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能登半島地震で“富山の段ボール会社”が2000万円を寄付...義援金ムーブメントの舞台裏

PHPオンライン衆知 / 2024年4月15日 11時50分

避難所での支援の様子

「売名行為と言われても結構! このアクションをきっかけに義援金のムーブメントを起こしたい」そう自身のSNSで発信し、様々な支援活動の起爆剤となる支援運動を繰り広げるサクラパックス株式会社。なぜそこまでやるのか、代表の橋本氏に今後の支援について聞いた。

 

義援金のムーブメントを起こしたかった

避難所での支援の様子

――能登半島地震災後、早々にSNSで発信されたメッセージへの橋本社長の想いについてお聞かせください。

「義援金のムーブメントを起こしたかったんです」、発災後、企業の経営者は支援活動や義援金の寄付をどうするべきか考えるものです。多くの方は、行動の起こし方がわからない。または、行動を起こすこと自体に迷いが生じ周囲の動きを窺っています。だから、「ここは真っ先に私が動かなければ!」と、思いました。

そこで、富山県知事へ義援金の寄付を申し出ました。ただ寄付をするのではなく、地元メディアに声をかけ義援金の寄付の様子を報道として扱ってもらえるような場をセッテイングした上で義援金の寄付を行わせて欲しいと相談、実現したわけです。

ニュースを見た経営者は、サクラパックスが寄付をしたのなら自社も寄付をしようと思うかもしれません。さらに、サクラパックスの企業規模で2,000万円なら、売上が倍である自社ならば、それ以上の金額を寄付しなくては、と思ってくれるかもしれません。つまり、私の行動が起爆剤となり義援金寄付の連鎖が起こればいいと考えました。

ニュースを見たことで活動を起こしやすくなり、寄付へ訪れる企業が次々と現れて行列を成し、多くの義援金を集めることができたと知事より聞いています。

――「ここは真っ先に動かなければ...」なぜ、そう思われたのでしょうか?

実は、社長に就任して3年目だったでしょうか、東日本大地震の支援活動を1年間やり続けた経験があります。当時、日本青年会議所の副会頭に就任しており、発災後は物資や人的支援活動を行いました。あの時は原発の問題により、関東から東北へ物資を上げるルートは危険と判断。新潟を拠点に支援物資を運び入れることになりました。

直ちに私も新潟へ入り、一夜にして倉庫や運搬用のトラック数十台を動かせるように手配。全国からの物資300t〜400t、瓦礫の処理などに3万人のボランティアを被災地へ送り込みました。

その経験もあり今回の震災では迅速に動くことができたと思っています。富山県は地震が少ない地域です。震度5強の揺れは私も初めての体験でした。そのため、防災に対する意識が弱く、支援活動も未経験という方が多い状況。

ならば、支援活動で蓄積したノウハウを持つ自分こそが先頭に立ち、その経験値をもとに皆さんを引っ張って行く役割を担うべきだと、自らに課し「まずはやろう!」と、行動を起こしました。

東日本大震災

――支援活動にフルスロットする社長への社員の反応は?

弊社は東日本大震災での経験を経て会社の理念を変えました。「世の中を笑顔にする」という考え方をもとに100年後のサクラパックはどうあるべきかというテーマで幹部社員が議論を重ね「ハートのリレーで笑顔を創り、世界の和をつなぐ」という理念ができ上がりました。

理念は作っただけでは何も変わりません。全社員に浸透させ、それをもとに活動していくことが最も重要となります。多くの時間と様々な取り組みを重ね320名の社員全員に理念を浸透させて来ました。その甲斐あり、「世の中を笑顔にしたい!」と、本気で思い自主的に行動を起こしてくれています。

そのひとつに防災や災害支援といった社会貢献活動があります。弊社の創立70周年の記念事業を検討している際に、社員から「いま日本で一番笑顔が必要な人を笑顔にしませんか」と、提案が起こります。社内協議の結果、熊本地震にて大きな被害に見舞われた熊本の方々に決まりました。

地震によって大きな損傷を受けた熊本城は、県民の誇りであり心のよりどころとなる大事なシンボルです。その熊本城復興の力になって笑顔を取り戻して欲しいという思いから熊本城プロジェクトがスタート、熊本城組み建てキットが完成しました。

工員や一部の社員は顧客と接する機会がほぼないため、自分たちが製造する製品への反応や感想を聞く機会がありません。自分たちの仕事で世の中の人を笑顔にできているかわかりづらいものです。

そこで、熊本城プロジェクトのPRイベントに参加してもらいました。自分が手がけた製品を手に取り笑顔になる来場者の様子や、「ありがとう」という感謝の言葉をかけてもらえた経験は励みとなったようです。

実体験が伴うことで理念がさらに理解でき深く浸透、もっと多くの人を笑顔にしたいとなります。このような影響から今回の支援活動でも率先して避難所へ行くことを志願する社員が増えて、理念のもと会社全体で同じ方向に向かい活動していることを実感できました。

ですから、1月1日からトップギアで被災地の支援活動に取り組む社長を見て共にトップギアで支援する使命感に燃えていると思います。

 

これまでの経験から、必要な支援が見えている

サクラパックスの防災グッズ

――どんな支援を行なっていますか?

東日本大震災以降、避難所生活の環境を整える段ボール製のベッド、トイレ、パーティションといった防災製品を開発、製造しており、災害発生時には供給する協定を多くの自治体と締結し、迅速に運び込める体制を整えています。

発災後、直ちに従業員の安否や各工場の被害状況を確認、稼働できることがわかったので1月4日には被災地へ入りベッドやトイレをあるだけトラックへ積み避難所へ配って回りました。約2週間で合計1,500くらいの製品をお届けしたと思います。

同時に、自社サイトで紹介している段ボールを再利用し、避難所生活を快適にするライフハック「段ボールでまもろう」をSNSで拡散。物資の運搬で避難所を回りながら作り方をレクチャーする活動をしました。

また、サクラパックスが運営する北陸のいいものを紹介・販売しているセレクトショップ「the Made In」で、能登半島地震で特に被害が大きかった能登地域の商品を販売して応援するためのECサイトを1月15日にはオープンさせ、収益の一部を能登半島地震復興支援のために寄付する活動もしています。

サクラパックスの防災グッズ

――次に必要な支援活動は?

被災で傷ついた子どもたちの心をケアするキャンプの実施が春休みを活用して始まるでしょう。その次は、進学を控えた子どもたちへ向けランドセルや学用品の提供。夏になれば扇風機。また、仕事へ復帰する方が増えればパソコンやスーツの提供。

このように支援活動は時間経過と共に刻々と変化します。東日本大震災で継続的な支援活動を経験したことで、先々必要となる支援が見えている分、先頭に立ち適宜求められる支援を続けていく役割を果たしたいです。

避難所での支援活動

 

被災地の企業がすべきこと

サクラパックスの新聞広告
↑「自粛をなくそう運動」の新聞全面広告

――東日本大震災、熊本震災の支援活動を経験してきたからこそわかる、被災地の企業だからこそすべきこととは?

地震後1週間経過したころから新年会や会合などを自粛する動きが出始め、私の元にも中止案内が山ほど届きました。自粛が続けば北陸地域の経済が回らなくなり、被災者にも影響を及ぼしかねない。「これはまずい!」と、直感。賛同いただける地元企業を募り、自粛をなくそうと語りかける新聞全面広告(※上記画像)を掲載し「自粛をなくそう運動」を展開しました。

強要されて自粛するのではなく、共感した方が自発的に行動を起こすのが望ましいと考え、広告には柔らかい印象の富山弁を使用しました。すると、徐々に復興関連のネーミングに変更した催しや会合が復活しはじめ、会費の一部を寄付する取り組みも起き始めているとか。先日も、ある銀行の会合で主催者の方が冒頭でこの広告を読み上げ、会合の開催を決めたと話をされたそうです。

弊社が起こした「運動」を見て後に続き行動を起こしてくれる人がいる。弊社の役割は起爆剤となる運動により支援活動を仕掛けること、それが使命だと改めて確認できました。

これから懸念されることは、風評被害と風化問題です。金沢市内の宿泊施設では予約が9割キャンセルなったところもあるなど、既に風評被害による観光客の減少が拡大しています。

北陸おうえんプロジェクト

そこで、「風評被害をなくそう運動」として、【北陸おうえんプロジェクト】をスタートさせました。安心して、安全に、いますぐ北陸の各地に遊びに来たくなるような観光・行楽情報を発信して、誤解や勘違いによる悪いイメージを払拭し経済の復興に繋げたいです。

個人的な感覚になりますが、熊本地震では被災後2年で報道が減少し、風化が進行したと記憶しています。何も手を打たなければ能登半島地震も同様になるでしょう。

復興への道のりは継続的な支援が必要です。そのためには震災があったことを風化させてはいけない。そこで「風化を無くそう運動」として、熊本城組み建て募金のような被災地へ思いを馳せられるアイテムを活用した支援を検討中です。弊社の強みを生かした製品開発を視野に入れ具現化して行くつもりです。

支援物資を避難所へ届けていて気がついたことがあります。それは、避難所の受付で「サクラパックスです」と伝えた途端、「あぁ....サクラパックスさんが来てくれた〜!」と、安堵の表情になる避難所の方の様子から【防災=サクラパックス】というイメージが定着し、段ボール製造会社の他に「防災に長けた会社」と、印象づいていることを強く実感しました。

思えば弊社の理念が災害支援から発祥しているため、防災を軸におき、専門分野である優れた素材の段ボールと、他社にない設計力という強みを徹底的に使いながら社会貢献してきたことが十数年かけて一般の方に広まり定着したことを表しています。

先日も、防災士の試験に社員4名が合格し現在5名の防災士が弊社にはおります。防災士の役割は、有事の時、地域のリーダーとなり行動し、平常時にも防災知識を地域へ普及することです。能登半島地震を受け、これまで以上に専門性を活かした徹底的な防災啓発活動を通して「世の中を笑顔にする」を根幹に地域のために力を尽くせる企業を目指して行きます。

避難所での支援活動

 

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