ビジネスシーンでの「方言」どう思う? 「標準語にすべき」「方言でも問題ない」意見真っ二つ! マナーコンサルタントの見解は
オトナンサー / 2024年4月25日 7時10分
4月に入り、新年度が始まりました。就職や転勤などで地方から移り住み、首都圏で働き始めた人も多くいると思います。ところで、皆さんは出身地の「方言」を、ビジネスシーンでもそのまま使っていますか。日本各地には、それぞれに特徴的な方言がありますが、ビジネスシーンでの使用については「標準語にした方がいいと思う」「使い分けが必要では?」「方言は個性だし、問題ないのでは」「営業職だとちょっと…」など、賛否含めてさまざまな意見があるようです。
ビジネスシーンにおける「方言の使用」の是非について、マナーの専門家はどのように考えるのでしょうか。ヒロコマナーグループ代表で、企業のマナーコンサルティングをはじめ、皇室のマナー解説やNHK大河ドラマ「龍馬伝」、NHKドラマ「岸辺露伴は動かない 富豪村」、同シリーズ最新作「密漁海岸」のマナー指導などでも活躍するマナーコンサルタント・西出ひろ子さんの見解です。
■あえて方言を使用する必要はないけれど…
まず、「方言」の定義を共有したいと思います。方言とは、共通語・標準語とは異なった形で、一地方だけで使われる語を指すと辞書で定義されています。マナー的観点から考えた場合、その地方だけで使われ、それを知らない人は意味を理解できない言葉であれば、ビジネスシーンでは使わない方がよいといえます。
例えば、私は九州の大分県出身です。大分県には「よだきい」という方言があり、「面倒だ」とか「疲れた」という意味です。その言葉を相手も知っていて、意味を理解してくれていれば会話が成り立ちますが、そうでないとスムーズなコミュニケーションに発展しません。そうした意味において、特にビジネスシーンでは、出身地が異なるさまざまな人とコミュニケーションを取るため、互いに理解しあえる共通語・標準語を使用すると、その場がスムーズに進んでいくでしょう。
一方で、「ビジネスシーンでは使わない方がよい」と一概に言い切ることができない側面もあると考えています。方言をきっかけに、良好なコミュニケーションへと発展する可能性もあるからです。
私自身、大分県から上京してきたときに、方言を方言だと思わずに「よだきい」と言ったことがありました。そのときに相手から「『よだきい』って何?」と聞かれ、説明するコミュニケーションから親しくなった経験があります。
ビジネスシーンにおいて、あえて方言を使用する必要はないと思いますが、とっさに方言を使ってしまったとき、また方言を使われたときには、互いに相手を思いやり、それをプラスに生かす前向きなコミュニケーションに発展させていくことも、思いやりやマナーを含めた“ビジネスパーソンとしての力量”につながる要素となるでしょう。
■気を付ける必要があるシーンは?
ただし、やはりビジネスシーンでの方言については、注意が必要なシーンも存在します。
先述したように、ビジネスシーンで“あえて方言を使う”必要はないでしょう。もし、対面での会話でとっさに使ってしまったら、その場で「『よだきい』とは、私の出身地、大分県地方の方言です。これは『面倒』を意味する言葉です」などとすぐに説明したり、言い換えたりすることができます。
気を付ける必要があるのは、メールや文書など、文字でコミュニケーションを取るシーンです。この場合、その方言がどういう意味なのか、相手はすぐに回答を得ることができません。また、文字でも残ってしまいます。
ビジネスシーンでは、誰もが知っている理解しやすい言葉で伝えることもマナーの一環です。ただし、同郷であったり、その地方で会話をして互いに理解し合えたりするのであれば、使用しても問題にはならないでしょう。皆さんもおっしゃっているように、「使い分け」をなさるとよいですね。
春は、地方から首都圏(他、標準語を話すエリア)に移り住み、新しい職場で働き始めたという人が多い時期かと思います。
マナーは、互いに思いやる気持ちで成り立ちます。方言のある人は、標準語で話すように意識をし、それに使い慣れていかれるとよいのではないでしょうか。一方で、方言を使われて意味が分からなかったら、それを伺い、「存じませんでした。◯◯は△△という意味なんですね。勉強になりました」と前向きな捉え方をして差し上げることもマナーです。マナーは、相手に恥をかかすことのない配慮でもありますから。
私も上京当時は、方言やイントネーションの違いから、話すことに対して恐怖心を抱いていた時期がありました。それを指摘されて落ち込んだこともありましたが、温かく受け入れていただきながら、怖さを払拭し、コミュニケーションを取り続けました。地方から首都圏に移り住んだ人の立場に立った思いやりのマナーによって、相手を勇気づけることや、人生を前向きにして差し上げることができるでしょう。
オトナンサー編集部
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