意外と身近な「破傷風」 水害後の片付け前にはワクチンを

おたくま経済新聞 / 2019年9月2日 16時0分

 8月末に水害被害が大きかった九州。9月に入り、まだまだ今後も台風などによる災害も考えられます。水害が出やすい地区に住んでいる、あるいは実家などがある場合、被害後に片付けに行く人も多いと思います。その時に打っておきたい「破傷風」のワクチンについての啓発ツイートが話題になりました。

 「水に浸かった九州の実家に帰って片付けをする予定の人たちは破傷風の予防接種を受けておいた方がいいです。そんなに高くないです。海外旅行用のクリニックや大きな病院に問い合わせるとあると思います」と、ツイッターに投稿したのは、ネットユーザーのウサギさん。

 床上浸水などの被害が出ると、部屋の中が一面泥に覆われてしまうこともしばしばあります。災害後の片付けには、割れたものの破片などが潜んでいることが多く、予期せぬケガを負うこともあります。そのケガで怖いのが、泥などの土壌に潜んでいる「破傷風菌」による感染症。

 リプライでも、「東日本大震災のときにも破傷風発生してます」「鬼怒川氾濫の時も破傷風菌の感染被害、ちらほら聞いた」と、破傷風の感染被害についてのリプライが。

水に浸かった九州の実家に帰って片付けをする予定の人たちは破傷風の予防接種を受けておいた方がいいです。
そんなに高くないです。海外旅行用のクリニックや大きな病院に問い合わせるとあると思います。

— ウサギ (@nekotausagi) August 28, 2019

■ 破傷風って?

 破傷風は、破傷風菌が産生する毒素のひとつである神経毒素(破傷風毒素)により強直性痙攣を引き起こす感染症。この菌は、極めて頑丈なつくりになっている「芽胞」という状態で土壌に広く常在しており、傷口から侵入してきます。傷口に付いた破傷風菌の芽胞は、3~21日ほどの潜伏期間を経て、感染部位で発芽・増殖して破傷風毒素を産生します。

■ 破傷風の怖いところ

 初期のうちは、痙笑(口が開かず、表情筋がけいれんするため、苦笑いをしているように見える状態)、開口障害、嚥下困難など部分的な神経障害を引き起こしますが、数日で全身に毒素が回ると、首と背部をそらせて弓なり状にけいれんする後弓反張に移行、呼吸筋の神経にも回って呼吸困難を起こし、重篤な状態となると、呼吸筋の麻痺により窒息死することも。後弓反張が見られるようになると、48時間以内に予後不良となります。

 つまり、ワクチンを接種せず抗体を持っていない状態で感染すると、早めに処置をしないと死につながる怖い菌がその辺の土や泥の中にいるということ。

■ 予防にはまずワクチン。でも子どものころに受けたような?

 国立感染症研究所が出している、東日本大震災に関連した破傷風発生状況によると、2006~2011年に報告された666例から震災関連症例10例を除いた656例の性別は、男性380例、女性276例。年齢群別では70代以上350例(53.4%)で過半数を占め、次いで60代152例(23.2%)、50代84例(12.8%)、40代29例(4.4%)の順に多く、40歳以上の症例が93.8%(615例)を占めています。

 つまり、年齢が高くなるにつれて破傷風菌ワクチン自体を打っていなかった世代や、子ども時代に受けたワクチンの抗体価が低下して発症している人が多い、と考える事ができます。

 現在の乳児の予防接種スケジュールには、4種混合ワクチンや3種混合ワクチンの中に破傷風ワクチンが含まれており、スケジュール通りにワクチンを接種していけば一通りの致死性の感染症を防ぐ事が出来ます。

 しかし、なかなか抗体が付かない体質の人もいたり、一度抗体が付いても抗体価が落ちるのが人よりも早いという人もいます。このため、乳児期に受けたワクチンが大人になっても残っているという人も少ない場合も。

■ 今後に備えてワクチンを打っておくのはアリ?

 今後、水害の多い地区に住んでいたり、近親者が住んでいて片付けに入る、またはボランティアで災害復旧に行くという人は、破傷風ワクチンを予防的に接種しておくと安心です。子どものころのワクチンの抗体は意外とアテにならない場合もあります。

 これは筆者の話になりますが、小6の時に学校の田植え体験があった時、刈り取り時に鎌で指を切ってしまったことがあり、その場ですぐに大量の水で洗い流し、破傷風ワクチンの注射と抗菌剤を処方されたことがありました。幸い、傷は浅く処置も早かったので事なきを得ましたが、このように迅速な対応がその後の状態を左右する場合もありますので、もしワクチンを打っていない状態でケガの部分に泥などが付着した場合は、速やかに大量の水道水で洗い流し、診察を受けてください。

 ワクチンの接種については、今まさに災害復旧に入っているひとは勿論、被災地に入る可能性の高い人は一度医療機関に相談してみてください。病医院によって在庫の有無もあるので、まずはかかりつけ医などに電話してみるのがよいでしょう。場合によってはまず抗体価の検査を受けることもありますが、受けずにワクチンを接種しても問題はありません。抗体が増強されるだけの話となるので、安心してワクチンを打ってもらいましょう。

<引用・参考>
国立感染症研究所 IDWR 2012年第44号<速報>東日本大震災に関連した破傷風 (2006~2011年における全国および被災三県の発生状況)

国立感染症研究所 外傷後の破傷風予防のための破傷風トキソイドワクチンおよび抗破傷風ヒト免疫グロブリン投与と破傷風の治療

<記事化協力>
ウサギさん(@nekotausagi)

(梓川みいな/正看護師)

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