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《アメリカ大統領選が10倍面白くなる》大谷翔平は「リベラルの星」でアイスホッケーは「白人金持ちの娯楽」 “ステータス”で好きなスポーツが違う「国民性」はなぜ生まれた?

NEWSポストセブン / 2025年1月19日 11時15分

 ただ、“歴史”には必ず暗部が付きまとう。大リーグでは長年にわたって有色人種の選手に対する差別があり、かつては野茂英雄やイチローに差別発言が向けられたこともある。“古きよきスポーツ”ゆえに、オーナーになりたがるような名士や経済人も白人男性ばかりで、女性オーナーは歴史上も極めて珍しい。しかしすでに述べたように、特に近年、大リーグは優秀な外国人選手の存在を抜きに、語れなくなっている。

 アメリカのプロ・スポーツとは、社会階層によって何を見るのかが、かなりはっきりと分かれる。例えばアイスホッケーは白人の金持ちが見るもので、プロレスはもっぱら中流以下の保守層が愛好する。そういうなかにおいて大リーグとは、「オーナー周辺の経営層、また古い観客は保守で、選手や新しい世代の観客はリベラル」といったことが、よく言われてきた。つまり、一つのスポーツにかかわる人たちの間で、ある種の“分断”が生じていたことになるわけだ。

 ところで、今回の大統領選挙で勝利した共和党のドナルド・トランプは、以前から移民を規制すべしという主張を繰り返してきた人物だ。よって伝統的にアメリカに暮らす移民たち、特に中南米から来たヒスパニック系(大リーグ選手にも多い)は、移民に寛容な民主党を支持しているとされてきた。しかし今回の大統領選の結果を読み解くと、ヒスパニック系がかつてなく、トランプに投票していた実態が浮かび上がってきているのだ。例えばロイター通信は11月7日付で「トランプ氏返り咲き、ヒスパニックと労働者の支持上積みが原動力」という記事を出し、「今回の大統領選でヒスパニックのトランプ氏の得票率は男性が55%、女性が38%で、前回大統領選からそれぞれ19ポイント、8ポイント上昇した」と報じている。

ヒスパニック系の支持が民主党から離れつつある

 この原因については現在、さまざまなことが言われているのだが、一つ挙げるべきこととして、「ヒスパニック系が民主党のリベラル姿勢についていけなくなった」ことがあるとされる。中南米からアメリカにやってくる人々は、確かに移民であるのだが、それと同時にほとんどが敬虔なカトリック信徒だ(中南米は世界的にも極めてカトリックの勢力が強い)。カトリック信徒たちは基本的に、道徳的な生活を重んじ、「妊娠は神の恵み」とするゆえに、人工中絶にも否定的だ。

 最近のアメリカはこの「人工中絶をしていいのか否か」といった、ある種の“宗教論争”で政界が揺れている状況があり、共和党が中絶反対、民主党が中絶容認の立場だ。そのほかにも近年の民主党は、まるで“過激右派”たるトランプに対抗するかのように、その“リベラル度”を加速度的に上げてきた。しかしそれが、元来保守的な気風を持つカトリックの人々、つまりヒスパニック系に嫌われたのではないかとの分析がある。これまで移民をどうするかの文脈で、むしろ民主党はヒスパニック系に寄り添い続けてきた党なのだが、そういう意味では逆効果になってしまっているわけだ。

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