小さな車体に大口径砲を搭載!アメリカの新たな「軽戦車」計画で2社に試作発注
おたくま経済新聞 / 2018年12月20日 14時30分
BAEシステムズのMPF試作車(画像:BAE Systems)
2018年12月17日、アメリカ陸軍は開発を検討していた歩兵旅団戦闘団(Infantry Brigade Combat Team=IBCT)用の機動防護火力「Mobile Protected Firepower(MPF)」計画で、ジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)とBAEシステムズ・ランド&アーマメンツLPに、12両ずつの試作車両を発注し、性能評価試験をすることを発表しました。両社に与えられた予算は、それぞれ3億7600万ドル。この価格以下で12両の試作車両を作ることになります。
米軍再編計画によって誕生した新しい戦闘単位である旅団戦闘団(Brigade Combat Team=BCT)。あらゆる場所へ速やかに展開可能な機動部隊として編成された自己完結性の高い組織で、それ単体で独立して戦闘行動が可能なようになっています。このうち歩兵旅団戦闘団はハンヴィー(HMMWV)を使用した機動歩兵を中核とし、偵察等を行う騎兵大隊や、支援火力を担う砲兵大隊、工兵大隊などで構成されます。
現在この砲兵大隊で使用されている装備は、車両に牽引されて移動する105mmと155mm榴弾砲です。これらの支援火力にもっと機動性を持たせ、より素早い部隊展開ができるようにする……という構想が機動防護火力「Mobile Protected Firepower(MPF)」計画。具体的にはC-17などの輸送機で容易に空輸(場合によっては空挺投下も)でき、それでいて歩兵部隊に対して強力な火力支援ができるもの、とかなり贅沢な要求となっています。
MPF計画のロゴ(画像:U.S.Army)現在までに案として各メーカーがデモンストレーターとして試作した車両は、昔の中戦車程度の小型装軌(キャタピラ)車両に大口径砲を乗せた歩兵戦闘車。あくまで機動性を重視した歩兵の支援火力という位置付けのため、主力戦車並みの装甲は求められていません。このため、この計画は俗に新「軽戦車」計画とも呼ばれています。
アメリカ軍の主力戦車、M1エイブラムスのメーカーであるジェネラル・ダイナミクス・ランド・システムズ(GDLS)が提案しているのは、「グリフィンII」というデモンストレーター車両をベースにしたもの。主砲は次世代型戦車砲として開発された電気着火式120mmライフル砲、XM360を装備。M1エイブラムスのアップグレード用としても検討されており、従来より大幅に軽量化された戦車砲です。車両全体の重量は28トン程度とされています。
主砲を発射するジェネラル・ダイナミクスのMPFデモンストレーター「グリフィンII」(画像:General Dynamics)BAEシステムズ・ランド&アーマメンツLPが提案しているのは、1990年代に計画がキャンセルされた空挺戦車「装甲砲システム(Armored Gun System)」で一時制式化されたM8をベースに、現代版にアレンジしたもの。こちらの主砲はM8時代から採用している105mmライフル砲のM35で、低反動かつ自動装填装置を装備し、1分間に12発発射できるという速射性が大きな特長です。また、履帯は市街地などに対応したラバー製(金属製の芯材入り)のものを使用しています。
BAEシステムズが提案するMPF試作車(画像:BAE Systems)12両ずつ生産されたプロトタイプ(先行量産車)は、陸軍の施設で耐久性や操作性など、様々な運用試験が行われ、比較検討されることになります。アメリカ陸軍ではこのMPFを504両調達し、各歩兵旅団戦闘団に14両ずつ配備する予定。実戦配備は2025年を目標にしています。
Image:U.S.Army/General Dynamics/BAE Systems
(咲村珠樹)
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