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「お金持ち」に信頼される人、されない人

プレジデントオンライン / 2018年8月7日 9時15分

ワンハンドレッドパートナーズ共同創業者・社長 百武資薫氏

日々何を考え、何をしているのかが見えてこない富裕層の人々。トヨタグループの金融部門や外資系銀行を経て、富裕層向けサービスを請け負う元金融マンにその“行動原理”を聞いた。

■個人資産の運用の知識や、経験を持たぬ富裕層

富裕層と聞いてまずイメージするのは、一代で財を成した方や、資産を代々受け継いできた方だと思います。加えて、私は大企業の現職役員や元役員も、富裕層に入ると考えています。

報酬が1億円を超える上場企業の役員は、有価証券報告書に記載し、開示することが義務付けられています。ちなみに2017年3月期決算の有価証券報告書で、報酬1億円以上の役員を開示した上場企業は221社、人数は457人で増加傾向にあると言われます(東京商工リサーチ調べ、17年6月30日現在)。

私は証券会社在籍時からそうした役員の方々とお付き合いがありました。2008年のリーマン・ショック以前だと、大企業の取締役でも、専務以上と常務以下では年収も退職金も格段に違いました。概ね、専務の退職金は3億円台、常務は1億円そこそこでした。

また、専務以上で関連会社に出向すると、職位は会長か社長で、年収・退職金が上がりますし、役員にはストックオプションも付与されています。これは、優遇された価額で自社株を買い、株価が上がったときに売却して利益が得られる仕組みですから、総資産額は相当なものになります。

しかし、会社役員は経営のプロではあっても、個人資産の運用については、多くの知識・経験を持たない方がほとんどです。企業経営と個人の資産運用は、まったくの別もの。私は証券マン時代に、そういう役員富裕層の相談も受けていましたから、欧米のファミリーバンクのような、個人資産の見守り役が日本にも必要と考え、ワンハンドレッドパートナーズを設立したのです。

富裕層の信用を得る方法に、方程式のようなものはありませんが、傾向と呼べる事柄がいくつかあります。

写真=iStock.com/elwynn1130

富裕層の多くは、資産を今以上に増やしたいという欲求より、むしろ減らしたくないという心情のほうが、実は強いと思います。また「金は高きに流れる」と言いますが、情報も同様で、お金儲けの話ならば何もしなくても多彩な情報が彼らのもとに集まります。なかには詐欺や違法なものも含め怪しい情報も少なくないので、富裕層の関心は、いかにしてそれらに惑わされることなく資産を守るかにあります。

ですから、金融商品の場合なら「これは儲かりますよ」と勧めても、まず相手にしてはもらえません。運用を他人任せにする投資信託などは嫌い。自らの判断で投資し、失敗したら仕方ない、という心持ちなので、自ら投資したものがどれだけ社会に貢献するのかを強く意識していることが多いのも、富裕層の特徴です。寄付行為に節税効果がなく、社会に定着していない日本ならではの傾向だと思います。

■休日に自宅へ呼んでもらえるほどの関係にならないとダメ

それらを前提として述べるなら、富裕層の信用を得る対処法は、年齢によって違ってくると私は思います。30~35歳くらいの営業職なら「若いけれどよく勉強している」とか「若いけれどよく考えてくれる」など「若いけれど」がよい評価につながります。若くても見どころのある人間なら、育ててやりたいという気持ちが、彼らにはあるからです。それゆえか、身なりや時間といったエチケットやマナーには極めて厳しいと認識しています。

その年齢のころの私は、金融や社会動向のみならず、幅広い知識と情報を持つ先輩を駆り出しては、よく顧客を訪問していました。若くて未熟な部分を先輩の知力・経験で補ってもらう意味もありましたが、同時に、真摯に対応しているという姿勢を相手に伝える意図もありました。先輩との顧客巡りは、私自身の勉強にもなりましたし、信頼を得る面でも功を奏しました。

40代になると、自身が金融マンとしての真価を問われるようになります。重要なのは、こちらの話を聞いてもらうのではなく、相手の話をよく聞くことです。

個人資産の運用は、その家の来歴や家族の事情などにより、顧客ごとに変わってきます。勧める金融商品も、その事情に合わせて組み立てますから、相手の事情を詳しく知る必要があります。平日に会社へではなく、休日に自宅へ呼んでもらえるほどの関係にならないと、なかなかプライベートな話はしてくれないものです。

■身近な不安や問題を、解消してくれる便利屋

こちらから提供する情報も、最新・最先端のものでなければ、関心を持ってもらえません。たとえば、5000万円を超える海外資産の申告が義務付けられたことは、今では周知のことですが、税制が改正された12年以前から、私は海外資産を国内に引き揚げるように顧客に勧めていました。それは、海外の金融・不動産市場の動きが怪しくなってきたと感じたからです。

つまり、テレビや雑誌、インターネットで得られるレベルの情報に、富裕層は関心を示しません。逆にまだあまり世に知られていない、最先端の情報には鋭く反応します。また、関心を示す情報が、意外にも自分や家族の健康、息子や娘、孫の将来といった身近なことである場合も多いのです。ですから、家族の健康に不安があると聞けば、私は自分のネットワークを駆使して最先端の医療技術を持つ医師を紹介しますし、社会貢献という意味で、その研究開発への投資を勧めることもあります。単に情報だけではなく、その情報を使いこなせる人的ネットワークも、富裕層と付き合ううえでは非常に重要です。

要は、富裕層にとって重宝な人材は、身内の話も気兼ねなくできて、最新の情報をもたらし、しかも身近な不安や問題を解消してくれる便利屋なのです。そこをはき違えて、商品を売り込むつもりで接すると、その魂胆は簡単に見透かされてしまいます。相手を知ること、相手のために自分は何ができるのかを考え、その望みを叶えようとすることが信用、そしてビジネスにつながっていくのです。

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百武資薫(ひゃくたけ・よしのぶ)
ワンハンドレッドパートナーズ共同創業者・社長
1958年、福岡県生まれ。同志社大学法学部卒業。トヨタフィナンシャルサービス証券(現・東海東京証券)、英国系銀行日本PB副代表等を経て2010年より現職。

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(ワンハンドレッドパートナーズ共同創業者・社長 百武 資薫 構成=高橋盛男 撮影=初沢亜利 写真=iStock.com)

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