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橋下徹「安倍さん不在の日本で2度目の『トランプ政権』と向き合えるリーダーとは」

プレジデントオンライン / 2024年4月12日 9時15分

早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。最新の著作は『折れない心 人間関係に悩まない生き方』(PHP新書)。 - 撮影=的野弘路

元大阪市長・大阪府知事で弁護士の橋下徹さんであれば、ビジネスパーソンの「お悩み」にどう応えるか。連載「橋下徹のビジネスリーダー問題解決ゼミナール」。今回のお題は「トランプ“大統領”との付き合い方」です──。

※本稿は、雑誌「プレジデント」(2024年4月12日号)の掲載記事を再編集したものです。

■Question

世界が対米関係の見直しを進める中で日本は?

2024年11月に迫った米大統領選挙。共和党の候補者はトランプ前大統領となるのがほぼ確実で、現職のバイデン氏を破り大統領に当選するのではと言われ始めました。そうなれば日本をはじめ世界各国が対米関係の見直しを迫られます。トランプ氏と良好な関係を築くことのできた安倍晋三元首相はすでに亡く、日米関係の先行きを心配する声も上がっています。第2次トランプ政権と対峙する際、日本のリーダーに必要な資質は何でしょうか。

■Answer

官僚型ではなくダイナミックな構想を示せる人

トランプさんが大統領に復帰した場合、対米関係における日本の顔として望ましいのは、「ビジネスがわかり、態度がでかく、カネにきれいな人」だと僕は思います。

安倍さんとトランプさんの関係が良好だったのは事実です。16年の大統領選挙後には安倍さんはいち早く渡米し、どこの国よりも早く次期大統領となるトランプさんを祝福しました。複数回にわたりプライベートでゴルフを楽しみ、人間としての波長も合った。

2018年9月、米ニューヨークでトランプ大統領の歓待を受ける安倍晋三首相(いずれも当時)
2018年9月、米ニューヨークでトランプ大統領の歓待を受ける安倍晋三首相(いずれも当時)。もしトランプ氏が政権に復帰したら、安倍氏を欠く日本はどう対処すればいいのだろうか。写真は内閣広報室提供。

もっとも、だからといって日本側の言い分を何でも聞いてくれたわけではありません。交渉事では「アメリカ・ファースト」の原則論から極端な保護主義に走りがちなトランプさんに対して、安倍さんは柔らかく、一見すると日本ばかりが得をしているようだが、実際にはアメリカにもこんなに恩恵があるじゃないかと説くことで、アメリカ側の譲歩を引き出していったといいます。

トランプさんは政治家ですが、基本的にはビジネスの世界で勝ち抜いてきた人物です。そのため、建て前やイデオロギーよりも、自国や自分自身にとっての「実質的な利益」を勝ち取るべく取引に臨む、ディール思考の持ち主なのです。

したがって日本のリーダーも、「日本側の交渉者として日米お互いの利益を見据え、ビジネス上の取引ができる押し出しの強い人」がふさわしいと思います。「態度がでかい」というのは、そういうことです。

逆に言うと、細かなプロセスや建て前にこだわりがちな官僚タイプは、トランプさんと胸襟を開いて話し合うことが難しいと思います。別に僕は官僚はダメだと言っているのではありません。トランプさんのこれまでの言動から、重箱の隅をつつくようなタイプより、大局を語れるダイナミックさを彼は好むだろうということです。

政府関係者に聞くところによると、大統領時代のトランプさんへの説明は「話は3分、資料は2枚程度まで」が鉄則だったそうです。同様のルールを持つ会社は日本にもたくさんありますが、社交辞令や冗長な説明を嫌うのは性格というよりビジネスマンとしての特徴かもしれません。

その点、僕自身にも経験があります。政治の世界に入って一番驚いたのは役人の資料の分厚さ、説明の長さでした。大阪府知事に当選直後、東京都知事だった石原慎太郎さんにご挨拶に行きました。すると石原さんはこう忠告してくれたのです。

「橋下さん、もう気づいていると思うけど、役人の説明は長い。うっかりすると説明まみれ、資料まみれになる。そのまま役所の考えに取り込まれてしまう首長も多い。よくよく注意しなければならない」

資料
写真=iStock.com/megaflopp
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/megaflopp

そのこともあって、僕も「資料はA3表裏1枚」を上限に定めました。最初は役所の人間はびっくりしていましたね。それまでA4で何十枚もの資料をつくってきた彼ら、彼女らはその事案一つに集中して関わっているかもしれませんが、首長にとってそうした事案は各部署から持ち込まれて膨大にあるわけです。ですから「一番重要なエッセンスだけ抽出してほしい」というのは首長の切なる願いです。

ただ、こうした「対トランプ作戦」は何も安倍さん一人で編み出したものではありません。その背後には複数の政治家や官僚からなる「チーム安倍」が控えていた。となれば仮にトップが代わっても、かつてのチーム安倍が再集結すれば、新たな日米関係を構築することは可能なはずです。

安倍さんのようなカリスマ的リーダーを失うと、「代わりの人物がいない」と周囲はうろたえがちですが、政治も会社経営も「組織」で行うものです。大阪府や大阪市の行政においても、僕から松井一郎さん、吉村洋文さん、横山英幸さんとバトンを継承しましたが、トップの顔ぶれが代わっても、当初のチーム橋下とその継承チームがしっかりと脇を固めてくれたおかげで、様々な課題を乗り越えることができました。

ただし、間に政権交代が挟まると厄介です。旧民主党政権はあらゆる点で自民党政権の逆張りをし、スタッフも入れ替えました。内政面で独自色を打ち出すには、そのような選択があってもいいと思います。しかし相手国があり、継続性を求められる外交、特に日米外交でそれをやってしまったから、大混乱に陥りました。ですから仮に今後政権交代があったとしても、同じ轍を踏まぬよう、外交政策は安倍路線から大きく逸脱しないようにするのが肝要です。

■カネにセコい人間は、人間的度量も狭い

さて、「チーム安倍」を率いるリーダーには、「カネにきれいな人」がふさわしいと述べました。これは例えば、いま世間を騒がせている政治資金パーティーをめぐる「裏金問題」とは縁がない人、ということです。これはコンプライアンス的にどうこう言う以前の問題で、「カネにセコい人間は、人間的度量も狭い」という人類普遍の経験値に基づくアドバイスです(笑)。

といってもトランプさん自身、所有資産価値を過大に申告し、不正な利益を得たことで3億5490万ドルの罰金支払いを裁判所から科された経験があるわけですから、必ずしも「カネにきれい」というわけではない。しかし、これだけ巨額だと、少なくともセコくはないですよね。

むろんスケールが大きかろうと脱税は絶対によくない。しかし今の日本の国会議員たちが、政治資金から裏金をつくって好き勝手に使っている姿を見ると、あまりにセコくて情けなくなります。国会議員になったとたんに高級飲食店ばかり使うようになるとか、舞い上がってしまうような政治家に、トランプさんの交渉相手が務まるとは思えません。

政治は「組織」で行うもの。しかし、各国首脳と向き合う国際舞台では「個性」と「個性」がぶつかり合います。自らの利益を超えて相手の望むものを理解し、信頼をベースにしながらも、怜悧なビジネス取引ができる人。そんな個性豊かなダイナミックな人物こそがトランプさんと対峙できるのです。どこかにいませんかね。

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橋下 徹(はしもと・とおる)
元大阪市長・元大阪府知事
1969年生まれ。大阪府立北野高校、早稲田大学政治経済学部卒業。弁護士。2008年から大阪府知事、大阪市長として府市政の改革に尽力。15年12月、政界引退。北野高校時代はラグビー部に所属し、3年生のとき全国大会(花園)に出場。『実行力』『異端のすすめ』『交渉力』『大阪都構想&万博の表とウラ全部話そう』など著書多数。最新の著作は『折れない心 人間関係に悩まない生き方』(PHP新書)。

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(元大阪市長・元大阪府知事 橋下 徹 構成=三浦愛美 撮影=的野弘路 写真=時事通信フォト)

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