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入社式のイベント化は新入社員の早期退職抑止? 企業の狙い【坂口孝則連載】『オリコンエンタメビズ』

ORICON NEWS / 2024年4月9日 7時0分

入社式の“イベント”効果は?

 日々話題を集めるエンタメニュースも、経済目線で知ればもっと面白くなる。そこで『ORICON NEWS』は、エンタメをこよなく愛する経営コンサルタント・坂口孝則氏に、エンタメにまつわるニュースを経済視点で解説してもらう企画『オリコンエンタメビズ』を連載中。今回は、イベント化が進む入社式における企業の狙いについて解説してもらった。

【写真】テレ朝入社式に石原さとみ登場…フレッシュな新入社員と記念撮影

 ソニーグループでは今年度の入社式で4人組バンド緑黄色社会が演奏し話題になりました。またテレビ朝日の入社式でも石原さとみさんが登場しました。その他、LIXILでは内田篤人さんが登場し話題になりました。各社ともに、入社式を、対面式でイベントちっくな催しに戻しているようです。2023年は5月からやっと新型コロナが5類に分類されたので、入社式には間に合いませんでした。その反動ともいえます。2025年には、このまま日本経済が復活し、実質賃金上昇などで明るい雰囲気が漂えば、「イベント」「芸能人」といった派手な入社式がもっとさかんになるでしょう。



 ところで、私は23年ほど前に、企業の宣伝担当者と交わした会話が忘れられません。当時はITバブル崩壊直後。私は一介の会社員でした。

 企業の宣伝広告にはダイレクト広告とイメージ広告があります。前者は商品を示して、文字通りそのままダイレクトに注文を請けるもの。そして後者は、美しいイメージや、何を言っているかよくわからないキャッチフレーズを掲げ、雰囲気を醸し出すものです(たとえば工事現場で使用するショベルカーのCMで「深く、もっと深く、ビジネスとあなたの奥へ」というフレーズを流すケースを考えてみましょう。CMを見て、そのままショベルカーを注文する人はいないでしょう)。

 すると、某社の宣伝担当者は「イメージ広告には相当な意味があるよ。だって、ウチに就職した新入社員の親御さんが、『CMを流しているような会社に就職して良かったね』と安心してくれるじゃん」と豪語しました。

 勘違いしてほしくないのですが、この宣伝担当者は、もちろんですが冗談としていっていました。私も「代理店に、そのような費用を出せる余裕のある企業はいいですね」と笑って返しました。

 そして、そこから22年が経った2023年。同じ話を、違う企業の宣伝広告に話して見ました。「イメージ広告って、内定を出した学生を逃さないために重要ですよね」と。すると、その担当者は「そうなんです。イメージ広告で親御さんの力を借りてでも内定を断らせない必要があります」と答えてくれました。マジなのです。人手不足の時代には、イメージ広告はマーケティングの意味を超えて、人材獲得競争の意味をもっていたのです。

 個人的な話です。2024年の3月から4月にかけて、いつものようにさまざまな企業をまわりました。本業のコンサルティングのためです。そのとき、多くの企業人が「そろそろ内定式だ。内定を出して、そして入社が決定した対象者ですら、ちゃんと入社式に来てくれるかが心配事項」と共通して教えてくれました。これは人手不足が申告な証左です。さらに、内定や入社が決定してなお、企業が人材をつなぎとめる必要がある傾向を示します。

 そこで、冒頭のトレンドに戻ります。このところ親御さんが入社式に来る例も多いようです。入社式がイベントちっくになったり、芸能人が登場するのは、きわめて経営/経済的・ビジネス的だったりするとわかります。つまり、番宣のために来ている芸能人もいるでしょうが、これは話題になり、親御さんにそれ自体を周知する点に意義があるのです。

 現在では親子関係が友達関係に近くなっているといわれます。入社式の数年後、会社を辞めようとする若者が親御さんに友達感覚で相談する可能性が高い。いや、多くの場合は相談する。そのときに「あれだけ素晴らしい入社式の会社じゃない」と言ってくれるかどうか。それは退職率の減少にもつながり、人材確保にもつながる。

 つまり、入社式は従業員の繋ぎ止め策も意味する――まさに「入社式2.0」へ変容しようとしています。

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