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【逆説の日本史】米騒動は「天皇制支配に対する労働者・農民の反抗」にあらず

NEWSポストセブン / 2025年1月30日 16時15分

 残念ながら、そうでは無いということを読者の方々はご存じだろう。そもそも、歴史の記述を彼らに全面的に任せてよいなら、私ごときが三十年以上もかけてこの『逆説の日本史』を書く必要は無かったのである。それだけの年数をかけても、彼らの史料絶対主義や極端に狭い視野は解消されず、私の(歴史学者では無い)歴史家として歴史の全体像から分析していくという手法も、決して認めようとしない。

 私の方法論を全面的に採用せよと言っているのでは無い。そういうやり方もあると認めよということなのだが、彼らは自分たちだけが歴史の専門家であるという傲慢な思い込みがあって、態度を改めようともしない。私もとうとう堪忍袋の緒を切って、『逆説の日本史』の世界に入りたいがあまりにも膨大過ぎて入り口がわからないという読者のために、『真・日本の歴史』(幻冬舎刊)という本を書いた。

 これは『逆説の日本史』の入門書であると同時に、歴史学界へのケンカ状でもある。ところが、その本になんとバリバリの歴史学者である本郷和人東京大学史料編纂所教授と磯田道史国際日本文化研究センター教授から、ご推薦をいただくことができた。すでに読売、産経、日経などの各紙の書籍広告のなかで発表されているが、本郷教授からは「真の歴史家の仕事を堪能せよ」、そして磯田教授からは「なぜ日本と世界はこうなっているのか? 本書はそれに答える好著です」とお褒めの言葉をいただいている。

 これがどんなに大変なことか、おわかりだろうか。お二人とも歴史学界に身を置く現役の歴史学者である。歴史学界を批判した本を推薦することは、大変な勇気を必要とする。それでもお二人は推薦してくれた。ここで、お二人には伏して感謝の意を述べたい。正直涙が出るほど嬉しかった。三十年やっていれば、よいこともあるなと思った。せっかくの機会だから、みなさんの周りにも私の本の悪口を言いまくっている歴史学者あるいは歴史学者シンパがいるかもしれないが、そうでは無いよと諭して(笑)いただければ幸いである。

 気を取り直して本題に戻ろう。米騒動はいかにして解決されたのか?

 寺内内閣は暴動が首都東京市に及んだ八月、あわてて天皇からの恩賜金という名目で三百万円を府県に分配した。さらに一千万円を米価対策に投入し、コメの廉売を奨励した。これで騒動自体は収まり、当然ながら革命などには発展しなかったのだが、民衆を軍隊で弾圧し殺傷までした寺内首相は民衆の支持を失い、各地で新聞が「寺内首相退陣」を求めるキャンペーンを張った。

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