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"死後離婚"は普通の離婚とどこが違うのか

プレジデントオンライン / 2019年1月4日 11時15分

写真=iStock.com/bee32

病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年9月4日号)の特集から処方箋を紹介する。第7回は「死後離婚リスク」について――。

■A4用紙1枚で姻族関係は終了する

“死後離婚”とは、配偶者の死亡後に「姻族関係終了」の届け出をし、義理の両親や義理の兄弟姉妹など「姻族」との関係を絶つこと。義理の両親や兄弟からの干渉や、義理の両親の介護を押しつけられることにウンザリした嫁(母親)が、姻族関係を絶つとされる。

手続きは、本籍地や現在住んでいる市区町村の戸籍課や市民課に、戸籍謄本と配偶者の死亡を証明する書類「姻族関係終了届」を提出するだけ。A4用紙1枚で姻族関係は終了するのだ。提出期限はなく、配偶者の死亡後はいつでも手続きができる。

ちなみに、法務省の「戸籍統計」によると、2006年度の「姻族関係終了」の届け出件数は2343件だったが、15年度には3493件と1000件以上も増えている。自分の実家で起きても不思議ではないだろう。

親が配偶者の死をきっかけに姻族関係を絶つ。そうなったら、子にはどんな問題が降りかかる可能性があるのか。

離婚問題に詳しい弁護士の中里妃沙子氏は、「親が生前に離婚する場合と共通するリスクですが、母親が再婚した場合、子が受け取るはずの相続財産が減る可能性があります」と指摘する。

仮に、父親と母親、子(自分)という家族構成としよう。父親が死亡した場合、民法で定められた各相続人の取り分である「法定相続」分は、母親と自分で2分の1ずつだ。二次相続(母親が死亡した場合)では、自分が母親の財産をすべて相続することになる。だが、「母親が離婚後に再婚し、再婚相手より先に死亡した場合には、母親の財産の2分の1を再婚相手が相続することになります」(中里氏)

自分は、母親が再婚しなければ受け取れた遺産の半分しか受け取れない。しかも、遺産分割は、相続人全員が遺産分割協議書に署名、捺印してはじめて行える。名義変更できるのも、そのあと。協議が整わなければ、いつになっても遺産分割できないこともある。

なお、父親の生前に離婚した場合、母親は遺族年金を受給できないが、死後離婚の場合は受け取ることができる。父親が入っていた生命保険の受取人が母親ならば、それも受け取れるのだ。

子に打つ手はないのだろうか。

写真=iStock.com/takasuu

「対応策としては、母親に『自分の財産はすべて子に遺す』と遺言を書いてもらうこと。この場合も、配偶者から法的に最低限相続できる『遺留分』を請求される可能性は残る。それも避けたいなら、母親の再婚を阻止するべきでしょう」(同)

亡くなった父親に借金があった場合も面倒が待ち構えている。

「遺産相続では、自宅や現金、預金などプラスの財産だけでなく、借入金や連帯債務などマイナスの財産も引き継ぐことになります」(同)

プラスの財産よりマイナスの財産のほうが大きい場合には「相続放棄」という方法がある。放棄はしたくないものの、借金を背負うことは避けたい場合には「限定承認」という選択肢も。これは、プラスの財産でマイナスの財産を弁済しても借金や債務が残る場合は、弁済の必要がないという相続方法だ。プラスの財産のほうが大きい場合には、残った財産を相続できる。

「全財産がいくらあるかわからない場合があります。損をしたくなければ『限定承認』を選ぶとよいでしょう」(同)

仮に、金融資産が2000万円、借金額が不明であるとき、「限定承認」を選べば、金融資産で借金を弁済する。借金が1500万円なら、余りの500万円を相続できる。借金が2500万円なら、金融資産の2000万円で弁済しても、500万円の負債が残るが、これを自分の資産を持ち出して弁済しなくて済むのだ。

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中里妃沙子
弁護士
丸の内ソレイユ法律事務所代表。1995年弁護士登録。年間300件以上の離婚相談を受ける。法政大学大学院環境マネジメント科兼任講師。
 

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■▼【図表】一目でわかる! 死後離婚リスク

(ライター 大山 弘子 写真=iStock.com)

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