝えたら、その上級医が走るので、私もそのあとを追いかけて人工呼吸器につなぎ、いけるところまでいきました。死が敵なのです。
黒木)なるほど。
松永)いまも私は看取っていますけれど、ほとんどが老衰です。自然の流れ、老いて枯れて、木の葉のように散っていく。死に向かって無理な痛みを取る、家族と合わせるなど、穏やかな死への医療が復活しているのかなと思っています。
黒木)そういうお医者さんは多いのですか?
松永)病院は命を助けるところであり、在宅はどちらかと言うと死へ向かう、看取る医療ですので、文化が少し違うのです。
黒木)幸福度の高い国の医療を実践されているわけですよね。
松永)自分なりの結論を持っていますが、単に「昼間と夜の部屋を分けよう」という考え方です。つまり昼間はベッドに行かず、居間のソファで寝てもらう。たったそれだけです。例えば新幹線を使ってどこかの温泉に行き、宿に着くと女将がよく「さぞかしお疲れになったでしょう」と言います。「新幹線でずっと寝ていたよ」と思っても、その夜はぐっすり眠れるのですよ。なぜならば、座って寝ていると姿勢が崩れるので、元に戻そうとするため、やはり体は寝ていないのです。寝ているようで寝ていない。だから弱らない。ところが(ベッドで)寝ると、体も頭も寝てしまうので、どんどん弱くなります。だから「昼間はベッドに行ったらダメですよ」と言っています。
黒木)ということは、やはり自宅がいいのですね。
松永)自宅でゴソゴソと。でも見ていると、皆さんゴロゴロなのですよ。
黒木)しかし、それは家族の協力がないと大変ですよね。
松永)いま独居の高齢者がどんどん増えていますが、笑顔で生きている人もいます。家族がいなくても、1人でも自分が望むところで生きていけるような社会をつくる必要があると思っています。
松永平太(まつなが・へいた)/医療法人「優和会」理事長
■1992年、東京医科歯科大学を卒業後、民間病院へ入職。地域医療、看護ケアの大切さ、命を支えるケアを学ぶ。
■父親が倒れたことにより、1997年に父の診療所「松永医院」を継承。
■2000年、介護保健制度施行に合わせ「有限会社ハイピース」にて、訪問看護のための介護ステーション「そよかぜ」創設。2001年、医療法人社団「優和会」創設。
■以降、デイサービスセンター「あそぼ」を設立。社会福祉法人「おかげさま」創設。老人保健施設「夢くらぶ」、「夢ほーむ」、認知症対応型デイサービス「おかげさま」創設。
■2023年、看護小規模多機能「にこにこ」創設。
■2024年には、地域包括支援センターを創設予定。
■医療・介護・福祉を通じて社会貢献することを使命とし、「“いのち”を助け、“いのち”を元気にし、“いのち”を輝かせる」ことを経営理念として掲げる。いまの命を助けるのは医療者として当たり前であると考え、「患者の未来の笑顔を守ること」を使命とし、多職種協働を図っている。
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