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安倍政権の横暴をアシストする野党の無能

プレジデントオンライン / 2018年12月11日 15時15分

2018年12月7日、参院本会議で堂故茂農林水産委員長の解任決議案の趣旨説明をする自由党の森裕子幹事長。(写真=時事通信フォト)

臨時国会が12月10日、閉幕した。外国人の受け入れを促進する入管難民法改正案の審議を巡り「横暴」「拙速」「生煮え」などの言葉が飛び交い、閣僚のスキャンダルや珍答弁も目立った国会は、「安倍1強」ぶりが際立った。どんどん強引になる安倍政権の国会運営。それを許し続ける野党。48日間の攻防を振り返る――。

■議長が「やめさせて、連れて行け」と指示

改正入管難民法は12月8日、午前4時過ぎに成立した。成立を目指す与党と、それを阻止しようとする立憲民主党など野党との対立は激烈だった。

ハイライトシーンは7日昼、参院本会議での参院農水委員長の解任決議案採決前のシーン。演説を続ける自由党の森裕子氏に対し、伊達忠一議長が「やめさせて(森氏を)連れて行け」と言い放った。そのころ、自民党の大家敏志・参院議院運営委員会(議運委)理事は、演壇の近くで野党議員と小競り合いになり、立憲民主党議員は「小突かれた」と訴えた。

自民党側にも言い分がある。森氏は、定められた演説時間を大幅に超えて演説していた。伊達氏も最初は「簡単に願います」「まとめてください」などと穏やかに語っていたのだが、最後に「キレた」ようだ。

大家氏も、一方的に野党議員に襲いかかったというわけではなく、双方もみ合いの中で「小突き」が起きた。

■すぐに手荒い言動に出てしまうのが安倍政権の体質

しかし与党は、野党側の挑発に乗らないのが基本動作。挑発に乗ってしまえば野党側に利用され、議事が混乱するからだ。特に議会運営を仕切る議長や議運理事は、「忍の一字」を貫くことは徹底的に訓練されているはず。にもかかわらず、手荒い言動に出てしまうというところが、今の安倍政権の体質と言っていい。

普通の展開なら、これで国会は止まり、後日仕切り直しとなっただろう。しかし与党は、改正入管難民法を成立させてしまった。大家氏は議運理事を辞職し、国会日程も予定よりは数時間遅れはしたが、それは誤差の範囲内。これぐらいのハプニングでは当初方針を変えないというのが「安倍流」だ。

■他の法案審議と比べて突出して短い時間で成立

自民党内には大家氏の行動を責める空気は全くない。サッカーに例えるなら、体を張ったプレーの最中でやむを得ず犯したファウルのような受け止めだ。

それが証拠に、麻生太郎副総理兼財務相は9日、大家氏のパーティーに駆けつけ「あれぐらい触った程度で暴力と言うのなら、あの人たち(野党議員)は、山手線のラッシュアワーに乗ったことがないのだろう。あれで暴力と言われたら、とてもじゃない。いろいろ、はめられる話はいっぱいある」と開き直ってみせた。この発言に対しては野党議員から「それなら麻生氏はラッシュアワーの山手線に乗ったことがあるのか」という突っ込みが入った。

入管難民法改正案の委員会審議時間は、衆参あわせて35時間45分(共同通信社調べ)。2013年に成立した特定秘密保護法案は63時間50分(同)、15年に成立した安全保障関連法案は約202時間11分、17年の改正組織犯罪処罰法案が55時間30分(同)。

今回の改正入管難民法は、論点は多岐にわたる。安保関連法などと比べても、審議時間が短くていいとは思えない内容が詰まっている。しかし、他の法案審議と比べて突出して短い時間で成立した。安倍政権の国会運営が荒っぽいのは今に始まった話ではないが、その荒っぽさは加速度的に高まっているのが分かる。

■「森友」「加計」問題を取りあげる機会は極端に減少

この法案の成立を急いだ理由は、はっきりしている。慢性的、深刻な労働力不足に悩む経済界。来年夏の参院選に向けて経済界の支援を得たい自民党。国論を2分するような法案の採決は、来年の統一地方選、参院選からできるだけ離れてすすめてほしいという公明党。その3者の利害が一致したということだ。

問題は、野党がそれを阻止できなかった点だ。臨時国会では桜田義孝五輪相の「レンポウ」発言に代表される珍妙な答弁や、片山さつき地方創生担当相の政治とカネの問題、さらには「看板問題」に焦点が当たった。新聞、テレビは連日2人の答弁をおもしろおかしく報じた。

その結果どうなったか。48日間の臨時国会では安倍晋三首相を徹底的に追い詰めるシーンはほとんどなく、「森友」「加計」問題が取り上げられる機会は極端に減った。

安倍首相にとって臨時国会は、結構楽だっただろう。桜田氏の珍答弁も、片山氏の疑惑も、政権の屋台骨を揺るがすようなものではない。安倍氏の進退に直結するのは「森友」であり「加計」である。桜田、片山の両氏に追及の矛先が向き、「森友」「加計」の追及が緩んでしまったのは、野党の戦略ミスと言わざるを得ない。そして桜田、片山の2閣僚を辞任に追い込むことさえできなかった。

■辞任に追い込まれた閣僚は1人もいない

今年に入って、「森友」、「加計」、裁量労働制を巡る不適切データ問題、財務次官のセクハラ問題、そして10月の内閣改造で初入閣した閣僚の一連の疑惑……と政権内では次々に問題が起きている。にもかかわらず、辞任に追い込まれた閣僚は今年、1人もいない。

こういう状況では、安倍首相や与党が、野党をなめきってしまうのも当然だ。国会運営も強引になる。

「1強」の肥大化を続ける安倍政権。そのアシストをしているのは、他ならぬ野党であることも紛れもない事実だ。

■共闘が不発に終われば「衆参同日選」で野党惨敗か

臨時国会終盤、立憲民主党と国民民主党は、内閣不信任案や入管難民法改正案の採決時に行う付帯決議の扱いについて、さやあてを演じた。自民党側から、高笑いが聞こえて来そうな光景だった。

来年の参院選に向けては32ある1人区で、野党が統一候補を立てることができるかどうかが焦点となっている。ここで野党統一候補を立てられれば、自民党は議席を大幅に減らす可能性が出てくる。逆に、野党共闘が不発に終われば、立憲民主党、希望の党などが乱立し自民党が漁夫の利をさらった昨年の衆院選の再現となりかねない。

自由党の小沢一郎共同代表は会期末の10日、記者会見し来年の参院選にあわせて衆院を解散し衆参ダブル選となる可能性について「野党の体たらくで負けないと分かれば(安倍首相は)やるかもしれない。こんなことでは選挙などできない」と危機感を隠さなかった。

(プレジデントオンライン編集部 写真=時事通信フォト)

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