モスクワテロ事件 「ISホラサン州」とウクライナはどんな関係なのか 国際政治アナリストが解説
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年3月25日 17時40分
22日、銃乱射があったモスクワ郊外のコンサートホール近くで警戒に当たる治安当局者(ロイター=共同)
国際政治アナリストの菅原出氏が3月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。モスクワ郊外のコンサートホールで発生したテロ事件について語った。
モスクワテロ事件、ロシア当局が137人死亡と発表
ロシアの首都モスクワの郊外にあるコンサートホールで3月22日夜、複数の人物が会場を襲撃するテロ事件が発生した。ロシア連邦捜査委員会は24日、137人が死亡したと発表。今回の事件に関しては過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を発表している。
いろいろなところでロシアと戦っているIS
飯田)ISが犯行声明を出していますが、本当にISによるテロなのでしょうか?
菅原)ISだと思います。3月11日ごろからイスラム教の国々はラマダンに入っており、イスラム教徒の宗教心が高まる時期です。アルカイダもISも「この機会にキリスト教徒やユダヤ教徒を襲え」とテロを呼びかけていたので、「ここで来たのか」という感じでした。
飯田)いままでは西側諸国が対象となるイメージでしたが、ロシアも目標の1つだったのでしょうか?
菅原)ISをはじめとした過激派のなかでは、ロシアは敵対国の上位に入っています。特に2015年以降、ロシアはシリアに介入してISとずっと戦っています。また、あまり日本では報じられませんが、西アフリカのマリなどではイスラム過激派とロシアの民間軍事会社が激しく戦っている状況もあります。
飯田)いろいろなところで既にぶつかっているのですね。
IS系勢力「ISホラサン州」が犯行声明
飯田)犯行声明を出したのは、イラン東部やアフガンを拠点とするIS系勢力「ISホラサン州」です。どういった集団なのですか?
菅原)アフガニスタン人やパキスタン人が幹部に多く、中央アジアを自分たちのテリトリーとして活動しています。ロシアではいじめられているコーカサス、チェチェンや、中央アジアのタジクやウズベキスタンの人々も戦闘員に入っていますので、基本的には「ロシア憎し」という人たちが多いですね。
飯田)そこにも動機があるわけですね。
菅原)ウクライナ戦争が起きてから、ロシア国内にいる若いロシア人の人手が足りなくなっており、中央アジアの方からかなり出稼ぎに入っているところもあります。
飯田)ネットワークがつくりやすくなっているのでしょうか?
菅原)その部分はあると思います。
「ISホラサン州」とウクライナに関係はない ~ウクライナ義勇兵からIS系組織に加わることはある
経済アナリスト ジョセフ・クラフト)プーチン大統領はウクライナ側の関与を示唆しています。今回のテロ事件を、(ロシアが)ウクライナを攻撃するための口実にしたいのではないかと疑っているのですが、このIS組織とウクライナは何か関係があるのでしょうか?
菅原)組織同士では特に関係はありません。ただ、「ロシア憎し」でウクライナの義勇兵として戦っている人のなかには、チェチェン人やタジク人もいます。そういう人たちはIS系組織と関係がなかったとしても、1人や2人であってもウクライナ義勇兵のなかからIS系に加わる人はいるかも知れません。その場合、ロシアがそれを大きく取り上げて「ウクライナが悪い」というプロパガンダにつなげる可能性はあると思います。
事前に何らかの情報を掴んでいたアメリカ
飯田)アメリカが事前に警告していたという情報もありますが、いかがですか?
菅原)3月7日にロシアのアメリカ大使館が、アメリカ人向けに警戒情報を出しており、ロシアにもその情報を伝えていたようです。しかし、ロシアは7日にモスクワのシナゴーグ(会堂)を狙ったIS系のテロ計画を潰しているので、そのテロのことを言った可能性もあります。今回のテロを正確に予測していたとは限りませんので、この辺りのつながりはわかりませんが、アメリカは何らかの情報を掴んでいたのだと思います。
今回のテロ事件を使って国内の取り締まりを強化し、ウクライナ侵攻を正当化しようとするプーチン大統領
飯田)思い出されるのは、2002年のモスクワ劇場占拠事件です。その後、チェチェン紛争がありました。あのような形でロシア側がこの事件を使うこともあるのでしょうか?
菅原)使ってくると思います。今後、ロシア国内での取り締まりがかなり強化されると思うので、中央アジアから来ている出稼ぎ労働者も、テロに関わっていなくても疑われて厳しく弾圧される可能性があります。そういう扱いを受けた人のなかから、「ロシア憎し」でテロリストになる人が生まれるかも知れない。そういう状況をロシア自身がつくってしまう場合もあります。
飯田)タイミング的には選挙で勝ったばかりのプーチン大統領ですが、今後はやはり強硬に動くと思いますか?
菅原)ある意味、この問題を追い風にして「より強い指導者が必要だ」と国内の締め付けを強化し、ウクライナ戦争を正当化することも考えられます。
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