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《ちあきなおみ・デビュー55周年でサブスク解禁》圧倒的な“存在感”と“説得力”で人々を魅了した“憑依型歌手” 城之内早苗は「凄まじい衝撃を受けた」

NEWSポストセブン / 2024年8月2日 12時13分

 以来、長ずるにつれ、ちあきの表現する世界観の虜になった。

「ちあきなおみは歌詞に取り憑かれてしまう“憑依型歌手”なんです。それは技術ではなく、持って生まれた才だと思う。

 ある時、取材で付き合いのあった暴力団幹部が検挙されたので拘置所に面会に行ったら、『ちあきなおみが聴きたい』という。曲は届けられないので、歌詞を全曲分、正確に書き写して手紙で渡したこともあります」

 ちあきのヒット曲には『四つのお願い』など明るい曲調もあるが、鈴木は「暗いほうが彼女に合っている」と評する。

「『夜へ急ぐ人』(1977年)を歌う彼女は、“狂気”を見事に演じていたんじゃないでしょうか。歌手がただ歌うだけでは表現できないものを目の当たりにして、本当は明るいことより暗いことのほうが多い、人生の真髄を突かれた気がしました」

妄想を書きたくなった

 ちあきの存在は、さまざまなジャンルで活躍する人たちの創作活動にも影響を与え続けてきた。

 ちあきの曲を聴いて「思わず夢を見た」と語るのは、芥川賞作家の村田喜代子(79)だ。

「彼女の『朝日のあたる家(朝日楼)』というアメリカの民謡をカバーした歌を聴いた時、もう鳥肌が立ちました。ニューオリンズにある女郎屋が舞台で、故郷を離れ、そこへ流れ着いた女性が主人公の歌です。

 その曲を聴いた夜、なぜか自分が女郎屋から抜け出すことができずに働く夢を見たんです。それは、夫が大動脈瘤を発症した頃でした。当時、夫はいつ血管が破裂するかわからない状況で、車の運転も禁止されていました。私自身、手術までの日々を見守ることで心労が重なっていた。そんな時に見た出口の閉ざされたような夢の世界は、『朝日楼』の世界観とどこか似ていたんです」

 夫の闘病経験を元に執筆したのが、村田の小説『あなたと共に逝きましょう』(2009年)だった。

「連載中、何度もちあきさんの『朝日楼』が頭をよぎりました。彼女の歌声を聴くと、胸が焼けるような悲愴感に包まれ、底知れない恐怖も感じる。人生を落ちるところまで落ちて行った歌の凄みが、今も私の胸を震わせます」

 映画監督で作家の森達也(68)も、青春時代に『喝采』『夜へ急ぐ人』でちあきの虜になった1人だ。

「『喝采』が出た1972年は高校生になったばかりでしたが、歌の凄さは圧倒的だと思いました。1977年の紅白で見た『夜へ急ぐ人』のパフォーマンスは圧巻で、サビで“おいで、おいで”と左手を伸ばして指をくねらせる時の表情たるや。歌というより、感情そのものを表現するひとり劇でした」

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