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【逆説の日本史】「歴史家の使命」としていま述べておくべき日本人と全人類の将来にかかわる提言

NEWSポストセブン / 2024年12月30日 11時15分

 耳を疑う人が多いかもしれない。とくに後者については、反感を持つ人もいるだろう。「井沢元彦よ、お前はいつも中国は危険な国だと警告してきたではないか。前言を翻して媚中派になるのか!」などと考える人もひょっとしたらいるかもしれない。そんなつもりは毛頭無い。

 拙著『絶対に民主化しない中国の歴史』(KADOKAWA刊)で述べたように、中国にはそもそも民主主義を定着せしめる伝統がまったく無い。しかも、さらに問題なのは儒教という民族の伝統思想の強い影響で、民主主義など非合理で遅れた制度だと思い込んでいることだ。

 先の米大統領選後にテレビのニュースを見ていたら、敗北したカマラ・ハリス候補が「選挙に負けたら、その結果を受け入れるのも民主主義です」と民衆を前に演説していたが、残念ながら中国にはそういう考え方はまったく無く、そもそも選挙で最高の権力者を選ぶという発想すら無い。いまの習近平国家主席は全国人民代表大会の選挙で選出されたという形をとってはいるが、それは民主主義を否定する一党独裁政権の下で行なわれた形式的なものだ。フランス革命を民主主義の原点とすれば、中国は「二百年以上遅れた国」なのである。

 一方、原発推進についても「原発の利権でオイシイ思いをする気か?」とか「日本は地震が頻発する国だ。それがわかったうえでそんなことを主張するのか!」などと極悪人扱いされそうだが、ここで日本人すべてに思い出していただきたい歴史上の名言がある。それは次のようなものだ。

〈江戸の日本橋より唐・阿蘭陀まで境なしの水路なり。然るを是に備えずして長崎にのみ備るは何ぞや〉

 ご存じだろう。江戸時代の経世家林子平が、著書『海國兵談』において日本の海防の危機を訴えた有名な言葉だ。この言葉が発せられた背景を簡単に解説すると、かつて日本は世界一安全な国であった。なぜなら、島国で周りを海という「深い堀」で囲まれているからだ。外国は日本を攻めるなら必ず大量の船(昔は爆撃機やミサイルなど無い)を動員せねばならず、また積載能力の少ない木造帆船では大量の兵員を送り込むこともできなかった。

 ところが、十八世紀になると西洋で蒸気機関という強大なエンジンによって動く船(これを日本では「黒船」と呼んだ)が開発されたことによって、事情はまったく変わった。蒸気船は木造帆船では積載不能な重砲(巨大な大砲)が何門も積めるから、洋上からの艦砲射撃で江戸城を破壊する、などということが可能になった。「海に囲まれているから世界一安全」だった日本が、「海に囲まれている(江戸日本橋の水はオランダまで通じている)から、どこからでも攻略できる(長崎だけ防御を固めても意味が無い)」という、「世界一危険な国家」に成り下がったのだ。

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