篠原信一が「銀」に泣いたシドニー五輪「世紀の誤審」から24年 柔道界の鉄人が指摘する「国際試合ならでは」の事情
NEWSポストセブン / 2024年7月23日 11時15分
「日本は『一本勝ち』こそ柔道の王道だとするが、世界は細かいポイントを積み重ねて勝つ『JUDO』を目指してルール変更を繰り返してきた。そのため“美しい技”にこだわる日本勢は国際大会で苦戦を強いられた時代が続いた」
それでも全柔連は頑なだった。正木は審判委員会で「柔道は日本発祥だが、世界的スポーツになるためには『IJFルール』を取り入れるべきだ」と発言して反感を買ったことがあるという。
「“世界がルールを変える前に、日本が先に改革すべきだ”と言ったこともあります。日本の柔道界は石頭ですから、黒船が来て初めて目が覚める。私はレスリング経験もあったので、そういう発想になれたのかもしれません」
そんな全柔連が、2011年に主催の大会から「IJFルール」を導入することを決めた。きっかけはその前年に国際柔道連盟が発表した、「組み合わずに対戦相手の脚をいきなり手で取る技」を反則負けとするルールへの変更だった。欧米のレスリング出身選手が得意としていた「朽木倒」「双手刈」といったタックルに近い技を禁止し、「組み合って戦う」という柔道の根幹に関わるルール改正が行なわれたからだ。
「講道館ルールも順次変更すればいいという提案もあったが、すでに全日本選抜柔道体重別選手権などの大会では『IJFルール』が導入されていたこともあり、2つのルールがあると(移行期間に)現場が混乱するという懸念が上回った。しっかり組んで技を出し合うスタイルに戻ろうという意図が日本の求める柔道と合致したこともあり、ついに全柔連主催の大会でも『IJFルール』の導入を決めた」
このルール改正については、五輪の伝統競技であるレスリングとの差別化を図りつつ正式競技として存続させようとする、国際柔道連盟の狙いがあったといわれる。
その後も国際柔道連盟では五輪開催に合わせてルール変更を繰り返してきた。北京五輪後に“効果”を廃止していたが、“有効”も廃止して“一本”と“技あり”に限定し、“技あり”2つで“合わせて1本”を復活させた。試合を4分間に短縮し、勝負がつかなければ時間無制限の延長戦突入。さらに旗判定廃止といった変更も行なわれた。
そのように国際化とともに「IJFルール」が定着する中、全柔連は「講道館ルール」に回帰するかのように、2024年の全日本選手権から「旗判定の復活」「試合時間5分に延長(決勝は8分)」などのルールに変更し、試合時間内で必ず決着をつけることにした。つまり、再び国内で2つのルールが共存する構造だ。
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