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超沸騰の転職市場で"2000万"とれる職種

プレジデントオンライン / 2018年4月18日 9時15分

写真はイメージです(写真=iStock.com/fatido)

多くの業種で「人手不足」になっている。転職市場も好調で、36歳以上の転職はかつての3倍に増えている。だが、そうした状況でも7割の人は転職後に給与が減っている。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は「高額報酬を獲得する人と、年収減に転落する人に2極化している」という。なにが起きているのか――。

■「35歳転職限界説」は崩壊し、40代の転職も増えている

景気回復を背景に人手不足が深刻化している。

日本銀行が4月3日に発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)によると、主要28業種のうち約4割にあたる11業種で人手不足の指標が過去最悪となった。

厚生労働省が発表した2月の有効求人倍率(求人数÷求職者数)は1.58倍、正社員は1.07倍。依然として1975年のオイルショック前の好況期の水準が続いている。

これらを受け、転職市場も活況を呈している。転職者数も2013年は287万人だったが、16年は307万人、17年は311万人に増加している(総務省労働力調査)。

転職エージェント業界の最大手リクルートキャリアによると、3月の転職求人倍率は1.77倍。職種別の求人数は前月比で34職種中11職種が増加。登録者数も13職種が増加し、うち9職種は過去最高となっている。これは転職支援サービスの「リクルートエージェント」の求人であり、転職エージェントに手数料を支払ってでも人材がほしいという企業が多いということだ。

職種だけではない。

すでに「35歳転職限界説」は崩壊し、40代の転職も増えている。日本人材紹介事業協会が調査した「人材紹介大手3社転職紹介実績の集計結果」によると、転職した36歳以上の伸び率は05年上期を100とすると、16年下期は296%と増加している。

▼極度の人手不足、転職環境の好転でも、給与は……

極度の人手不足、転職環境の好転……となると期待したくなるのが給与面だ。各種調査で転職理由を聞くと、その上位は常に「給与に不満がある」だ。しかし、転職した人は、必ずしも給与がアップするわけではない。

人材紹介業大手のJACリクルートメントの黒澤敏浩フェローはこう指摘する。

「景気がよいので転職しやすくなっているといっても基本的には給与は前職と同じか、下がるのが通常です。現在の会社でそれなりに貢献していても他の会社に移ると仕事の環境が変わるので当初はパフォーマンスを出せない。給与を下げて入るのが一般的です」

リクルートキャリアの調査では、前職と比べ賃金が1割以上増加した転職決定者の割合は2013年度以降5年連続で伸びている。ところが、その数値は最新の2017年度でも29.7%でしかない。つまり、残りの7割が横ばいか、下がっていると思われる。

■転職で給与が上がるのはどんな職種か?

転職時に給与が上がるかどうかは求人企業のニーズの大きさにもよる。

中途採用で人材を欲しがるのは、会社の新規事業展開などビジネスに不可欠なスキルを持つ人を望む企業か、単純に人手が不足しているので補充したい企業のどちらかだ。

後者の場合は、未経験者歓迎企業が増えていることでもわかる。エン・ジャパンの「エン転職」の全体の求人数に占める「未経験者歓迎」案件は2014年の9月の52%から17年9月は75%に達している。

職種別の「未経験歓迎」案件比率でも平均77%を占め、とりわけ営業系は80%に達している。実際に異業種に転職している人も年々増加している。異業種、異職種に転職すると経験やスキルがないので基本的に年収が下がるのが普通だろう。

一方、ビジネスに直結する高度のスキルを持つ人材は当然年収がアップする。それが、どういう職種なのか。求人倍率の高さで突き止めることができる。

リクルートキャリアの調べでは2018年3月の転職求人倍率(職種)のトップ3は以下の通りだ。

●インターネット専門職(WEB系エンジニア含む)5.82倍
●組込・制御ソフトウエア開発エンジニア4.62倍
●建設エンジニア4.21倍

▼「1人のITエンジニアを6社が取り合っている」

リクナビNEXTの藤井薫編集長はこう分析している。

「インターネット専門職は、IT企業に限らず小売業などウェブを販売ツールに使う多くの企業が欲しがっています。組込・制御ソフトウエアはAI技術やIoTも含めて機械にソフトを組み込む電機・自動車などのメーカーが最も欲しがる職種ですが、ともにIT系エンジニアです。インターネット専門職の約6倍という倍率は、1人のエンジニアを6社が取り合っているイメージです」

IT系エンジニアではSEも3.07倍、機械エンジニア3.10倍、電気エンジニアも2.98倍と求人数が多い。

■高額の報酬を獲得する人と、年収減で転職する人の2極化

ITエンジニアをはじめとするテクノロジー人材の年収はどれくらいアップするのか。人材紹介大手のロバート・ウォルターズ・ジャパンのデイビッド・スワン社長はこう語る。

写真はイメージです(写真=iStock.com/AH86)

「自動車メーカーなどの製造業では電気エンジニアと機械エンジニアのスキルを併せ持つエンジニアの需要が高い。財務の計画立案と財務データの分析を行うスペシャリスト、金融サービスではデータアナリストなどの需要が伸びています。専門性の高いスキルセットを持つ人材の供給が需要に満たないために、転職内定時提示される給与額が平均10~15%ほど前職に比べて高くなっています。とくにテクノロジーをともなう新興事業分野では20~25%アップするケースもある」

前出・藤井編集長も「ITエンジニアは若い人でも前職が400万円だった人が600万円に、500万円の人が1200万円に上がるケースもある」と語る。

前出の黒澤フェローもこうつけ加える。

「WEB系のサービスをハードからソフトまで全部作ることができるフルスペックエンジニアは年収1000万円台が多い。AIやデータサイエンス関連では人が不足しているために実務経験がない大学院出身者のニーズもある。若い人でも500~1500万円の間で転職している」

▼日本の大企業と外資系企業による熾烈な争奪戦

じつはこうした高度テクノロジー人材は日本の大手企業や外資系企業を巻き込んだ熾烈な争奪戦が展開されている。

その争奪戦に不利な状況にあるのが、外資系企業と違って年功的賃金制度が残る日本の大手企業だ。そこで高額の年収で人材を迎え入れるために主に2つの手法を講じている。

ひとつ目の手法は、既存のものとは別の賃金体系を持つ別会社に入社させる方法だ。黒澤フェローは「既存の部署だと給与の違いが社員間に軋轢を生むので専用の子会社を設置して数千万円の高い給与を支払っている大手企業もある」と指摘する。

ふたつ目は、契約社員として採用する方法だ。

「正社員ではないので給与体系にとらわれることもありません。職務と役割を限定した2年の契約を結び、1年間に2000万円を支払うケースもある」(藤井編集長)

デイビッド・スワン社長も契約社員採用に関してこう言う。

「高度専門人材を契約で調達する動きが増えています。その理由として、日本の年功序列賃金では給与の枠が限られているということ以外に、新規事業分野で正社員として過剰に雇用することを抑える狙いを企業側が持っていることも挙げられます。一方、求職者も受け取る給与が高いというメリットがあるので正社員よりも契約社員を選択する人が若い人ほど多い」

有能な外部人材を積極的に採用するために自社の賃金制度の中に「専門職専用の賃金テーブル」を設けると同時に、特別の部署に配置している大手電機メーカーも現れた。同社の人事担当者はその狙いについてこう語る。

「エレクトロニクス業界は変化が激しく、今は新しいデバイスとサービスを組み合わせていくことが競争の軸になっています。変化に対応するためにはAIやデータサイエンスなど専門のエンジニアを外部から受け入れていく必要がある。従来は、年齢と給与をある程度結びつけた制度でしたが、新たに専門職種のコースを設置し、役割を明確化し、それに基づいた給与を支払うことにしています。また、新規にイノベーション開発部門を設置しました。その結果、市場価値に連動した形で給与をオファーできるようになり、実際に多くの外部人材が活躍しています」

同社は3年前からこの取り組みをスタートし、毎年数百人単位で専門人材を採用している。

活況を呈する転職市場だが、その内実は一部の高額の報酬を獲得する人たちと、年収減で転職する人たちの2極化が進行している。

(ジャーナリスト 溝上 憲文 写真=iStock.com)

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