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半屋外で開放的!着替えず公園感覚で立ち寄れるコスパ◎のジムが人気

パラサポWEB / 2023年4月12日 7時0分

コロナ禍によって一層深刻化した運動不足。テレワークの普及や外出の自粛などで明らかに運動量が減ったことにより、今後人々の健康に影響が出るだろうと警鐘を鳴らす専門家もいる。一方で、新型コロナウイルスが流行し始めた頃、スポーツジムではクラスターが起きやすいといった根拠のない噂によって、ジムを退会する人が増えたという風評被害も起きていた。そんな困難な状況を逆手に取り、新しく誕生したスポーツジムを紹介しよう。

壁のない牛舎構造でコロナ禍でも安心して運動を
住宅街に建つ、牛舎構造を採用した「ファームステーションジム」

今回ご紹介するのは千葉県八千代市にある「ファームステーションジム」というスポーツジム。運営する会社の母体は、成田ゆめ牧場(千葉県)を経営する秋葉牧場ホールディングスだ。1887年に搾乳専業牧場として創業した同社は、カルシウムが豊富な牛乳を通して、人々の健康に貢献してきた。その後、同じ健康という視点からスポーツジムの経営に乗り出した。

「コロナ禍の初期の頃、ジムの会員の方達から『体は動かしたいけれど閉鎖的な空間で運動をするのは怖い』というご意見をいただきました。そこで、どうにかできないかと考えて作ったのがファームステーションジムです」

と、話してくれたのは株式会社秋葉牧場の本社管理部で、スポーツジムなどの運営に携わる橋本大助氏だ。

秋葉牧場ホールディングスが運営する成田ゆめ牧場の牛舎。確かにファームステーションジムと構造がそっくりだ

「酪農の歴史を見ると、狂牛病や口蹄疫など、感染症との戦いでもあります。ですから酪農を主たる事業としている我々には、牛舎構造が感染症予防に有益だという知識や、感染症対策のノウハウがありました。それを活用して、会員様に安心して運動してもらう環境を提案できるんじゃないか? ということから新しいジムの開発を検討しはじめたんです」(橋本氏、以下同)

ボディービル発祥の地と言われる、アメリカ、カリフォルニア州にあるマッスルビーチジム。ビーチ沿いの一角にあり、完全な屋外型になっている

さらに、ジムで使用するマシーンをアメリカから輸入しているパートナー会社から、アメリカのフィットネス最新事情をキャッチしていた。

「アメリカでは24時間営業、あるいはアウトドア感覚のジム、公園感覚で気軽に利用できるジムがだいぶ前から浸透しているということでした。日本でもそうしたジムを始めるなら今なんじゃないか、という話になったんです」

こうして時代の流れと持っていた知識やノウハウがうまくマッチしたことで、2020年12月にファームステーションジムは誕生した。

牛舎構造だからこそ実現したリーズナブルな利用料
ファームステーションジムの内観。明るくて風通しがよく、マシーンも充実している

ファームステーションジムのある八千代市はもともと、成田ゆめ牧場の前身となる牧場があった土地で、今も本社は同市にある。建物は牛舎構造を参考に壁をなくした半屋外型。天井にとりつけられた送風機は空気を循環させ、部分的に半透明の素材を使った天井からは太陽光が射し込むので殺菌作用も期待できる。まさに酪農で培った感染症対策のノウハウを生かした作りになっている。

利用するには会員になる必要があるが、入会費は無料で、必要なのは入会手数料の550円と、ジムに出入りするためのICチップカード代2200円だけ。月会費も3980円(2023年3月現在)と、一般的なジムに比べてかなりリーズナブル。

「ファームステーションジムには、ロッカーもシャワーもありませんし、壁もエアコンもないので、建設のための初期費用をかなり低く抑えることができました。そのため、会員の皆様に安くご提供できています」

「自分のまちがジムになる」という新たな価値の提案
ICチップカードを使ってセキュリティを管理している出入り口

半屋外と言っても、周囲は植栽で囲まれており、入口のドアは出入りの際にICチップカードをかざさなければ開かない。受付がなく無人ではあるが、系列ジムのスタッフがモニターで内部をチェックしているので、防犯面も安心だ。また、利用する際は専用のウェアや靴に着替える必要はなく、好きなスタイルで運動をすることができるという手軽さも魅力のひとつとなっている。

「利用者の方はさまざまで、出勤前の早い時間に運動して家でシャワーをあびてから出社されるとか、在宅勤務をしている人がお昼休みにちょっと立ち寄るとか、ライフスタイルにあわせて利用してもらっているようです。一般的なジムですと、ウェアや靴を持参して着替え、運動をして、終わったらシャワーをあびて服を着る、という手数がかかりますが、それらをすべて省けるところに魅力を感じていただいているんじゃないでしょうか」

コロナ禍では運動不足解消のため、自分のホームタウンを走る地元ランナーが増えたそうだ。そうしたランナーが、ランニングコースの途中にあるジムに手ぶらで立ち寄り運動をすることもできる。つまりファームステーションジムは、「自分のまちがジムになる」という新たな価値観を提供しているのだ。

住民の健康問題と空き家問題を一気に解消!?

ファームステーションジムのある場所は、駅前や歓楽街などではなく住宅街なのだが、あえてこういう場所にオープンなジムができることは、まちづくりの一環にも繋がるのではないかと、橋本氏は言う。

「もともと八千代市は牧場の多い場所でした。現在もその名残りで、乳飲料系の工場などがあります。今は移転してしまいましたが、弊社も八千代市に牧場を持っていました。今の八千代市緑が丘は、開発が進んでいる新しい町なので、若い人たちや、新しく転入してきた人たちの中には、かつてこの一帯に牧場があったことを知らない人も多くいます。そうした人たちが、自分たちの住む町に興味を持ち、その歴史を知るきっかけになってくれたらいいなと思っています」

実際ジムを建設している最中から、特徴的な三角屋根を見て「何ができるの?」「牛が来るの?」と期待と好奇心に満ちた近隣住民の声が橋本氏の耳に届いていたそうだ。

「今までにないオープンな形態のジムで人が体を動かしている姿を見ることで、それまで健康や運動に関心がなかった人にも親近感を持ってもらい、ちょっと運動してみようかなという動機作りにも繋がったようです」

また、牛舎構造のジムは初期費用がかなり低いため、全国の自治体でも役立ててもらえるのではないかと橋本さんは今後の展望を語ってくれた。

「たとえば、過疎化や住民の高齢化が進む自治体などが空き地などを活用してファームステーションジムを作れば、空き家問題と住民の健康寿命の問題を同時に解決することにもなるかもしれません。運動は継続が大切で、日々のちょっとした積み重ねが健康寿命を長くすることに繋がるので、ファームステーションジムを、運動の習慣化の選択肢の中の一つとして考えていただければいいなと思います」

コロナ以前、スポーツジムを利用するのは、健康意識の高い人、金銭的に余裕のある人といったイメージがあった。しかしコロナ禍によって運動不足を危惧する人が増えたこともあり、ファストジム、コンビニジムといった手軽なスポーツジムが増えてきている。さらにファームステーションジムのように街の風景の中にジムが溶け込んだら、もっともっとスポーツは身近になり私たちの健康寿命も伸びるのではないだろうか。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)

photo by 秋葉牧場ホールディングス,Shutterstock

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