1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「天皇家の昭和100年」】「天皇なき右翼」が力を持つようになった現在地 「革新のほうこそ天皇を必要としている」

NEWSポストセブン / 2025年1月13日 6時59分

佐藤:前回の総選挙で議席を伸ばした右派政党の日本保守党は「日本の国体、伝統文化を守る」として天皇制に言及するが、代表の百田尚樹がSFだと断わりを入れつつも、「女性は30超えたら子宮を摘出する」と発言して批難を浴びるなどしました。こういう保守に私はあまり脅威を感じません。

 一方、現代は革新のほうこそ天皇を必要としているのかもしれません。れいわ新選組代表の山本太郎は、12年前の園遊会で天皇に反原発を訴える書簡を手渡ししました。

片山:天皇がうなずいてくれれば国が変わるという、非常に天皇主義的な幻想なわけですが、完全に左派と右派のねじれが生じていますね。

佐藤:そう思います。左派・リベラル派が生前退位を表明した上皇の人格に依拠していき、逆に安倍晋三支持者が上皇を支持しない、という現状ですね。山本太郎の例は、昭和2年に軍隊内部の部落差別や待遇の改善を天皇に訴えた、陸軍兵の北原泰作による天皇直訴事件を彷彿とさせ、左右がねじれた反復と見ることができます。

女性・女系天皇議論の危うさ

佐藤:それからもうひとつ、エンペラー(皇帝)としての天皇の役割を考えておく必要があります。エンペラーの特徴は、複数の民族グループを統治していることです。

片山:なるほど。

佐藤:日本の予算構造を見るとよく分かりますが、北海道と沖縄は外交予算が組まれている。内閣府の沖縄担当と国交省の北海道開発局が予算を組み立てており、国家として北海道と沖縄は「外部領域」ということ。だからこそエンペラーが必要で、アイヌ民族を先住民として認めるとか、上皇が琉歌を詠んだりすることで統合してきました。

片山:天皇家の歴史を見ると、大和朝廷が大嘗祭等を行なう際に遠くの国の人々を連れてきて歌の贈答をすると、九州の隼人が騒音を立てて囃すわけですね。そうすることで、辺境の人々が天皇の代替わりのエネルギーを与えてくれる。必ず周縁の人々を仲間に入れて代替わりを繰り返すのです。

佐藤:外部領域を組み込んでゆく。天皇のそうした機能が薄れていくと、モノトーンな国民国家になっていきます。

片山:おっしゃる通りで、天皇を外した右翼になると、外部領域としての北海道と沖縄は無関係になり、本州が純粋な日本となる。その結果、解体の方向へ向かうでしょう。右派のエネルギーは今、そうした方向に傾いているようです。

佐藤:だから、アイヌ民族の先住権を認めない主張や、沖縄に対して基地の過重負担を強いる論調は、天皇制を崩す方向の動きに他なりません。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください