【逆説の日本史】「虫けら同然の野蛮人」と義兄弟になった清朝皇族・粛親王善耆
NEWSポストセブン / 2024年7月31日 17時15分
善耆は皇族であり、「中華の民」の頂点にいる。そこから見れば日本人など野蛮人の極致であり、川島は皇族ですら無いただの日本人だ。つまり、善耆から見れば「虫けら」同然なのである。しかも、ただの虫けらでは無い。全世界の支配者である中国皇帝に対し、「そちらが皇帝なら、こちらは天皇だ」と東アジアのなかで唯一主張した傲慢無礼な民族の一員であり、さらに日清戦争では多くの清国人を殺した連中の仲間でもある。にもかかわらず、善耆は「日本人に学ぶ」姿勢をとり、川島と深く交わった。その深い交わりを象徴する存在が、川島芳子である。
《きんへきき 【金璧輝】
Jin Bihui
本名:愛新覚羅顕 字:東珍 日本名:川島芳子
1906[光緒32]~48・3・25
清朝の皇女、日本のスパイ。
満洲ジョウ(かねへんに襄)白旗、粛親王善耆の14女。清朝復辟(ふくへき)をめざす実父、善耆が盟友の川島浪速に養女として託し、1915年[大正4]から日本で教育をうけた。バボージャブの次男ガンジュールジャブ(1903~68)と結婚した[27]がほどなく離婚、その後、溥儀の妻婉容を天津から大連に護衛するなど、関東軍の依頼の下で秘密活動を行う。〈満洲国〉崩壊後、北平(北京)で国民党軍に捕まり[45]、死刑判決をうけ[47]、北平第一監獄にて銃殺。〈男装の麗人〉〈東洋のマタ・ハリ〉として当時からメディアを賑わした。》
(『世界人名大辞典』岩波書店刊)
いま放映されているNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』に、女性なのに男装しかしない人物が登場し、「素敵!水の江瀧子みたい!」と声をかけられる場面があった。
では、水の江瀧子とは何者かと言えば、
《水の江滝子 みずのえ-たきこ 1915~2009
昭和時代の女優、映画プロデューサー。
大正4年2月20日生まれ。昭和3年東京松竹楽劇部(松竹歌劇団の前身)1期生。男装の麗人として人気をあつめ、ターキーの愛称で知られた。14年退団。29年日活プロデューサーとなり、「太陽の季節」「狂った果実」などを手がけ、石原裕次郎らをそだてた。またNHKテレビ「ジェスチャー」などに出演。のちジュエリーアーチストとして活躍。平成21年11月16日死去。94歳。北海道出身。目黒高女卒。本名は三浦ウメ。》
(『日本人名大辞典』講談社刊)
戦前、いわゆる「男装の麗人」と言えば、人々が思い浮かべるのが水の江瀧子か川島芳子だったろう。川島が男装(主に軍服姿)を始めたのはガンジュールジャブとの離婚後だから、二人の活動開始時期はほぼ同じ一九三〇年代だが、元祖「男装の麗人」は水の江瀧子のほうだったようだ。
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