平安時代なぜみんな「奈良の長谷寺」「滋賀の石山寺」に旅したの?こればかりは「現代に生まれてよかった」と思わざるを得ない
OTONA SALONE / 2024年4月15日 20時1分
*TOP画像/まひろ(吉高由里子)、さわ(野村麻純)、乙丸(矢部太郎)、さわの従者(星耕介) 大河ドラマ「光る君へ」15回(4月14日放送)より(C)NHK
『光る君へ』ファンのみなさんが本作をより深く理解し、楽しめるように、40代50代働く女性の目線で毎話、作品の背景を深掘り解説していきます。今回は平安時代における「旅行」について見ていきましょう。
京都~奈良までの移動に約1週間かかっていた平安時代
日本における旅行の歴史は大和時代にまでさかのぼるといわれています。ただし、当時の旅行は政治にまつわる旅行で、現代人がイメージする旅行とは異なるものです。
プライベートな旅行は貴族に限られるものの、平安時代からはじまります。(庶民も旅行するようになるのは江戸時代以降です)
行先は寺院がほとんどで、参拝を目的としていました。具体的な旅先は奈良県の長谷寺や滋賀県の石山寺。
藤原兼家の妻・道綱母の人生最大の遠出は奈良県の初瀬(長谷寺参詣)といわれています。移動手段が牛車や船、徒歩に限られていた当時、国内で3本の指に入るほど裕福な女性も隣県に足をのばすのが精一杯といったところでしょう。というのも、京都と奈良を往復するのに約1週間の期間を要しました。
道綱母の旅(長谷寺参詣)の日程は以下になります。
1日目 午前6時頃、九条河原を出発。宇治院に正午頃に到着し、昼食。橋寺に宿泊
2日目 寺めくところに泊まる
3日目 椿市に宿泊
4日目 湯浴みをし、長谷寺で参拝する
5日目 もてなされながら帰路につく
6日目 同上
7日目 山城の国の久世の三宅に宿泊
8日目 夕方、京都に到着
出典:詳細は服藤早苗「「源氏物語」の時代を生きた女性たち」を参照
*24時間×8日=192時間=1万1520分
早朝に都を出発し、長谷寺に到着したのは4日目。帰路はもてなしを受けながらゆったりと都へ戻る様子が垣間見えます。
旅中の道綱母は自然にも関心を示しています。ただ、9月中の旅であったため、紅葉ははやく、かといって花は終わっていたようです。帰路ではもてなしを受けるなど、寄り道も楽しみます。
各地の物産が盛んになったり、宿場近くに市場が栄えたりするのは江戸時代以降。平安時代の人たちにとっての旅路での楽しみはもてなし(上流貴族に限る)や自然の景色でした。
石山寺には道綱母、藤原道長、紫式部などが訪れている
滋賀県に所在する石山寺も平安時代の貴族たちに馴染み深い場所の1つでした。
道綱母は石山寺にも京都から徒歩で参詣したといわれています。明け方に出発し、逢坂の関を越え、打出浜から船に乗ります。明け方に出発しても石山寺に到着するのは夕方頃。
石山寺では琵琶湖の景色を楽しめることもあり、貴族女性にとってこの寺への参詣は心躍るものでもありました。
また、紫式部は石山寺に7日間参籠し、『源氏物語』を執筆しました。石山寺から琵琶湖の湖面にうつる十五夜の名月を眺めたといわれています。須磨に流された貴公子が月を眺めながら都を懐かしく思う場面を構想し、「今宵は十五夜なりけり」と書き出しました。
中下級貴族(受領層)は家族で大移動することも珍しくなかった
平安時代は参拝を目的とした旅のみが行われていたわけではありません。
受領層の女たちは夫や父とともに赴任先に行くこともありました。紫式部は父・為時の赴任先の越前で1年ほど生活しています。また、紫式部の娘・賢子は夫とともに九州の大宰府に赴いています。
当時は現代のように道も舗装されていませんし、街路には灯りがないので、移動は相当大変なものだったはず。
受領は貴族ですから単身、もしくは家族だけで長距離にわたる移動をすることはありません。従者たちも一緒に移動しますから、当時において少なくない人たちが長期間にわたる旅を経験していると考えられます。
参考文献
・服藤早苗「「源氏物語」の時代を生きた女性たち」
・大本山石山寺 「大本山 石山寺 公式ホームページ 」
≪アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗さんの他の記事をチェック!≫
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
吉高由里子の“石山寺の旅”放送 紫式部が『源氏物語』を起筆したとの伝説が残る場所へ
マイナビニュース / 2024年5月3日 6時0分
-
【光る君へ 大河絵(光る君絵)】第15話 蜻蛉日記と源氏物語の“邂逅”の裏で…道綱“ゲスの極み”
スポニチアネックス / 2024年4月21日 17時3分
-
清少納言誕生の瞬間…ファーストサマーウイカの演技に「脳天に落雷が落ちたよう」の声「光る君へ」15話
cinemacafe.net / 2024年4月15日 10時45分
-
「光る君へ」まひろが道綱の母と対面!石山寺セット美術の裏側
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年4月15日 5時2分
-
『光る君へ』色鮮やかな美術セットで平安時代を表現 スタッフ陣が明かすこだわりと苦労
マイナビニュース / 2024年4月15日 5時0分
ランキング
-
1制服と体操服でやりがちなNG洗濯! 体操服を洗濯する時、ファスナーは閉める? 開ける?
オールアバウト / 2024年5月2日 21時15分
-
2トイレ掃除を頼むと涙目…新人バイトはオーナー親族のお嬢様。いきなり辞めたが、意外な展開に
女子SPA! / 2024年5月2日 8時47分
-
3映画「もののけ姫」の映えスポットで撮影した女性の投稿に大反響! 「言われなくても生きそう」「無敵感がすごい」
よろず~ニュース / 2024年5月2日 15時0分
-
4「おじさんドラマ」すっかり定着の底知れぬ魅力 ベテラン俳優が好演、世間の"おじさん観"も変化?
東洋経済オンライン / 2024年5月2日 13時20分
-
5「いきなり退職代行から連絡が…」「注意すると泣く」20代社員はなぜ“打たれ弱い”のか
日刊SPA! / 2024年5月2日 8時52分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください