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《東京五輪汚職で226日勾留》KADOKAWA元会長・角川歴彦氏が体験した“人質司法”の真相 小説『人質の法廷』著者・里見蘭氏と対談

NEWSポストセブン / 2024年11月3日 7時15分

里見:そんな扱いを受けたら、不安や恐怖から誰だって警察や検察の思惑通りの自白をしてしまう。しかも弁護士は取り調べに立ち会えない。そんな国は先進国では日本だけ。

 たった1人で検察や警察と対峙しなければならない気持ちを想像すると、事実とは異なる供述調書に捺印する人の気持ちは分かります。

角川:勾留当初、なぜ僕はここにいるんだろうと頭が真っ白でした。検事の言う通りにして楽になりたい自分もいた。そんな時、支えになったのが、作家の佐藤優さんの『国家の罠』です。逮捕前、佐藤さんから連絡をいただき、「これは人質司法になりますよ」と事前に忠告を受けていたんです。勾留中に『国家の罠』を再読して、なぜ自分がこんな理不尽な状況に置かれているのかを学んだのと同時に、これまでたくさんの無実の人が人質司法の前に屈したのではないかと感じました。

『人質の法廷』では、僕自身がこれから経験しなきゃいけないことがたくさん書かれている。勾留中の教科書が『国家の罠』だとすれば、『人質の法廷』は勾留後の教科書です。

裁判官は検察の顔色を窺う

里見:冤罪が生まれる大きな理由の一つが人質司法です。先ほど話題に出た大川原化工機の冤罪事件もそうですし、2019年に業務上横領の疑いで逮捕された大阪の不動産会社プレサンスコーポレーションの山岸忍元社長も248日間の勾留後に釈放され、のちに無罪判決が出た。今年10月9日に画期的な判決が出た袴田巌さんの事件もそうです。

角川:僕はいま名前が挙がった方たちにシンクロニシティを感じているんですよ。みな同じ時代に、人質司法という問題と闘う同志だと。個々の事件を改めて見ていくと、すべての事件に共通点があるのが分かります。それが、検察の捜査能力の低さとガバナンスの低下です。組織として反省して過去を受け止めていないから、同じ過ちを繰り返すのではないか。

里見:私は人質司法によって冤罪が生まれる原因は2つあると見ています。

 1つ目が、会長がご指摘された検察という組織の問題。2009年に厚労省の村木厚子さんが無実の文書偽造の罪で逮捕されました。その後、刑事司法を見直すために法務省が主導した話し合いに参加した村木さんも、検察官自らが変わろうとしていないと感じたそうです。

 2つ目が裁判所や裁判官の問題です。被疑者が保釈請求をしても、裁判官が検察官の反対をあっさり受け入れて、保釈請求を却下してしまう。

角川:裁判官は検察官の顔色を窺って判断しますからね。

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