《東京五輪汚職で226日勾留》KADOKAWA元会長・角川歴彦氏が体験した“人質司法”の真相 小説『人質の法廷』著者・里見蘭氏と対談
NEWSポストセブン / 2024年11月3日 7時15分
角川:それでも前向きに捉えたいのが、2019年から取り調べの録音・録画が義務づけられたことです。
里見:録音・録画は、村木さんの冤罪事件という犠牲を機に実施されるようになったことも忘れてはなりません。それまで検察官は否認供述については取り調べのメモすら取らなかった。検察側にとって不利な証拠になる可能性があったからです。そんな状況を打破した録音・録画は、刑事司法にとって確かに大きな進歩です。
角川:裁判員制度も刑事司法改革の前進です。里見さんの労作は裁判員制度の実像を初めて取り上げた小説ではありませんか。裁判員制度によって、ようやく裁判官が検察ではなく、市民に向き合うようになった。
里見:ただし、いまだに人質司法がはびこる構造は残っています。しかも保釈されたからといって人質司法が終わるわけではありませんからね。
角川:そうなんです。いまも2泊3日以上の旅行には裁判所の許可が必要で、パソコンやスマホを持ってもいけない。里見さんがおっしゃったように、司法に社会権を奪われて、僕はようやく保釈された。そんな理不尽をなくすためにも人質司法が憲法違反であると訴えていきたいと考えているのです。
司会・進行/山川徹
【プロフィール】
角川歴彦(かどかわ・つぐひこ)/1943年生まれ、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒業後、1966年に角川書店に入社。角川グループホールディングス会長、KADOKAWA会長などを歴任。現在、角川文化振興財団名誉会長。最新著書『人間の証明 勾留226日と私の生存権について』(リトル・モア)が話題に。
里見蘭(さとみ・らん)/1969年生まれ、東京都出身。早稲田大学を卒業後、編集プロダクションに所属し、ライターなどを経て2004年に『獣のごとくひそやかに』(講談社)で小説家デビュー。『古書カフェすみれ屋とランチ部事件』(大和書房)など著書多数。最新著書は『人質の法廷』(小学館)。
山川徹(やまかわ・とおる)/1977年生まれ、山形県出身。ノンフィクションライター。2019年に『国境を越えたスクラム ラグビー日本代表になった外国人選手たち』(中央公論新社)で第30回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。最新著書は『鯨鯢の鰓にかく: 商業捕鯨 再起への航跡』(小学館)。
※週刊ポスト2024年11月8・15日号
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