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【逆説の日本史】米騒動は「天皇制支配に対する労働者・農民の反抗」にあらず

NEWSポストセブン / 2025年1月30日 16時15分

 ウクライナのようにならないためには、軍事同盟と自前の軍事力が絶対に必要である。しかしながら、現行憲法は「軍隊の保持」も「交戦権」も否定しているのだから国民を守れない。だから改正するのは当然だ、ということになるはずである。しかし、なぜそれを言うと罵詈雑言を浴びせられたのか? それは、日本人の心のなかに「現行憲法は、第二次世界大戦における三百万人もの犠牲者の尊い死によって成立したものである。だから絶対に変えてはならない」という信仰があるからだ。

 この信仰は古代から存在するものであり、それが戦前においては「十万の英霊の死を絶対に無駄にしてはならない」だったのだ。それを具体的に実行するためには、隙あらばユーラシア大陸に進出し日本の領土を広げることである。だから日本はシベリア出兵を実行したし、最終的には満洲国を建国した。当然、ロシアや中国は抵抗するから、彼らと戦うことになる。戦争、それは昭和二十年以前は正義なのである。

 おわかりだろう、「シベリア出兵に対する無言の批判」などあり得ないのである。前にも述べたように、戦前にも日中和平を唱える人はいたが、それが中国との妥協を示すことになると「十万の英霊の死を無駄にする極悪人」にされてしまう。ちょうど二十年ぐらい前に「憲法改正」を声高に叫ぶと「極悪人」にされてしまったように、だ。

 もし日本の一般民衆の間に「天皇支配に対する反感」あるいは「戦争遂行に対する拒否感」があったとすれば(おそらく松尾京大名誉教授はそう思いたかったのだろうが)、この先日本の大陸侵略政策にそれほど積極的では無かった原敬首相および犬養毅首相がともに暗殺される一方、陸軍が主導した満洲国建国が一般民衆に大喝采を浴びたことと矛盾するではないか。犬養首相は現役の軍人に射殺された。世界中のあらゆる軍法では犯人は死刑になるはずだが、前にも述べたように膨大な助命嘆願書が一般民衆から寄せられ、犯人は死刑を免れた。それどころか、恩赦により数年で釈放された。それが戦前の日本の実相だ。

「完全な政党内閣」の誕生

 この事態を軽蔑するか、それとも誇りに思うか、それはご本人の自由だが、事実は事実として客観的に見なければならない。あたり前の話だが、日本の左翼歴史学者はこういうときに自分のイデオロギーや思い込みを挟み込み、事実を捻じ曲げる。読者の方々は用心されたい。ちなみに左翼学者がなぜそうなってしまったのかは、すでに『逆説の日本史 第二十六巻 明治激闘編』に詳しく述べておいたのでそちらを参照していただきたいが、では左翼とまでは言えない普通の歴史学者なら信用できるのか?

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