小池都知事がこっそり教える「女性は開口一番“一発かますべき”」理由
プレジデントオンライン / 2017年5月6日 11時15分
■1. 伝え方は、訓練して磨くもの
言いたいことを確実に伝えるためには、ポイントを絞り込んで簡潔に話すこと。私はよく「お伝えしたいことは3つです」と前置きして本題に入ります。そう切り出せば、聞くほうは「どんな話が始まるのだろう」と興味がわきますし、「熱意をもって何かを伝えたがっている」と感じ、注意を払ってくれます。
スティーブ・ジョブズが米スタンフォード大学の卒業式で語った有名なスピーチを思い出した人もいるでしょう。プレゼン上手の人はこの“三点話法”を用いることが珍しくありません。
自分の話し方を磨いていく訓練も大切です。世界で活躍するスポーツ選手によいお手本が大勢います。たとえばテニスの錦織圭さんは、試合後の記者会見で対戦相手をたたえるなど、好感度の高いスピーチで定評があります。13歳で単身アメリカ留学した先の学校では、テニスだけでなくスピーチや記者会見の訓練も受けたそうです。また、スキージャンプの高梨沙羅さんも一生懸命に英語で話して、どんどんうまくなっています。スポーツ選手がこれだけ話し方の鍛錬を積むのですから、いわんやビジネスパーソンをや、ですよ。
■2. 最初に一発かましてから本題へ
女性が話す場合に、意識したほうがいいことがあります。それは相手が男性だと、「どうせ女が語ることだから」と聞く前から割り引いて考える傾向があること。特に政治やビジネスの世界では顕著なので、肝に銘じておいたほうがいいでしょう。
そのハンディを払いのけるには「この人は信頼できそうだ」「話に説得力がありそうだ」という印象を与える必要があります。それも、早い段階のほうが効果はあがります。
そういう計算より、強い思いを前面に押し出せば信頼されると考える人もいますが、初めから女性の話を過小評価する相手には通じません。
だから私は、本題に入る前に軽く笑いをとろうと工夫します。ギャグをひとつ飛ばすだけで空気が和み、「この人は話せる人だな」と親近感を持ってくれる。私が関西出身だから、笑いが大切だというのではありませんよ。男性は、そういう芸当ができる人を信頼するものです。
開口一番にとにかく一発かます。話の内容を慎重に検討するのと同じくらい、最初にどんな仕掛けができるかを考えることが大切なのです。
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「今日は薄化粧で来ましたよ」
東京都知事選の演説での言葉。石原慎太郎元東京都知事から「厚化粧」とやゆされたことに対して、「男性はわがままだし、言いたいことを言う。懐を深くして受け止めたい」と前置きし、「だから私、今日は薄化粧で来ましたよ」と語り掛け、大いに場を沸かせた。
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■3. 言葉は時間をかけて練り上げるもの
言葉は緊張感をもって伝える。それは私が13年にわたってニュースキャスターを経験するなかで身につけた姿勢です。
誰でも「あのときはこう言えばよかった」と悔やむことはあるでしょう。私もいまだにあります。しかし生放送の場合は、あとで悔やんでも取り返しがつかないので、その一瞬一瞬に懸け、そこで出し切るしかありません。
そのときに効果を発揮するのが事前にキーワードを準備しておくこと。「これだけは絶対に言おう」と決めたキーワードを用意しておき、タイミングよく話に織り込むのです。キーワードは吟味に吟味を重ねなければ聞く人の心に刺さりません。心に響かない言葉は、100万回繰り返しても伝わらないのです。
私の場合、とりわけ政治家としての公約は、相当時間をかけて言葉を練り上げています。たとえば「都民ファースト」という言葉も、私の意図することが皆さんにきちんと伝わるかどうか、さまざまな角度から検討しました。
まず、その言葉に思わず膝を打つような政策的な中身があるか、そこから強い共感を生むか、などを吟味します。環境大臣だったときの「クールビズ」や、いまや私の決めゼリフのようになっている「もったいない」もよくよく磨いたうえで使っている言葉です。
政策がどんなに立派でも、多くの人に心から共感してもらえなければ、社会を変えていくことはできません。裏を返せば、本当に中身がある政策は、ちょっと伝え方を工夫するだけで大きな共感が得られます。その効果を最大化するのがキーワードなのです。私は思いついたキーワードは必ずメモして、自分の手で書きながら常に研ぎ澄ませています。
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「人生を懸ける大一番のときがきたのに勝負に出ないというのでは、一体何のための人生でしょうか」
都知事選への立候補を表明したときの胸の内を語った言葉。「プレジデント」誌のインタビューに対し、父親から「やれることはやりなさい」「失敗したらあなた自身のせい。責任は自分で取るものだ」と繰り返し聞かされて育てられたことを紹介しながらの決意表明。
「都民ファーストの旗印のもと、私は皆さんの先頭に立って、これまで見たこともなかったような都政づくりに挑んでいく」
2017年1月4日、年頭に当たって都の職員に向けて挨拶した際の言葉。強いリーダーシップを感じさせる一方、「皆さんとならば都民の夢、希望を実現できる都政をつくっていけると私は確信した」「共に頑張ってまいりましょう」と締めくくり、職員への期待も伝えている。
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■4. 言いにくいこともハッキリと!
こんなことを言ったら「他人から嫌われるのではないか」「組織のなかで立場が悪くなるのではないか」などと考えると、伝える力が自然と弱くなってしまいます。私はいま本気で「都民ファースト」を実現したいと考えていますから、言いにくいことでもハッキリと申し上げます。達成したい目標があるので、まったく躊躇(ちゅうちょ)しません。
いろいろとしがらみが多かった衆議院議員時代に比べると、いまはずいぶんと自由にモノが言えます。ハッキリ言いすぎて返り血を浴びることも多いのですが(笑)。
自由に発言できるといっても、何でも口にしていいわけではありません。なかでも避けなければいけないのが下品な言葉づかいです。都議会や国会で下品なヤジが飛ぶことがありますが、言った人の人格まで疑われかねません。ですから自分が使う言葉が下品になっていないかはいつも気にしていますね。
気にかけているという意味では、カタカナ語の使い方にも気を配っています。私は「レガシー」や「サステイナビリティ」「ダイバーシティ」など、海外から入ってきた言葉をあえて翻訳せず、そのまま使います。
レガシーを「遺産」と訳すとレガシーが持つ本来の意味からずれてしまいますし、サステイナビリティを「持続可能性」、ダイバーシティを「多様性」と言われるとピンときません。残念ながら日本にはまだこれらのコンセプトがないのです。
まさに私がいま都政で挑戦しようとしているのは、これまで日本になかったコンセプトを推し進めることです。だから新しい言葉が定着するまで徹底して使うつもりです。フレーズを浸透させるには繰り返し使うことがポイントですね。環境相時代の「クールビズ」のフレーズも、最初は変な言葉に聞こえたかもしれません。しかし私や周りの人が使い続けることで定着し、流行語大賞の一つにまで上り詰めたのです。
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「それは失礼なんじゃないですか」
2016年12月2日の記者会見で、東京オリンピック・パラリンピック会場の見直し問題に関して記者が、既存の横浜アリーナ開催を断念し、計画どおり新設の有明アリーナで行うならば「大山鳴動して鼠一匹といいますか」と発言したところで、笑みを浮かべつつ、しかしキッパリと批判した言葉。
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(東京都知事 小池 百合子 Top Communication=構成 長友善行=撮影 時事通信フォト=写真)
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