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【逆説の日本史】「歴史家の使命」としていま述べておくべき日本人と全人類の将来にかかわる提言

NEWSポストセブン / 2024年12月30日 11時15分

 人命に関することだから中国人も注意するだろう、というのは甘すぎる考えだ。二〇〇八年に四川省で大地震が起きたとき多くの子供が犠牲になったのは、施工業者が不当な利益を得るために屋根の工事などに手抜きをしたからで、中国とはそういう国なのだ。これが曲がりなりにも民主主義国家であったら、マスコミはそうした業者を強く批判し政権も交代する可能性があるから、最終的にそうした傾向は是正されていく。しかし、「絶対に民主化しない中国」ではそうした状況にはならない。

 では、そうした多数の原発(これを仮に原発銀座と呼ぼうか)を中国はどこに造るだろうか? それについて参考になる図面があるのでご覧いただきたい(地図参照)。これは、中国北部の砂漠地帯で発生した黄砂がどのように中国本土を席巻し、日本に流れてくるかというルートを示したものだが、読者のみなさん、ここで中国の指導者になったつもりで「原発銀座」をどこに建設するか考えていただきたい。

 まともな国の指導者が考えるのは、原発は万一の事故に備えて人里離れた地帯に建設する、ということだろう。ところが、その中国の「人里離れた地帯=砂漠」からは風が首都北京の方向に流れているのである。となれば、私だって中国の指導者ならば原発銀座は上海など東シナ海や南シナ海沿岸に建設するだろう。そうすれば、万一事故が起こっても放射能汚染は中国本土では無く日本や朝鮮半島に流れるだけで済む。

 おわかりだろう。つまり、われわれ日本人はこの先数十年の間に上海沿岸などに建設された中国製の「粗悪な」原発が、いつ事故を起こすかもしれないという恐怖に怯えながら暮らさなければならないかもしれないのだ。そして万一、いやもっと高い確率が予想されるが、そういう事故が起こったらどうなるか? それこそ「昔は日本海で獲れた魚は食えた」とか「昔は北九州にも人が住んでいた」などということにすらなりかねない。日本人は言霊信仰の影響で「縁起でも無い話」は生理的に受けつけないという民族的弱点を持っているが、今回述べたことを冷静に論理的に考えれば、決してあり得ない事態では無いということがわかるはずだ。

 さらに厄介なのは、これが中国の内政問題だということである。中国がいま進めている「世界の迷惑」とも言うべき軍事的進出については、たとえばクアッド(QUAD=日米豪印首脳会議)などの枠組みを利用して牽制することもできるし、「中国よ、侵略的行動はやめるべきだ」と抗議することもできる。しかし、中国が自国の領土内に原発をどこにどれぐらい建設するのかというのは純然たる中国の内政問題であって、他国が口出しする権利は無い。主権国家への内政干渉は許されない、というのが人類社会の常識である。「中国よ、あなたの国の科学技術は信頼性に欠ける。だから原発を建設するのはやめてくれ」などとは口が裂けても言えない、ということだ。

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