【逆説の日本史】戦前の青年の多くが抱いていた支那大陸「大草原へのあこがれ」
NEWSポストセブン / 2024年8月14日 16時15分
〈河原操子 かわはら-みさこ 1875-1945
明治-昭和時代前期の教育者。
明治8年生まれ。女子高等師範(現お茶の水女子大)を中退し、郷里長野県で県立高女の教師をつとめる。下田歌子に師事し、その世話で横浜の大同学校の教師となる。明治36年中国内モンゴルのカラチン王家に家庭教師としておくられ、大陸における軍事情報もさぐって2年後に帰国。昭和20年死去。71歳。著作に「蒙古土産」。〉
(『日本人名大辞典』講談社刊)
鳥居きみ子については普通の事典には掲載されておらず、これまでは夫の鳥居龍蔵の妻という形でしか紹介されなかった。しかし最近、ようやく「鳥居龍蔵夫人」では無く本人の事績に詳しく触れた児童小説『鳥居きみ子 家族とフィールドワークを進めた人類学者』(竹内紘子著 くもん出版刊)が出版されたので、それを報じた『讀賣新聞』の記事(「人類学 鳥居きみ子の功績」讀賣新聞オンライン2024/02/26 05:00公開。山根彩花記者)を紹介しておこう。
記事によれば、きみ子は「音楽を学ぶため上京し、東京帝国大学の人類学教室に勤務しながら学んでいた同郷の龍蔵と結婚、子どもを生んだ。龍蔵や子どもとモンゴルに数回渡り、現地の人々の風習や、北方民族国家・遼時代の皇帝の墓などを調べた」ということだ。
では、そもそも鳥居龍蔵とは何者か?
〈鳥居龍蔵 とりいりゅうぞう[1870-1953]
考古学者、人類学者。日本における人類学の先駆者の一人。徳島市に生まれる。正規の学生ではなかったが東京大学で坪井正五郎に師事し人類学その他を学び、のち同大学助教授になった。国学院大学、上智(じょうち) 大学の教授、中国の燕京(えんきょう) 大学客座(客員)教授も歴任した。鳥居は大正時代における日本考古学の指導者であり、またモンゴル、中国東北地区を対象とする考古学の開拓者であった。民族学の分野でも、千島アイヌ、台湾原住民(中国語圏では、「先住民」に「今は存在しない」という意味があるため、「原住民」が用いられる)、中国のミャオ族の調査、さらに数系統の構成要素からなる日本民族文化形成論の展開など、功績が大きい。鳥居の学説の多くは、今日ではそのままの形では支持できないが、示唆や刺激に富むものが少なくない。〉
(『日本大百科全書〈ニッポニカ〉』小学館刊 項目執筆者大林太良)
本章に入ってから人物紹介がやたらと続くな、と感じておられる方も多いだろう。そのとおりなのだが、なぜそうなるかと言えば、かつての大日本帝国がモンゴルと深くかかわったという歴史的事実が最近ほとんど忘れ去られているからだ。だから「旗」などという言葉も一から説明せねばならない。戦前はまったく違った。
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