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橋下徹「補助金でノーベル賞が取れるか」

プレジデントオンライン / 2018年10月24日 11時15分

ノーベル医学生理学賞の受賞が決定し、笑顔を見せる京都大の本庶佑特別教授=2018年10月1日、京都市左京区(写真=時事通信フォト)

本庶佑京都大学特別教授のノーベル生理学・医学賞受賞が決まり祝福ムードが高まるなか、「大学への補助金を増やせ」という論調が目立ち始めた。しかし補助金を増やせば研究は必ず活性化するのか。橋下徹氏が異論を唱える。プレジデント社の公式メールマガジン「橋下徹の『問題解決の授業』」(10月23日配信)より、抜粋記事をお届けします――。

■同級生のお父さん、本庶教授は日本の誇りだが……

10月1日、本庶佑京都大学特別教授がノーベル生理学・医学賞を受賞することが決定した。日本の誇りである。本庶さんは、僕の高校の同級生である本庶君のお父さん。僕は本庶君とは親しい間柄ではなかった。彼は、僕の高校の中で学業超優秀な学生として有名で、僕が親しくしていた友人連中のグループとは別グループだったんだよね(笑)。僕らが高校生だった今から約30年前のときに、「本庶のお父さんはノーベル賞を取るような人やで」という話を既に耳にしていた。ノーベル賞は、やっぱり取るべき人が取るもんなんだね。

本庶さんの受賞を受けて、「大学への補助金を増やせ」という議論が起きている。しかし僕は、今の日本の大学の状況のまま、大学の予算を増額することには反対だ。僕は大学予算、研究予算に限らず、税金のあらゆる使い道はしっかりとチェックすべきだということを強く訴えて、政治活動をやってきた。これが僕の政治活動の柱だ。

民間企業は、カネの使い道を誤ってしょうもないことをやれば、すぐに倒産だ。民間企業の場合には、この倒産のリスクがあるから、基本的にはカネの使い方には自ずと厳しくなる。カネの使い方がいい加減な民間企業は倒産して消えていく。

しかし、政治行政の世界には倒産がない。ゆえに金の使い方を誤っても何のリスクもないので、放っておけばいい加減な金の使い方になる。大阪府政、大阪市政における税金の無駄遣いも酷かった。

(略)

僕が大阪市長に当選した2011年頃は、心斎橋筋商店街も道頓堀界隈も、黒門市場も、どこもかしこも閑古鳥が鳴いていた。それが今は、満員電車状態だ。

大阪城公園も人で溢れかえっている。たこ焼き屋が3年間で1億円以上の脱税をやって捕まるくらいの勢いだ。1億円以上の脱税って、たこ焼きだけでどれだけ儲けていたんだ?

閑古鳥が鳴いていた黒門市場も、世界の潮流に従い、イートイン、すなわち食べる市場として完全復活した。もう市場は売るだけではダメだ。ロンドンでもパリでもフィレンツェでも、市場は巨大なレストランと化している。日本の市場も金沢の近江町市場をはじめイートインに転向していって大流行り。黒門市場も外国人観光客相手に大流行りだ。

僕がかつて住んでいた地域の、どうってことのない普通の商店街やそこにある外国人向けの宿泊施設は、お客が減って経営が苦しくなってきた銭湯とタッグを組んだ。銭湯を外国人に無料開放したんだ。その資金は宿泊施設などがサポートする。

そうしたら外国人は銭湯が物珍しくてしょうがないんだろうね。ツイッターなどのSNSで噂が広がり、大量の外国人観光客が押し寄せるようになった。あの脱衣所の感じ、広い洗い場と湯舟、そしてなんと言っても壁にかかれた大きな富士山の画。外国人にとって楽しくてしょうがないらしい。しかも無料。そりゃ、押し寄せるわな。

そうなると外国人向け宿泊施設は儲かるし、その状況を聞きつけた賢い商売人は宿泊施設を新たなに建設する。周辺の飲食店などは、その外国人をターゲットに商売をする。イイ循環になっている。ゴーストタウン化していた数年前の様子が想像もできないような状況になっている。

この時の重要な政策ポイントとして、僕は商店街や銭湯に対する補助金を削減しにいったんだよね。当時の商店街振興策、銭湯振興策は、とにかく税による補助金を出すこと。これは全国どこでも一緒だと思う。毎年毎年、予算の時期になると、商店街補助金を増やす必要性、銭湯補助金を増やす必要性について、役所の担当部局などがそれらしい資料を僕のところに持ってくるんだよね。

まさに、今の国立大学協会や文部科学省高等教育局国立大学法人支援課が作っている資料と同じようなもの。大学と商店街、銭湯の違いがあっても、言っている趣旨やロジックは全く同じなんだよ。役所に補助金増額をお願いするやり方は、皆同じなんだよね。

で、これまで役所が商店街補助金や銭湯補助金をずっと出し続けてきた結果、商店街や銭湯はどうなったか。衰退の一途だった。それでも毎年、補助金増額の話ばかり。

■国立大学は「補助金増額」以外の創意工夫を

関西国際空港もそうだった。いまでこそ成田の営業利益を超えるようになり、過去最大の利用客数となっている関空だけど、僕が知事に就任した2008年当時は、就航便数や利用客数が少なくてどうしようもなかった。そして、恒例の補助金。毎年、国からは200億円近くの補助金が出ていた。関西の自治体からも合計で10億近くの補助金。それでも関空は一向に経営改善しない。

僕はまずは関空の補助金を0にして、関空や国土交通省に危機感を持ってもらった。そして当時の前原国土交通大臣が知恵と工夫で練り上げた関空・伊丹統合+運営権民間売却案なるもので、みごと関空は復活した。LCCと貨物の拠点空港という位置づけを明確にし、物販飲食で儲けて、航空会社の発着陸料コストを下げる。今は補助金なんかなくてもきちんと営業をしている。

伊丹空港も完全民営化となって、これまでとは全く異なる空港になった。それまで南北離れて別れていたJALとANAの出口が二階の真ん中で一本化された。そして出口扉を出ると、そこには洒落たショッピング街が待ち受ける。

さすが民間だよね。JALとANAで出口が別れていたら、お店もそれぞれにばらけるし、店の前を通るお客もJALとANAの客でばらけてしまう。昔は、大阪名物豚まんの551蓬莱の店もANA側の出口にしかなかったんだよ。

倒産のリスクがない、売り上げを伸ばす必要のない国営伊丹空港だった時には、誰もそんな状態を変えようとしなかった。しかし、補助金もなく、自分たちで努力しなければならなくなった新生民間伊丹空港は、出口を一本化すれば、客の流れが倍になることを見逃さなかった。そしてその上で、ショッピング街も一本化。

(略)

国営空港だった時に放ったらかしにされていた、タクシーターミナル、バスターミナルもみごとに整理された。それまで結構な利益が上がっていた駐車場や飲食店が集まるターミナルビルは、それぞれが天下り団体になっていて、利益が天下りの懐に消えていた。それらも全て新生関空・伊丹統合会社に合流させて、その利益を新生会社に合理的に使ってもらうようにした。このようにして天下りの懐に消えていたお金が、空港施設への投資に回るようになったんだ。

商店街だって、銭湯だって、補助金がなくなれば、自分たちの知恵で創意工夫するしかなくなる。全国どこでも同じだと思うけど、商店街振興策は、年末の餅つき大会、夏の夜店、福引セールに、カラオケ大会などのイベントへの補助金ばかり。それも毎年同じイベント。そんなことで商店街が活性化するわけがない。

ほんと補助金って、麻薬みたいなものなんだよね。これにいったん浸かってしまうと、もうあとは補助金の増額しか言わなくなるんだよ。

国立大学協会の会長は、京都大学の学長だ。いつもイノベーションだ、創意工夫だと言っているくせに、自分たちの補助金のことになると、旧態依然とした、役所に補助金増額をお願いするやり方しかやらない。そこにイノベーションや知恵と創意工夫の姿形は全く見えない。

国立大学協会や文部科学省の国立大学法人支援課が作っている資料を見ただけで、こりゃ日本の大学はダメだわな、と感じるね。僕が知事、市長のときに経験した、役所と事業者のダメな主張の典型例。こういうのを正すことこそが政治の役割であって、柴山昌彦文部科学大臣の手腕に期待している。

(略)

(ここまでリード文を除き約3000字、メールマガジン全文は約9600字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.124(10月23日配信)を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【大学改革と観光行政(1)】大阪で実証! 補助金削減&創意工夫こそが成長へ続く王道だ》特集です。

(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 写真=時事通信フォト)

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