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「嘘」自体を楽しむフェイクドキュメンタリーの世界 意図的に仕込まれた“余白”を視聴者が考えてみんなで補完していく“共犯関係”

NEWSポストセブン / 2024年10月25日 11時15分

大きな反響を集めたフェイクドキュメンタリー『イシナガキクエを探しています』(2024)。写真提供/テレビ東京

 テレビでは、「嘘」は「やらせ」として明確に禁忌とされてきた。しかし昨今、意図的に「嘘」を前提にしながら事実であるかのように見せる「フェイクドキュメンタリー」という手法の番組が大きな支持を集めている。“テレビっ子”ライターで『フェイクドキュメンタリーの時代』(小学館新書)を上梓した、てれびのスキマ(戸部田誠)氏が現象をレポートする。

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 フェイクドキュメンタリーとは狭義では、ドキュメンタリーの手法で描いたフィクションだ。その表現が拡大し、テレビや映画などの映像メディアはもちろん、活字メディアやゲーム、イベントに至るまで多種多様な作品がつくられ、今や「一大フェイクドキュメンタリーの時代」と言っても過言ではない。

 そんな日本のフェイクドキュメンタリーの源流のひとつだといえるのは、1970~1980年代に『水曜スペシャル』(テレビ朝日系)で放送された「川口浩探検隊」シリーズだろう。ジャングルなどの秘境で、猛獣やUMAを探索するというドキュメンタリー。どんな奇想天外なものを見せてくれるんだとワクワクしつつ、デタラメな部分にツッコみながら見ていた人も多かったが、やがて、そのデタラメは「やらせ」として許されなくなっていった。演出に巧みに仕込まれた「嘘」を制作者は隠さなければならなくなったし、「嘘」がバレたら視聴者から非難されるようになった。

 そんななか、作り手があえて「嘘」であると明らかにすることで、視聴者がその「嘘」自体を楽しむ視聴態度が確立されていく。2003年から始まった『放送禁止』シリーズ(フジテレビ系)が記念碑的な番組だ。

 第2話の『放送禁止2 ある呪われた大家族』は、ある「大家族」に密着したドキュメンタリーを模した回だ。一見、通常のドキュメンタリー作品のように見えるが、注意深く見続けると、表面的に描かれた仲睦まじい大家族の物語とは別の“真実”が浮かび上がってくる。父親が子供たちを虐待していることを示唆する描写や、家族が父親の殺害計画を準備していると思わざるを得ない描写が断片的に現われるのだ。

 普通のドキュメンタリーだと思って見ていた視聴者は番組の最後に訪れる“どんでん返し”で騙される快感に浸り、ハッキリ分からないものを分かりたいという欲求に溺れることになる。

 この重層的な仕掛けは、フェイクドキュメンタリーという手法を、テレビというフォーマットで取り上げることによって実現した、唯一無二の“発明”となった。

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