再会した幼馴染と現在の夫の間で...映画『パスト ライブス』、胸が張り裂けそうなエンディングの謎
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月5日 19時14分
<幼なじみの運命の人との再会に複雑な思いが交錯。韓国出身セリーヌ・ソン監督が、実体験に基づく作品『パスト ライブス/再会』の意味を語る>
ニューヨークの、とあるバー。カウンターに座った女性の両隣には、友人でも他人でもない男が2人。誰にとってもすごく特別な夜だ。
これは『パスト ライブス/再会』で衝撃の監督デビューを果たしたセリーヌ・ソンの実体験であり、24年の歳月を隔てて再会を果たした幼なじみの男女の深い「因縁」を描く映画の原点でもある。
エンディングは謎めいていて、主人公のノラ(グレタ・リー)と初恋の相手ヘソン(ユ・テオ)、そして現在の夫アーサー(ジョン・マガロ)の心の内が語られることはない。胸が張り裂けそうなシーンだけれど、誰もが最後に、自分の望んでいたものを手に入れる──監督のソンは本誌にそう語った。
作中のノラとヘソンは幼なじみで引かれ合っていたが、ノラは12歳で韓国を離れてカナダに移住した。監督のソンも幼い時に韓国からカナダに渡り、大人になってからニューヨークに移り住んだ。
そしてある晩、「私はバーにいて、韓国から訪ねてきて韓国語しか話せない幼なじみの男と、英語しか話せない今の夫の間に座っていた」。その瞬間、作品のインスピレーションが湧いたという。
映画の後半でノラとヘソン、アーサーの3人は同じバーに戻り、ああこれが「イニョン」というものかと納得する。イニョンは韓国語で「因縁」の意。そう、この2人は深い縁で結ばれていて、前世でも来世でも出会う運命なのだ。
謎めいたラストシーン
映画化の何年も前に、ニューヨークのバーで幼なじみと今の夫の言葉をせっせと通訳していたとき、ソンは気付いたという。
「私は言語と文化の壁を越えて行き来しているんだ、私自身の内面にある2つのパートを行き来しているんだと......。自分は同時に2つの異なる存在であり、相手によって別の自分になっている。けれど、どちらの存在も自分なの」と彼女は言った。
「すごく特別な感覚だった。なんだか、自分の過去と現在と未来をいっぺんに見ているみたいな感じで」
カウンターバーでの濃密なシーンの先には、謎めいたラストシーンが待っている。そこでは、ノラもヘソンもアーサーも「望んでいたものを手に入れる」らしい。
ヘソンは韓国の首都ソウルから、13時間もかけてニューヨークへ飛んできた。「12歳の少女としてしか覚えていない女性にもう一度会って、過去の扉を閉めるため」だった。
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