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《トランプ政権誕生を10倍面白く読む》バイデン前大統領の突然の「USスチール買収中止命令」 裏に隠された民主党の“構造的問題”

NEWSポストセブン / 2025年1月21日 7時15分

 一方の民主党陣営では、「バイデンもまた、USスチールの買収に懸念を抱いているのではないか」といった報道が出回り始めたのが昨年の夏ごろの話。善しも悪しくもバイデンはトランプより、この問題に関しては一歩引いていた。しかし彼はまさに大統領退任の寸前、USスチール問題でいわばトランプと歩調を合わせたのである。

 すでに述べたように、この日本製鉄によるUSスチールの買収話は、いわゆる専門家筋からは問題視されたことがあまりない案件だ。よって民主党サイドとしてはここで“理性派”の立場を取り、「USスチール問題でトランプは無知をさらして暴走している」といった批判を展開する選択肢もあったと思う。しかしどうも、今のアメリカ政界の状況が、それを許さなくなっているようなのだ。

労働者の味方は、共和党、民主党、どっちだ?

 すでに本連載のなかで指摘してきたことだが、共和党とは南北戦争(1861〜1865)前夜に、反奴隷制の自由主義を掲げ、北部の商工業者などを主要な支持者として設立された政党である。よって伝統的に「小さな政府」路線をとり、経済政策としては自由競争を重視する態度を打ち出してきたので、その支持層には資本家などが多かった。

 一方で民主党は、そういう共和党への対抗の意味もあって、南北戦争以後は労働組合を伝統的な支持基盤としてきた。そういう流れから労働者の権益保護を打ち出す政策は、自然と党を「大きな政府」路線にいざなった。そこから特に20世紀以降、民主党は社会民主主義的な路線をも標榜するようになり、現在のようなリベラル色の非常に強い党としての姿が完成したのである。しかしそれが今、さまざまなところから批判されているように、民主党はリベラル色を強めた結果に都市インテリへ過度な迎合を見せるような政策的態度が目立ち始め、一般的な労働者たちの支持を徐々に失っていった。

 2016年に共和党から出馬して大統領となったドナルド・トランプとは、まさにそうした民主党の取りこぼした“地方の貧しい労働者”たちに、「忘れられた人々だ」と言って同情するポーズをとり、彼らの支持を集めて選挙に勝った人間である。2020年の大統領選では敗れたが、2024年の大統領選では見事にカムバック。そして各種のデータからも、全米の労働者たちは今回かつてなくトランプに、すなわち共和党に投票していることが明らかになっている。トランプという政治家の特徴を一つ述べれば、それはすなわち共和党という政党を「労働者のための党」に変貌させようとしている人物なのである。

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