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子供が夢中のMinecraftに教育的メリットはあるのか?

パラサポWEB / 2023年6月19日 7時15分

世界で一番売れている「デジタル版のブロック遊び」ゲームとして、子どもから大人まで幅広い年齢の人たちに親しまれているMinecraft(以下、マインクラフト)。実は教育の教材としても活用されており、毎年SDGsに関するテーマで作品作りを競い合う「Minecraftカップ」が行われている。2022年の第4回大会も大盛況で興味深い作品の数々がエントリーされ、各部門の最優秀賞が決定した。今回、受賞作品と共に、子どもたちが招待されたパラスポーツ専用体育館、日本財団パラアリーナ見学会の模様も紹介する。

教育現場で世界的に注目を浴びるマインクラフト

マインクラフトには通常版の他に、教育現場で教材として使えるようにカスタマイズされたものが存在する。教育版では、ゲーム内でプログラミングができたり、化学記号を学べるブロックなど、楽しみながら教育の価値を高める仕様となっているのが特長だ。先生向けの「Classroom Mode」を使えば、プレイ中の生徒たちを見守ることもでき、マインクラフトを通してクラスが一体となって学ぶことも可能。海外では授業で使われているケースも多く、日本でも先進的に取り入れている学校もあるほか、サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、アート、マスマティクス、全てを体験できるということでSTEAM教育の現場でも活用されているそうだ。マインクラフトの教育的価値は、今やマイクロソフトが提供しているサービスの中で、ワードやエクセル、パワーポイントと並んでマインクラフトも一つのパッケージとして認知されているほど、世界中で注目が高まっている。

そこで、地域の格差や家庭の状況などを越えて、もっと幅広く、全ての子どもたちに「デジタルなものづくり」を体験してほしい、という大きな目的を具現化したのが「Minecraftカップ」だ。また、子どもたちそれぞれの個性や能力が発揮される機会を生みだし、すべての子どもたちにこれからの社会を生き抜く力を育むことができるような機会や環境が提供されることを目指している。大会は志を同じくする人々の共感を集め、「すべての子どもたちが未来への希望が持てるようにする」ために日本財団が大会の開催を支援しているほか、多くの企業・団体が大会に協力している。

Minecraftカップは、第4回大会から日本財団の助成を受けて開催している。マインクラフトがもつ想像力・協働性・問題解決能力・探求心・プログラミング的思考などの高い教育効果を、地方や困窮世帯の子どもたちなど充分に行き届いていない層にも届ける全国的な普及活動となっている

Minecraftカップは今までに4回開催され、年々参加者が増加している。2022年大会はエントリー数6,059人、計426作品の応募があり、ジュニア部門(満9歳以下)、ミドル部門(満12歳以下)、ヤング部門(満18歳以下)の三つの部門に分かれて高いレベルで競い合われた。早速、2022年の各部門で最優秀賞を受賞した作品を見てみよう。

2022年のテーマは「生き物と人と自然がつながる家・まち」
最優秀賞 ジュニア部門 雷さまの方舟 / CC
ジュニア部門で最優秀賞を受賞した、ccさん

以前、雷さまの画を描いたことがあり、母親に雷のエネルギーについていろいろと教わったというccさん(制作当時、小学2年生)。そこから着想を得て、生物多様性の在り方を学んだそう。ワールドでは、雷のエネルギーを循環させ、畑や水を作り出し、人々が生活できる方舟を創造した。方舟は人間が壊した土地を、元々いた生き物が住める場所へと戻すことができるという。方舟の中には遊園地もあり、雷ジェットコースターや氷のスライダー、蜘蛛の巣トランポリンといったアトラクションもユニークだ。

最優秀賞

ミドル部門 Symphony of Lives / チーム高砂小

ミドル部門で最優秀賞を受賞した、チーム高砂小

制作当時小学6年生7人のチームで制作したのは、バイオミミクリー(生物模倣技術)を使用し、陸と海の豊かさを守る家と街「Symphony of Lives」。完全オリジナルのアドオンで作成したミッションと、バイオミミクリーで森の生態系を表現した街並がポイント。「未来になっていくと、生き物がだんだんいなくなり、住処もなくなっていくと、最終的に自分にも害が及んでくる。そうならないためにどうすればいいか? 生き物と人が自然に暮らす多様性を作品で表現できたし、今後も必要ではないかと実感しました」と語ってくれた。

最優秀賞

ヤング部門 巨大樹がつなぐ生命 / metale

ヤング部門で最優秀賞を受賞した、metaleさん

作品テーマを人間と生き物の共生という世界観で落とし込んだ力作。共生できた世界を巨大樹のある村で表現する一方、共生に失敗した世界を廃墟の街として表現している。そんな相反する世界を橋一つで繋げているストーリー性にも注目だ。生物多様性の意味を調べることで、命が循環する生態系のピラミッドを守ることの重要性を知ったというmetaleさん(制作当時、中学1年生)は、「人間中心に物事を考えるのではなく、他の生き物の暮らしもちゃんと考えて作ってみました」と教えてくれた。

パラアリーナ見学を通して学んだ、「誰一人取り残さない」ための工夫

「生き物と人と自然がつながる家・まち」をテーマに作品制作を手掛けたということで、SDGsなど現代社会が目指すべき目標と向き合った子どもたち。今回の経験を未来に活かし、SDGsやダイバーシティ&インクルージョンをより身近に感じてもらうために、最優秀賞を受賞した子どもたちへの副賞として、パラスポーツ専用体育館「日本財団パラアリーナ」の見学ツアーが4月2日に実施された。

©日本財団パラスポーツサポートセンター

2018年に竣工した日本財団パラアリーナは、パラアスリートが使いやすいようユニバーサルデザインを取り入れ設計されている。車いすの行き来がしやすいフルフラットのつくりで、アリーナのフローリングは傷のつきにくい素材と塗料を使用。車いすのままでも使用できるシャワールームの設置など、さまざまな工夫が目を引く。多くのパラアスリートたちが練習の場として利用しており、数々のパラスポーツ大会の輝かしい実績へと繋がっている。

見学当日はエントランスからスタートし、更衣室やトレーニングルーム、アリーナなどを見てまわった。子どもたちは説明を聞きながら、それぞれの場所に施された工夫を興味深く見学。アリーナでは実際にパラアスリートたちが練習をしており、その迫力に驚いていた。

子どもたちに今回の見学の感想を聞いたところ、「壁や床に白い線が書かれていたり、(視覚に)障がいのある人にもドアの場所が分かりやすいようになっていて、その気遣いがいいなと思いました」、「更衣室のロッカーが、左開きと右開きどちらか使いやすい方を選んで使えるようになっていて、『誰一人取り残さない』(SDGsの原則の一つ)ということに合っているなと思いました」など、いろいろな気づきと発見を楽しんでいた。

マインクラフトで拓ける、子どもたちの未来志向とは
Minecraftカップ全国大会運営委員会ディレクターの土井隆氏

最後に、マインクラフトを教育の中で活用することの有効性は、どのようなところにあるのだろうか? そんな疑問に対して、Minecraftカップ全国大会運営委員会ディレクターの土井隆氏が答えてくれた。

――「Minecraftカップ」は毎年、SDGsに関するテーマを設けていますが、これはどういった意図で決めているのですか?

土井隆氏(以下、土井):実際に未来を創造していくのは子どもたちですし、それを自由に表現できるのがマインクラフトの強みだと思っています。そこで、未来志向になるようなSDGsのテーマを毎年検討しています。

――応募されたたくさんの作品を見ていく中で、子どもたちの可能性をどう感じていますか?

土井:やはり子どもたちは元々すごい力を持っているな、と感じますね。マインクラフトを使って普段からいろいろインプットしたり、発表したりしている。マインクラフトについては、子どものほうが詳しいので、逆にいろいろと勉強させてもらっています。子どもたちの可能性はもちろんですが、マインクラフトに熱中するお子さんを見ている親御さんや先生など、まわりの人たちが変化をしていくことにも可能性を感じますね。やはりゲームという認識がある中だと、熱中して何時間もやっているということに対して、不安に思っている親御さんも多いと思います。でも単純に「ゲームだから悪い」ではなく、その中で「どういうことをやっているのか」ということに興味を持ってくださる親御さんや大人の方が増えてきている、というのが大きな可能性を感じますね。

――今回の最優秀賞を獲得した作品はいかがでしたか?

土井:チーム高砂小の作品は、自分たちで生物多様性とはなんだろう?と好奇心を持って作っているなと感じました。バイオミミクリー(生物模倣)をテーマに据えて、熱効率のいいハチの巣みたいな家やキノコ型の建物などいろいろと作っていましたね。建築の形というと今すでにあるものが正しくて、それを元に作ってしまいがちですが、そうではない発想というのが、子どもならではですごく面白いなと思いました。ccくんは未来エネルギーとして雷エネルギーを使えないか、ということを、ある種ストーリーチックに作って伝えていて、すごく夢があるなと思いました。metaleさんの作品は、巨大樹という大きな木から始める街を作っていて、彼女のテーマ性がとても素晴らしかったです。未来にこうなっていたらいいなとか、未来がこういう悲惨なものになってしまったから、そうならないためにはどうしたらいいだろうという、しっかりとしたストーリーテリングを感じました。

――今後の「Minecraftカップ」の展望を教えてください。

土井:私たちは、モノ作りに触れたと思ったときに、その環境をどれだけ広げられるかという意味で、学校でも家庭でもなく放課後の集まりのような「第三の居場所」、そういう居場所作りを支援しています。そういった拠点でもマインクラフトを楽しんでもらえるようにワークショップを開催したり、現地に行ったりしています。そして今後は「Minecraftカップ」の大会をもっと大きく、広く認知されるものにしていきたいですね。さらには子どもたちにマインクラフトでいい作品を作るのがカッコイイなと思ってもらえるような先輩になってもらい、将来の仕事や多くの仲間など未来に続くようなプロジェクトに成長させていければと思っています。


ゲームとしてだけでなく、教育のツールとしても非常に有効なマインクラフト。子どもたちにとって、SDGsとはこういうものだと言われただけではなかなか理解しづらいかもしれない。しかし、マインクラフトで楽しみながら、テーマについて自分で調べ、考え、工夫してワールドを作り上げることで俄然興味を持ちやすくなるようだ。そうして力を培った子どもたちは、きっと将来持続可能で、ダイバーシティ&インクルージョンも達成された誰もが生きやすい社会を実現してくれることだろう。社会の課題について考える、そんな未来志向を養うツールとして、ぜひ一度、親子でチャレンジしてみてほしい。

text by Jun Nakazawa(Parasapo Lap)

photo by Tomohiko Tagawa

資料提供:Minecraft cup

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