「このままじゃ、娘から“毒親” 認定されそう」まひろが『源氏物語』の豪華版を制作する裏で、ダメ母ぶりが露呈?【NHK大河『光る君へ』#37】
OTONA SALONE / 2024年10月1日 11時30分
*TOP画像/まひろ(吉高由里子) 彰子(見上愛) 宮の宣旨(小林きな子)ら女房たち 大河ドラマ「光る君へ」 37話(9月29日放送)より(C)NHK
平安の女たち、平安の男たちを描いた、大河ドラマ『光る君へ』の第37話が9月29日に放送されました。40代50代働く女性の目線で毎話、作品の内容や時代背景を深掘り解説していきます。
一条天皇の土産にするため『源氏物語』の豪華版を彰子と女房たちが制作
本放送には、彰子(見上愛)の『源氏物語』を美しい冊子にして帝に差し上げたいという希望を実現するため、まひろ(吉高由里子)を含む女房たちが『源氏物語』の豪華版の制作に励む姿が描かれていました。
彰子についても制作に参加しており、「光る君が見つけた 若草のような娘の巻は若草色がよいであろうか? 藤壺の宮の藤色であろうか」と、よりよい仕上がりになるように考えを巡らせています。まひろは悩む彰子に対して「中宮様のお好みで どちらでも」と答えており、若き姫の好みや選択を尊重している様子。
女房たちが美しい紙を手にとりながら『源氏物語』の豪華版を和気あいあいと製作する場面は華やかで、にぎやかでした。
豪華版制作の過程では女性ばかりが集まる場ならではの雰囲気になることも。
宮の宣旨(小林きな子)は「このような美しい紙に書かれた文を もらいたいものでございます」と、思わず心の声が出ていましたが、彼女のロマンチックな思いに共感する女性視聴者は多いと思います。
穏やかな雰囲気の中で制作された『源氏物語』の豪華版は、彰子が内裏に戻る時期までに仕上がり、一条天皇に予定通り献上されました。
それぞれの巻ごとに異なる色の紙が使われ、金色の表紙が付いた『源氏物語』はとても美しかったですね。
一条天皇は喜び、感心し、「彰子 うれしく思うぞ」と自身の思いをストレートに彰子に伝えていました。この豪華版をきっかけに藤壺はにぎわいを見せるようになり、彰子の表情は明るく、晴れやかになってきました。
【史実解説】中宮・彰子も『源氏物語』の豪華版の制作に自ら携わっていた!?
紫式部の作家としてのプロ意識の高さがうかがえる一面も
史実においても、彰子は皇子出産後、内裏に帰る際に『源氏物語』の豪華版を制作し、一条天皇と一緒に楽しもうと考えていたといわれています。
彰子のこの提案を実現するために道長と紫式部は協力します。道長は上質な紙や墨を紫式部に提供するなど物質面でサポートし、紫式部は清書の綴じ集めなどにも携わります。また、彰子は紫式部と一緒に製本に携わったと伝わっています。
当時、製本はすべて手作業で行っていたため、手間も時間もかかりました。書かれた清書を一枚一枚折り重ね、美しく染められた表紙をつけていきます。
『源氏物語』の豪華版の制作期間中、道長と紫式部の間でトラブルが発生しました。このトラブルの引き金は道長です。道長は紫式部の自室から物語の草稿を持ち去り、紫式部を困惑させました。紫式部は未完成の原稿を読まれたことを快く思わなかったのです。“きちんと書き上げてから、みんなに読んでもらいたい”という紫式部の作家魂を感じるエピソードですね。それにしても、道長のこの行動はちょっと浅はかかも。
彰子のまわりがにぎわいはじめる一方、まひろの実家では…
まひろは内裏に戻る前に里に一度下がりたいと彰子に頼みます。自身も子を産み、母親になった彰子は、まひろの心中を察し、里帰りを快く認めました。
まひろは実家に久しぶりに帰り、自分の家がみすぼらしく感じると心の中でつぶやいていましたが、為時(岸谷五朗)や賢子(梨里花)にとっては馴染みの光景であり、彼らはつつましく暮らしています。まひろの宮仕えのおかげで一家がなんとかもっている状態といえます。まひろの土産である真っ白のお米に喜ぶいと(信川清順)、乙丸(矢部太郎)、福丸(勢登健雄)が印象的でした。
まひろは日々の緊張感から久しぶりに解放されたからなのか、宮中での自慢話が食事中に止まらなくなります。
大人たちは自分にはほど遠い世界の話だと思いつつも、あたたかく耳を傾けていますが、娘の賢子だけは母との再会や白い米にも喜ぶこともなく、食事中も表情を曇らせたままです。
賢子は幼い頃から執筆にばかり注力するまひろの姿を見ており、現在は母親がいない家で暮らしています。
久しぶりに帰ってきた母親からお菓子や華やかな宴の自慢話ばかりを聞かされては、賢子のような反応になるのは当然といえるかもしれません。
本作には数々の親子関係が描かれており、まひろと賢子の関係性も見所の1つですが、母親としてのまひろはいまのところ正直イマイチ…。まひろは実家を経済的に支えているとはいえ、賢子については放置といっても過言ではないかもしれません。娘が幼い頃から執筆ばかりで、為時やいとらが賢子の心をフォローしていました。本放送でも、為時が賢子とまひろの間に入り、場をまるくおさめようとするシーンがありましたね。
思い返すと、まひろについても少女時代は父・為時の思いや状況を理解できず、父への不満をつのらせていました。特に、母・ちやは(国仲涼子)の死の真相を葬ったことをうらんでいましたが、年齢を重ねると父を理解できるようになりました。現在、まひろは老いた父や賢子のためにも中宮・彰子を優先しなければならない状況ですが、賢子も母親であるまひろが抱える事情を理解できる日が訪れるのだろうか。
史実では、賢子はステキな恋をし、すばらしい和歌を詠み、母親と同じくらい充実した人生を歩んだといわれています。彼女は本作ではどのように描かれるのでしょうか。
▶つづきの【後編】では、平安時代のにはすでに「人工妊娠中絶」が行われていた!?…といういささかショッキングな当時の様子をお届けします。__▶▶▶▶▶
≪アメリカ文学研究/ライター 西田梨紗さんの他の記事をチェック!≫
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