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北方謙三氏『黄昏のために』インタビュー「その場面で選ぶべき1つしかない言葉を選ぶことが小説を書く行為の根源にある」

NEWSポストセブン / 2024年6月23日 7時15分

 酒場や、映画館や、ふとした街角で出会った人々が、「出会っただけで理由になるから」と登場人物になり、その細やかな交情がこうも滋味深い1篇になるのかと、改めて驚かされる掌編集だ。

「それが小説の言葉ですよ。例えば志賀直哉『城の崎にて』には1か所だけ、『いい色』という表現が出てくる。その綺麗でも美しいでもなく、いいとしかいえない言葉を求めて私はこれを書いたし、フローベールは『ボヴァリー夫人は私です』と裁判で証言したそうだけど、この画家崩れの主の弱さなんてヤベッて思うくらいオレの弱さだもんな。つまり登場人物は全て、私なんです」

 物語を終わらせる痛みや、「言葉を凝視する苦しみ」に耐えたのも、来る長編のため。何より「小説は言葉」だと信じるからだという。

「私が銀座で飲んでばかりいると思ったら大間違い。あの本屋に何十何作も並ぶ本を書いたのは全部オレで、意外と勤勉なんです(笑)」

【プロフィール】
北方謙三(きたかた・けんぞう)/1947年、唐津市生まれ。中央大学法学部卒。1981年『弔鐘はるかなり』で単行本デビュー。1983年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、1985年『渇きの街』で日本推理作家協会賞、1991年『破軍の星』で柴田錬三郎賞、2004年『楊家将』で吉川英治文学賞、2005年『水滸伝』で司馬遼太郎賞、2007年『独り群せず』で舟橋聖一文学賞、2011年『楊令伝』で毎日出版文化賞特別賞、2016年「大水滸伝」シリーズで菊池寛賞、2024年『チンギス紀』で毎日芸術賞など受賞多数。169cm、78kg、A型。

構成/橋本紀子

※週刊ポスト2024年6月28日・7月5日号

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