余命5年宣告、娘たちの会話は「パパが死んじゃったら困るな」 病気について話すことをもっと当たり前に…自叙伝に込めた思い
ORICON NEWS / 2024年4月24日 6時0分
若くして脳梗塞と糖尿病、腎不全を発症。片目の視力も失い、医師から余命5年の宣告を受けたラッパー・ダースレイダーが人生をつづった書籍『イル・コミュニケーション ─余命5年のラッパーが病気を哲学する─』(ライフサイエンス出版)を刊行。激動の人生を語り「病気とは、生きるとは何か?」を問う内容だ。「自分自身について、人生について、社会について、世界について。僕は病気をしていなかったらこんなに考えることはなかっただろう」と語る著者が、同書を刊行するきかっけについてつづった内容を、一部抜粋して紹介する。
【写真】余命5年と宣告されたラッパー・ダースレイダーのアーティスト写真
■「何も手を打たなければ5年で死にますよ」医師からの宣告
「パパが死んじゃったら困るな。もうちょいがんばって!」。これは娘たちとの会話だ。ドキリとする方もいるだろうが、我が家では日常的な風景だ。僕は脳梗塞、代謝性アシドーシスで2度入院し、左目を失明し、糖尿病と腎不全を抱えながら生きている。
40歳の時、検査結果が悪化し、医師からは脅しの意味も込めて「何も手を打たなければ5年で死にますよ」と言われたが、6年目の今もどっこい生きている。そんな僕は家族と日常会話で病気について話すようにしている。
「低空飛行ですが、なんとか墜落しないで操縦しています」。知人に体調を聞かれた時、僕はこう答えることが多い。「トップガン」の如くふわ〜っと上空に飛び上がり、翔けていくような感覚は久しく味わっていないが、それでもプスン、プスンと言っているプロペラで山や谷を避けながらなんとか自分を操縦している。
最近はコツを覚えたので安定してきたが、調子に乗るとすぐに姿勢が傾き、ぶつかりそうになる。整備不良は日常茶飯事、エンジンの故障も抱えながら、それでも飛んでいる。そんな飛行中には、色々と考え事をするし、見える景色も様々だ。
若い頃はそれこそジェット機に飛び乗ってかっ飛ばしていたが、同時に多くのものを見逃していた。今はかなりゆっくり、ふらつきながらも周りを見渡すことができている。僕は病気をしてからのほうがより広くものが見えるようになった(片目を失明しているので皮肉な話ではある)し、物事を深く考えるようになった。この本では僕が見えるようになった、考えるようになった物事を紹介したい。
病気をしてから、過去の自分の振る舞いや考えの意味も少し分かるようになったと思う。僕は両親を病気で亡くしているが、その体験がどういう意味を持っていたのか? 僕自身もタイミングが悪ければ死んでいた可能性があったが、病気とは、死とは何なのか? この本はそうした問いに対する今の考え方を書いている。僕は今、ラッパーを名乗っているが、HIPHOPに出会い、大学を中退して音楽の世界に飛び込んだ。そこで身についた考え方が病気後の生き方に大きな影響を与えた。そんなHIPHOPを通して学んだ哲学も紹介したい。
タイトルの『イル・コミュニケーション』はBeastie Boys(ビースティボーイズ)のアルバムタイトルだ。
HIPHOPにおいてILL(病気)という言葉はカッコいい、ヤバいという意味で使われる。高校生の時、池袋のHMVに向かうエスカレーターでこのCDアルバムから発売された曲「Root Down」が店内から流れているのを聴いた時、全身にビリビリと衝撃が走った。僕はそのままレジに行き、「今かかっている曲をください!」と叫んだ。
自分の本のタイトルを見て改めてあの時の興奮が甦る。病気について話すことをもっと当たり前に、病気について考えることをもっと日常的に。そんな思いを込めたこの本で僕といっしょにヤバいコミュニケーション(会話)をぜひ楽しんでください。
■プロフィール
ダースレイダー/1977年、フランス・パリ生まれ。ロンドン育ち、東京大学中退。ミュージシャン、ラッパー。吉田正樹事務所所属。2010年に脳梗塞で倒れ、合併症で左目を失明。以後は眼帯がトレードマークに。バンド、ベーソンズのボーカル。オリジナル眼帯ブランドO.G.Kを手がけ、自身のYouTubeチャンネルから宮台真司、神保哲生、プチ鹿島、町山智浩らを迎えたトーク番組を配信している。著書『武器としてのヒップホップ』(幻冬舎)『MCバトル史から読み解く日本語ラップ入門』(KADOKAWA)など。2023年、映画「劇場版センキョナンデス」「シン・ちむどんどん」(プチ鹿島と共同監督)公開。
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