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99歳で死去の桂米丸さん 新作落語に懸けた人生「奇抜なネタを作っても現実が追い付いてくる難しさ」を経て辿り着いた「人間をテーマにする」という考え方

NEWSポストセブン / 2024年8月8日 11時14分

亡くなった落語家の桂米丸さん(時事通信フォト)

 99歳で亡くなった落語家の桂米丸さん。本誌・週刊ポストが8年前に、当時91歳の米丸さんにインタビューした際には、SFやホームコメディなど新作落語一筋でやってきたことの理由も明かしていた。なぜ新作落語を手掛けたかを聞くと、米丸さんは若い頃と変わらない張りと艶のある甲高い声でこう話していた。【前後編の後編。前編から読む】

「私は古典落語がやりたくて入門しようとしたのに、師匠(5代目古今亭今輔)が“古典でなく、今の話をやりなさい”と言うわけ。“古典はうまい人が沢山いるし、あとから威勢のいいのが入門してきたら、あんたは負けちゃうだろうね。だから新作をやりなさい。新しい話をやるなら弟子にする”と言われた。それで新作落語を目指すことになった。

 凄い師匠なんですよ。師匠は群馬出身で上州訛りがあるから、江戸っ子の話をするとハンデがある。苦労した末に新作落語に転向した。自分がしてきた苦労をさせたくないというわけですよ。“苦労してもいいので、古典落語をやってみたい”と食い下がったが、一言“無理です”といわれてしまった。

 もちろん若い頃は苦労しましたよ。落語家じゃ食えないから、倉庫番のアルバイトをしました。昔の寄席は夜だったので、昼間は倉庫番をしていた。それでも師匠は“お前を20代で売り出す。そこで売れないと40代になってしまう”と言う。“30代はないんですか”と聞くと、師匠は“ない”と一言。たしかにこの世界は修行が長く、前座修行4年で、大卒なら20代後半になる。二つ目で30代、真打になるのは40代だからね」

現実がネタに追い付き、追い越していく

 米丸さんは師匠の考えで前座をやらなかったという。1年後に二つ目、3年後に真打に昇進。新聞でもスピード出世とか騒がれた。

「自分ではどうなっているかわからなかった。師匠が言う通りにやっただけ。うちの師匠が凄いのは、自分の新作の十八番を弟子に稽古をつけて教えちゃう。他の師匠が“そんなことをすれば自分のやる噺がなくなる”と心配したほど。それを師匠に伝えたところ、“いいよ。また十八番を作ればいいんだから”と。もの凄いエネルギーと自信をもっていた。その影響を受けたのかもしれない。

 新作落語は思っているより大変なんですよ。ネタを作らないといけないし、それを暗記するのも大変。ところが、暗記したのにウケない。それでも(ネタがもまれて)成長してくれればいいが、ほとんどがダメになっていく。それに対して古典落語は覚えたものはずっと先まで使える。生きる種です。私と一緒に入門した落語家が、20代にやったネタを50代でもやっているんだからね。それが古典落語。同じ話をしているんだから、そりゃ上手くなりますよ。師匠は“(古典落語を)何十年もやってうまくならなければバカだよ”と言っていましたけどね…(笑)」

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