【逆説の日本史】日本の主流とはならなかった「アジアと固い絆を持った人々」の思い
NEWSポストセブン / 2024年7月5日 7時15分
なぜそうなるかと言えば、民主主義体制が不十分だからである。共産党一党独裁の中国は論外だが、本来は複数政党制の民主国家であるはずのロシアも、プーチンという独裁者に幻惑されてウクライナ侵略という誤った道を選択した。ちょうどアドルフ・ヒトラーに心酔したナチス・ドイツが世界征服に乗り出したのと同じことだ。しかし、曲がりなりにも共和国であるロシアは、何年かかるかわからないがドイツ国民がナチズムという迷妄から覚めたように、必ず民主国家に回帰するだろう。
問題は中国である。
二つの「別の道」
これまで何度も指摘したように、欧米列強が植民地獲得競争をしていた帝国主義の時代に、当初日本は中国・朝鮮と一体となって欧米の侵略を跳ね返そうという理想を抱いていたが、この構想はもろくも崩れた。なぜ崩れたかと言えば、やはり「朱子学の呪い」だろう。ひょっとしたら若い読者はなんのことかと思うかもしれないが、それは『コミック版 逆説の日本史』の「江戸大改革編」「幕末維新編」あたりを詳しく読んでいただきたい。それがどういうものであったか説明するには、それぐらいの紙幅が必要なのだ。
ちなみに一つだけ言っておけば、韓国はいまでも日本が邪魔したから自力で近代化できなかった、と声高に主張する。しかしそれは大きな間違いで、朱子学に骨の髄まで洗脳された大韓帝国は単独では絶対に近代化できなかっただろう。だからこそ当時の大韓帝国総理大臣李完用は、「国を民族ごと日本に預ける」という決断をしたのだ。しかしこの大英断もいまだに評価されず、いまでも彼は韓国では極悪人扱いである。
だからこそ、朱子学に洗脳された中国や朝鮮と組むことは不可能だということで、日本は別の道を行かざるを得なかった。別の道というのは、大きく分けて二つある。一つは欧米列強グループに入会し、「大親分イギリス」の「弟子」となって「収奪する側」に回ることだ。日露戦争の直前、当時の首相で山県有朋を押しのけて陸軍の代表者となった桂太郎が、「フィリピンはアメリカの植民地であり、現地の独立運動を日本は応援しない」と約束した桂‐タフト協定がその第一歩で、日本はこちらのルートを選択した。
では、選択しなかったもう一つのルートはなにかと言えば、現在、何度も続きを述べようとしては挫折している(笑)一九一五年(大正4)十二月、来日していたインド独立の闘士ラス・ビハリ・ボースが国外退去を命じられたときの状況を語れば、おのずとあきらかになる。これまでも述べてきたように、彼に国外退去が命ぜられたのは当時の日本が英米協調路線を基調とする大隈内閣であったからだ。
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